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風の通り道
気が付くと風の通り道に立っていた。
信じられないことに先ほどのどんよりとした空とは打って変わり、晴れ晴れとした空だ。
「そうか。主様は沈んでおられるのだな。このヨタカの世界は心を反転させる。」
自分が感じているこの心地よさのそのほど苦しんでいる主が不憫でならない。
―――そう名もなき一匹は思った。かなうならいくらでも肩代わりしてやりたいものだ。
肩代わり―――一匹が感じた不快さのほど主は回復するのだろうか。あちらの世界とこちらの世界を連動しているのだが。
試した者はいない。というか自分以外の一匹がいるのか知らない。私は誰だ。
名もなき一匹は帽子をかぶりなおす。
「先へ進もう。」
一匹は土煙に巻き込まれて見えなくなった。