命の設計図
「ようこそ、ライフデザインセンターへ。あなたの人生を、最高のスタートで飾るお手伝いをいたします。」
白い壁に囲まれた清潔な部屋で、淡々と女性が話しかけてきた。私は緊張で心臓が騒いでいる。目の前には、巨大なタッチパネルが設置され、まるでゲームのキャラクター作成画面のように、様々な項目が羅列されている。
「まずは、両親を選んでみましょう。遺伝子情報に基づいた能力値や容姿、性格などを自由に設定できます。」
画面には、数え切れないほどの顔写真がスクロールしていく。美男美女ばかりだ。
「もちろん、全て最高ランクのパラメータを選択することも可能です。ただし、コストは高額になります。」
コスト。これがこのシステムの最大の落とし穴だ。
私は幼い頃から、このシステムの存在を知っていた。生まれながらにして、両親、容姿、才能、全てを自分で選べる。理想の人生を設計できる、と。だが、その代償は、莫大な費用だった。
両親のパラメータを最高に設定しようとすると、容姿は平凡なレベルになってしまう。逆に、容姿に重点を置くと、両親は低学歴で貧乏な家庭になる可能性が高い。
私は、両親に感謝の気持ちを抱いていた。平凡な両親だが、愛情深く、私を育ててくれた。だから、彼らを犠牲にして、自分のために最高の両親を選ぶことはできない。
「では、両親はデフォルト設定で…」
「かしこまりました。では、次はあなたの容姿について…」
女性は、淡々と画面を操作していく。私はためらいながらも、自分の理想の姿を形作っていった。
だが、その度に、両親の顔、そして、彼らの苦労が頭に浮かんでくる。
「…ちょっと待ってください。両親のパラメータを少しだけ…」
私は、再び画面に目を向けた。両親の能力値は、平凡なまま。だが、彼らの顔は、少しだけ輝いているように見えた。
「これでいいです。」
私は、小さな声で言った。最高のスタートを切るために必要なのは、完璧なパラメータではない。
両親の愛情と、自分の努力で、最高の未来を切り開いていけばいい。そう、私は決心した。