15歳 〜 暗闇はふたりきりの世界 〜
あれから10ヶ月ほどが過ぎ、
もうすぐ春休み
東條くんとのお付き合いは順調で、
クラシックのコンサートにいってみたり、
お花畑を巡って香りの違いを楽しんだり、
彼のお部屋でまったりとラジオをきいてみたり、
毎日キラキラとした宝石のような思い出が
増えていく
「海、電話」
「ありがとう。でるね。
……もしもし、……うん、…………わかった。
…………それは大丈夫だよ。……あとでね。」
「お兄さん?」
「うん、ご迷惑になるといけないから
そろそろ帰ってきなさいって。」
「こーんな可愛い海ちゃんが来てくれてるのに、
帰っちゃうほうがご迷惑だよ…!」
「ふふ、私ももっと一緒にいたいな。」
「うみぃぃ〜っ!あぁー、すき!」
私の頭を両手で撫で回しながら、
おでこに軽いキスを何度か落とす東條くん。可愛い。
「海のお兄さん、海大好きだもんなぁ
長い付き合いになるから、ちゃんと帰さないと。ふぅ」
その言葉が嬉しくて、
私の胸のあたりのあたたかさが
大きくなってじんわりと広がっていく
「…ん。」
東條くんの服を軽くひっぱり、
目を閉じて上を向く
これは、私から東條くんへの、甘えたサイン
ちゅっー
と音を立てて、
はじまりを教えてくれる優しい東條くん
そこから深くなっていくそれは、
暗闇の中で、私たちふたりだけの甘い世界にかわる。
このときが、少し照れくさいけど
なによりも心地いい
「……海、続きは、
ら、来週のお泊まりのとき……。」
照れながらそういう東條くんに
私の胸も高くときめく
そう、来週は、はじめてのお泊まり。
もうすぐ、角膜移植の手術をする私が、
どうしても不安だからと両親に頼み込んで
もぎとった1日。
出張が多い東條くんのお父さんがいない日をふたりで選んだ。
東條くんのお母さんは、
長いこと入院中らしく、まだお会いできていない。
「さ、帰ろう。送ってくよ。」
「うん。」
東條くんと手を繋いで外を歩くこの時間も
私の宝物だ。