18やってみる価値はある
王宮に着くと今まで足を踏み入れたこともなかった裏手に回った。
セダ神官とヒルダ様は慣れた様子で足を運んでいく。
王宮の裏手には広い庭園があって長い年月を過ごして来た大木がいくつもあり、その大きく広がった枝は幾重にも葉を広げ日の光を遮っている。
それがまた辺りを暗くしてなお一層離宮に影を落としている。
「王宮にこんな所があったなんて知りませんでした」
「ええ、私もいつ来ても薄気味悪い気がします。こんな所でドーナン殿下の静養なんてふざけているとしか思えませんが」
「あの…それでドーナン殿下の具合は?」
私は今まで彼の事をあまり気にしたことがなかったと思う。
それよりもシュナウト殿下との事で頭がいっぱいだったし彼にまとわりついて離れないアシュリーの事やいつ婚約解消を言われるのだろうかとびくびくしていた気がするのよね。
まあ、死に戻って前世の記憶を持った今の私は冷静な…いやそれほどでもないが、それでもある程度やるべきことはわかっているつもりだ。
ドーナン殿下は毒を盛られていることはわかっているのだから。
「ああ、彼はもともと病弱だったんだ。幼いころはすぐに熱を出していた。それに王妃自身もドーナンを産んだ後産後のひだちが悪かったらしくもう子供は望まないかもしれないと言われていたらしいから、それはもうドーナン殿下に対する愛情はすごかったんだ」
「そうなんですか。それでお子様はひとりという事だったんですね。それにしても殿下がこんな所で静養なんてひどいです」
昼間というのに辺りは薄暗い。じめじめしているせいで離宮の壁には苔がありカビも生えている。
セダ神官もうなずく。
「ああ、それには訳があるんだ。今のような事態になったのは前国王であった兄のせいでもある。父が亡くなり早くに王位についた兄ジャーマンは恋をした。隣国コプルア国の王女ベリーシャに。兄は彼女をどうしても妻にしたいとかなりの額の金をコプルア国に出したんだ。そのせいで国の財政は困窮した。それに兄は政務に対しては若干問題があった。ある意味偏った貴族の意見にばかり耳を傾けると言うか…とにかくロンドスキー公爵家の財力や彼に憑いている貴族たちの力が必要だったんだ。兄はロンドスキーの言う通りに動く国王になってしまった。それにドーナン殿下の事しか頭にない王妃が亡くなると拍車がかかった。国政がロンドスキーの手に委ねられ彼の思い通りの政務が出来上がってしまいそのまま兄は亡くなってしまった。ドーナン殿下の後見人としてロンドスキーはドーナン殿下を病弱なのをいい事に思う通りに操った。そしてシュナウト殿下が現れロンドスキーは孫である君と婚約させた。リンローズも薄々気づかないか?そうなるとドーナン殿下は邪魔な存在になるだろう。実はドーナン殿下は毒を盛られていると私は思っている。でも、それを大げさに騒ぎだて犯人捜しをすれば今すぐにでもドーナン殿下の命は奪われてしまう恐れがある」
セダ神官はここで大きくため息をついた。
叔父様がここまで考えているとは思わなかった。それに彼の言うことはまさにその通りだとも思えた。
「ええ、そうかもしれません。犯人の目星でもあればいいんでしょうけど」私はそうこぼした。
「ああ、だから何とか命をつなぎとめておけるようにヒルダに解毒はしてもらっているがやはり数年に渡って取り込まれた毒は少しずつ殿下の身体をむしばんでいる。私も何とか打開策を考えているが結界の事もあるし今すぐに殿下を救い出す手立てがないのが実情なんだ」
「あの…差し出がましい事を言うようですが、ドーナン殿下に出されている薬を少し持ち出さないでしょうか?実はシュナウト殿下がある薬を薬物研究室に調べてもらうと言っていたんです。もし薬が持ち出せれば私が薬物研究室に調べるように持って行きます。もし毒が入っていればそのことを理由にドーナン殿下を離宮から神殿にある療養施設に移すことも可能ではないですか?そうなればドーナン殿下も少しは体力も回復できるはずでは?」
「そんな事が可能か?」
「今のままではいつドーナン殿下の身に何か起こるかわからないのでは?離宮より神殿の方が絶対に安全は確保できるはずです」
「ああ、そうだな。リンローズの言う通りだ。やってくれるか?」
「もちろんです」




