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こんな仕打ち許せるわけありません。死に戻り令嬢は婚約破棄を所望する  作者: はるくうきなこ


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23ドーナン殿下転移して来る


 しばらく待つこと…数十分だろうか。

 いきなり部屋の中央に会った転移陣が光り始めた。

 「リンローズ様。そろそろです」

 そう言われて私は酷く緊張してその時を待った。

 転移陣の周りがキラキラ輝き光が辺りを包み込むほど眩しくなる。

 目をぎゅっと閉じないと眩しくて仕方がない。

 これじゃ何も見えないわ。まぶしいながらも薄眼を開けるがほとんど光の洪水で何も見えない。

 しばらくすると光が治まって目を開けれるようになった。

 転移陣の中央に薄っすらと人影のようなものが見えた。

 「リンローズ様そちらから手を伸ばして中の人を支えて下さい。ドーナン殿下はきっと立ってはいられないはずです」

 ヒルダ様が大きな掛け声で叫んだ。

 「はいっ!」私は急いで足を転移陣の中に踏み入れ手をぐっと伸ばす。

 途端に手のひらに柔らかくもあり硬くもあると言う細長いものが触れた。

 これは‥腕?思わず手を引きそうになるが前を見るとさっきよりもはっきりとドーナン殿下の姿が姿が見えた。

 その腕をぎゅっと抱え込む。殿下が倒れないようにしっかりと足を踏ん張り彼を支える杖のように。

 「殿下?もう大丈夫です。ここは神殿です。ご安心ください。ここでしばらく休んだら療養施設にご案内しますので、さあ、こちらに座って下さい」

 いつの間にかふかふかの椅子が用意されていてヒルダ様は慣れた手つきでドーナン殿下を椅子の方に案内する。

 私は片方の腕をしっかり抱えてその椅子に殿下が座れるように身体を横にずらし彼が椅子に腰かけれるよう手助けをした。

 「ありがとう。情けないな。こんな事ひとつ、ひとりで出来ないとは…なぁ」

 ドーナン殿下はほっと息を吐いて呟いた。

 「そんな事ありません。ドーナン様。飲まれている薬の事聞かれましたか?」

 「ああ、セダから聞いた。赤兜という毒草が入っていたと、そんなものを飲まされていたなんて…私も薄々そんな事だろうと思ってはいたが、やはりショックだな」

 「はい、ですがきっと良くなります。ドーナン様が元気になれば次期国王はあなたです。気をしっかり持って。私、何かお元気になるものを作ろうと思ってるんです。何かお好きな物はありますか?」

 「リンローズが作ってくれるのか?」

 ドーナン殿下は驚いた顔で聞いた。

 「もちろんです」

 「侯爵家の令嬢が?いや、聖女とも聞いたがあなたは‥その、シュナウトの婚約者でもあるだろう?」

 「ご存知なのですか?」

 「そりゃ、一応これでも王子をして最低限の知識はある。まあ、残念な事に異母弟のシュナウトとは会った事もないんだがね」

 「ええ、それは私のおじい様が合わない方がいいと言ったらしくって…もちろんシュナウト殿下は会いたがってました。でも、時が経つと何だか会い辛くなったんだと思います」

 「君は出来た婚約者なんだね。シュナウトの噂は聞いてるよ。君にはとても失礼な態度を取っているとか、今度会う機会があったら私から話をしたい。君のような人を困らせるんじゃないと言い聞かせなければ…」

 「いえ、そのようなご心配はいりません。ドーナン様。今は良くなることだけを考えて下さい。それが一番の早道です。いいですか殿下。ゆっくりでいいんです。まずは朝日を浴びます。少し元気になったら散歩もして下さい。そして身体を動かす事。食事は3食ゆっくり美味しく食べる事。あっ、私、食事の合間に食べれる栄養のあるおやつを作ろうと思ってますから。後で届けますね」

 「まったく、リンローズ、君にはかなわないな。ハハハ」

 ドーナン殿下は離宮を出られたことですっかり安心したみたいだ。


 しばらく休んでドーナン殿下は転移陣のある部屋から出ると車いすの乗って神殿の人たちに連れられて診療所に移動した。

 診療所と言ってもドーナン殿下は別棟にある貴賓室に案内された。表には神殿の護衛それも腕の立つものが見張りとして立った。

 

 私はヒルダ様に付き合ってもらってもう一度結界を張る練習をしてから神殿の調理室を借りることにした。

 ちょうど夕食の準備が終わり料理長からはキッチンは使ってもいいと許しを貰った。

 前世の記憶を引っ張り出す。体力アップ。代謝促進。

 あれは…えっとぉぉぉぉ。

 コーンフレークはないのでコーンをすりつぶして平らに伸ばしてオーブンで焼く。それを細かく砕く。

 オートミール、コーンフレークもどき、プルーンにナッツ。それからホウレンソウを細かく刻んでとハチミツとバターも混ぜてこれを平たいトレイに入れてオーブンで焼く。

 少し冷えるまでにキッチンで見つけたハーブでティーを作る。

 オレンジスイートとカモミールでお茶を煎れる。冷えたオートミールバーを適当な大きさにカットして籠に入れる。

 トレイにお茶と籠を乗せたらドーナン殿下専用のお茶セットが出来上がった。

 

 夕食を召し上がったと聞いてドーナン殿下の所を訪れた。扉をノックして返事があったので開けると彼は窓のそばに立って夕暮れの景色を眺めていた。

 「ドーナン様。ご気分がいいんですか?」思わず声をかけた。

 「ああ、夕焼けを見たのはもう何年ぶりだろうな。すごくきれいだと思ってつい」

 「いいえ、とんでもありません。少しでも元気が出たのなら…あの、これを作ってみたんですが…良かったら食事の合間にでも召し上がって下さい。お茶はよく眠れるようにカモミールが入ってますから…」

 私は張り切って作ったはいいがこんな手作りのものを男性に渡すのは初めてだと気づき。急に気恥ずかしくなった。

 「そう言えばさっきそんな事を言っていたが、まさかもう出来上がるとは…いや、ありがとうリンローズ」

 ドーナン殿下がにっこりと微笑んだ。その威力かなりのもの。

 「とんでもありません。では失礼します」

 私は急ぎ足で殿下の元を後にした。

 そしてやっと私の充実した一日は終わった。





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