表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その88  強制排除命令

作者: 天城冴

ニホン国やアメリカで次々に起きる惨劇にふるえるジコウ党ダカイチ大臣らだったが。

「え?ま、またなの」

ニホン政府与党ジコウ党ダカイチ大臣は思わず、聞き返した。

「ええ、またです。今度は30-70代の健康な成人男性がいきなり殺し合いです。包丁だのバットだの、果ては机の上のノートパソコンで叩き合い、切り合って、あたりはあっという間に血の海になったそうです。他と同じく声が聞こえたからと叫びながら。今回は、死者多数でしたが、便通自社ビルの屋内で、目撃者の多くが同僚など知人だったため、身元はすぐにわかりました」

答える同じジコウ党ザイトウ議員の声は冷静を装ってはいたが、動揺しているのは明らかだった。

「べ、便通って。あの、大手広告会社?う、うそでしょ!」

ダカイチ大臣のほうは驚きを隠せず、声をあげた。

「ええ、そうです。ヨツイ不動産や、ヨジモト興業などに続いて…、これでもう、何社目か」

「会社だけじゃないでしょ。メイジの党とか」

「創立者のハシゲンさんのところは、一家全員、でしたか。猟奇殺人じゃないかって一時話題になりましたが」

「それからすぐ、元府知事のヨジムラさんとか市長のマツイダさんが、万博の式典で死んだわよね、お互い殴り合って、高い演壇から真っ逆さま。他にも出席者でメイジの党関連の首長とか、西の財界人とかも、乱闘騒ぎを起こして足元が崩れて、何人もなくなったわよね。彼らがそんなことをした理由も彼らの足元だけが崩れ落ちた原因もわからずじまい。だいたい、周りにいた花束渡した女子高生とか、学校行事で参加した子供たちとかほかに大勢人がいたのに、なぜか彼らだけあんな恐ろしいことを…」

「白昼の狂気とか三径新聞が書き立ててましたが、その三径で大量殺人というか死者多数でました。しかも幹部全員と中堅社員、ほとんど男性で、派遣や臨時バイトなどは無事だったんですよ、血まみれの凄惨な現場で彼らだけは襲われなかったし、人を襲いもしなかった」

「大会社とか党だけじゃないじゃない。零細企業の社長や、町工場や農家だって、妙なことが起きてるでしょ。規模がおおきいとこらしいけど」

「だいたいが、技能実習生や日雇いのバイトを悪条件で使っていたという評判の悪いところですよ。従業員に殺されても不思議はないぐらいなのに、いきなり農家の主人がカマで自分の首を切り落とす、重機が動いているさなかに下敷きになりに行く。他にも変死の報告があります。DVで訴えられた夫とか、交際相手の子供を折檻した、実の娘をエアガンで撃った、実の子供を育てられないからといって殺したような、いわばクズどもが、局部を自ら切り取り出血多量とか、エアガンを口にくわえて暴発させたとか、湯船に顔を突っ込んで溺死とか」

「それだけじゃないわよ、SNSで誹謗中傷が酷い、特に訴えられたような連中。負けても懲りないようなヒマヒマアホネとか、ナンタラヒロユキとか、偉そうな肩書並べてた連中もよ…」

半ば馬鹿にするような口調だったが、ダカイチ大臣の声は少し震えていた、それもそのはず

「我々、与党ジコウ党をアシストしてた男どもばかりなんですね、変死体で発見されているようです。いわゆるネトキョクウとか、金をやって野党やその支援者のインフルエンサーを叩かせていたような奴らも、どうやら大半が死んだか行方不明に」

「そ、それもニホン人だけじゃ、ニホンだけじゃないのよ。在留外国人でジコウ党よりだと言われてた人がいなくなってる、リベラルとかのインフルエンサーはみんな無事なのに。あ、アメリカでも」

「ドランプ元大統領父子とナンタラアノン連中の惨劇ですか。まさか、全員で殺し合いをやるとは。生き残りの証言によると、何でも、全員この世から排除だ!we are fireとかいうドランプさんの命令だとか」

「そんな馬鹿なことあるわけないじゃない!あの、ドランプさんが、自分や支持者を殺すようなことするわけが!敵を殺せとかならわかるけど…。な、なにかオカシイのよ、世界中で何か嫌な、酷いことが起こって…」

『おかしくないよ、ダカイチくん』

「え、この声…あ、アベノ元総理!」

「お、落ち着いてください、ダカイチ大臣。アベノ元総理はもう何年も前にお亡くなりに」

『私だよ、わかるだろう』

「そんな、そんな、はず…。ま、まさかダソナのダケナカさんが最後に言ってた声って」

『そうだよ、わかったかね。では、私に従って…舌を引き抜いて死になさい、嘘ばかりついてきた舌なぞ、いらないだろう。国民を、他人を虐げるようなジコウ党議員らはいらない、いやニホン人、人類が生き残るためには邪魔なんだ、エゴの塊で共存の意思も、慈悲の心もないような連中はね。早く死んで、私のところに来なさい、少しでも今まで犯した罪の償いをしようじゃないか』

「いやよ!あ、アベノ元総理の言葉だって嫌!」

といいながら、ダカイチの右の指が彼女の意思に反して舌にかかりそうになる。勝手に羽動く自分の右手を止めようとするダカイチの左手にはいつのまにか鋭いナイフが握られていた。

「だ、ダカイチ大臣!どこから、そんなものを」

ザイトウ議員が止める間もなく、ダカイチ大臣は自分の右手を刺そうとして、舌ごと口内にナイフを深く刺した。

ゴボッゴボッ

口の中に血があふれる。

ダカイチ大臣は喉の奥まで刺さったナイフを外そうとしたが、傷口が広がり、余計に出血が酷くなる。

「だ、ダカイチさんまで…。お、おーいだ、誰か」

動転したザイトウ議員が部屋を飛び出した。朦朧とした意識のなか、ダカイチ大臣の耳に

“さあ、国民のためだ、人類のための命令だよ…君らのようなのは…排除だ”

どこからともなく聞こえてくる排除命令が聞こえる。


どこぞの国ではお国のため―とか、威勢のいいことをいいつつ税金他を蝕んでる輩が多数いるようですが、国ため、人類のためポアされてとか強制されたらどうすんでしょうね、その連中。まあ、そういう場合、選択の余地がないことがほとんどらしいですが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ