27はぁ、どうしてこうなる?
「お待たせしました。ドーナン殿下はちょうどお昼を召し上がって今は起きられているとの事なので、早速ですがご案内します」
「ありがとうございます」
「でも、まだ体調は良くありませんので短時間で終わらせて下さい」
セダ神官が先に立って離れにある建物に案内する。
「なんだ。診療施設にいるんじゃないのか?」
「はい、殿下に一般の方と同じところに入って行くわけには参りませんので」
「まあな」
シュナウト殿下は納得したらしい。でも、ドーナン殿下が長年おじい様の陰謀と思われる毒を飲まされていたことはシュナウト殿下は知らない。
また、今は知られてはいけない。
もし、シュナウト殿下がおじい様側の人間だったら。
私達が秘かに動いたことが知れたら…
私の背すじはぞくりとなった。シュナウト殿下がそんな人ではないと思いたいけど。
それでも長年にわたって植え付けられた彼への不信感はすぐには取り払えないに決まっている。
もぉぉぉぉ、それなのに。
「こちらです」
扉が開かれて明るく清潔な部屋に通された。
シュナウト殿下は一礼すると部屋に入った。続いてラドール様も。私はその後に続いた。
ドーナン殿下は立っていて窓から景色を眺めていた。彼がふっと振り向いた。
シュナウト殿下は今まで見たこともないほど緊張しているらしくカチコチになりながら頭を下げ挨拶をする。
「私はシュナウト・ブルタニウスと申します。兄上とはお初にお目にかかります。国王と平民である母との間に出来た不測の子で兄上に取ったらこの上なく嫌な存在と心得ておりました。だから…その‥今までお会いしてはいけないのではと思っておりました。ですが、昨日具合を悪くされたと聞いてどうしてもお目にかかりたいと思ったのです。お加減はいかがですか?」
シュナウト殿下はそっと顔を上げてドーナン殿下の見た。
「ああ、君がシュナウトなんだ。私も会いたいと思っていた。体調は少しずつだがよくなっていると思う」
ドーナン殿下の視線が私を捕らえた。ふっと彼の目元が緩んだ。
「リンローズも来てくれたのか。昨日は世話になった。リンローズが作ってくれたあの菓子、あれはいいな。昨晩も小腹が空いて一切れ頂いた。旨かった。それに朝食代わりにもなったんだ」
ドーナン殿下は昨日よりしっかりした足取りで歩くとサイドテーブルにあった籠を持ちあげにっこり微笑む。
昨晩届けたオートミールバーはすっかりなくなっていた。良かった。気に入ってもらえたなら、それにしても、少ししか作れなかったので申し訳ない気もした。
「気に入って頂けたならまた作りますから」
「そうか。では、今日にでも頼みたい」
「まあ、もちろん喜んで作らせて頂きます」
「ああ、頼む。それに医者も栄養満点で今の私に必要なものばかりが入っていると感心していた。よくそんな事を知っていたな」
「いえ、私もいずれは神殿で働くこともあるかと思っていましたので少し勉強をしていたんです。お役に立って良かったです」
「あの、リンローズはいつの間にそんな事を?」
間に割って入ったのはシュナウト殿下だ。頬をぴくぴくして怒ってる?でもどうして?と私は思う。
「昨晩こちらに転移した後だよシュナウト。ああ、そうか。リンローズはシュナウトの婚約者だったな」
「はい、それなのに俺は蚊帳の外ってわけですか」
シュナウト殿下は子供みたいにふてくされる。
「シュナウト殿下!言い過ぎですよ。失礼しましたドーナン殿下非礼をお詫びします」
慌ててラドール様が頭を下げると続いてセダ神官が説明をする。
「シュナウト殿下。昨日の事は急な事だったのです。リンローズがその場にいたのは本当に偶然でした」
「でも、俺だってリンローズに手作りの菓子など貰った事はない!」
ったく。お子ちゃまか?
「いい加減にして下さい。シュナウト殿下、当たり前じゃないですか。いつだって蚊帳の外にいたのは私ですよ。そんな人に菓子など作るわけがありません!」
「…」
シュナウト殿下はなにも言えなくなった。




