表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万能聖女がチートすぎる!  作者: 空木るが
1部 追放聖女と邪毒竜の森
37/105

4章37 万能聖女、邪毒竜ファフニールに挑む1

 


 ダンジョンボスたる邪毒竜ファフニールがいるのは、この森の中心地――『災魔の封殿』と呼ばれる場所で、それは深い谷間の底にある。


「ひぇぇ……これ、落ちたら絶対死んじゃうやつっスよねぇ」


 断崖には、絶壁に沿って階段が設けられているが、幅は乃詠が二人並べるほどしかなく、縁には柵や手すりがあるわけでもない。

 誤って踏み外せば、谷底へ真っ逆さまだ。


「えぇ、そうね。でも安心して。骨だけはちゃんと拾ってあげるから」

「ちっとも安心できないんスけど!? 落ちる前提はやめてほしいっス!」


 まぁ、仮にアークが落ちてしまったとしても、乃詠のスキルがあれば、谷底へ叩きつけられる前に助けられるのだが。


「この渓谷は、テロルソルデスっつー魔物の巣になってる」

「そっか、あなたは一度ここに来たことがあるのだったわね」


 コウガは一度ダンジョンボスと戦っているのだ。

 それは、これから乃詠たちが行く道を先んじて行き、突破して災魔へとたどり着いたことを意味する。

 その点においても、彼が仲間であることは心強かった。


『テロルソルデスは竜の亜種、翼竜の一種で、種族ランクはC。空中機動には秀でておりますが、個々の戦闘力自体は高くありません』

「あぁ。亜竜種ってわりに、防御力は紙も同然だな」

「竜種なのに紙装甲」


 亜種というのは、有体に言えば劣化種だ。最強種である竜から派生し、されど本家の性能には到底及ばない種族。


 とはいえ、仮にも最強種の派生種族である。劣化種といえど、大抵の亜竜は相応の個体性能を有している。――大抵は。

 何事にも例外というのは存在する。


「奴らが面倒な点は、その鳴き声だ。奴らの鳴き声には『恐怖』の状態異常が込められてる」

「テロルだものね」


 このダンジョンの魔物は大抵、種族名の物騒な冠が特性を表しているのだ。


「ま、オレにとっちゃただ喧しいだけだがな」

『コウガ様はそうでしょうね。状態異常『恐怖』は、対象の身を竦ませ行動を阻害するというものですが、対象の個人レベルや抵抗値、種族ランクの高さによって効果の大小も変わりますから。耐性スキルを持っていなくても、Aランクならさしたる影響はないでしょう』


 経験者と博識な相棒のレクチャーを受けながら、階段へと足をかける。

 途端、渓谷に住み着く無数のテロルソルデスが活発化し、各々に鳴き声を響かせ始めた。


 谷間に巣食うテロルソルデスの数は、少なく見積もっても二百体以上。

 最初は十数程度だったそれも、共鳴するように数を増やしていき、そして無数に重なり合ったそれが、不快きわまる不協和音となって一行を襲った。



『キィヤァァァァァァァァァァ――ッ!!』



 甲高い女性の悲鳴、もしくは赤子の絶叫を思わせるそれに、ぞわわわわっと背筋が粟立つ。


「な、何よこれ……状態異常うんぬんなんて関係ないじゃないの……ちょっとコウガ、これのどこが、ただ喧しいだけなのよ」



 ――スキル〈恐怖耐性Lv5〉を獲得しました。



「おまえのステータスならなんともねーだろ」

「そういう次元の話じゃないのだけど」


 ケロっとした顔で不思議そうに首を傾げるコウガには、この不協和音を気にした様子はない。彼は種族ランクが高く耐性スキルも持っているから、状態異常そのものは欠片も効いていないだろう。


 乃詠もそうだ。ステータスが高いし、称号によるご都合スキル獲得で耐性スキルも手に入れた。

 だが――違うのだ。この鳴き声は乃詠の不快指数をぐんぐんと上げていき、SAN値をぐぐーんと削っていく。これはそういう類いのモノである。


 そのへんは魔物と人の違い、もしくは個人の感じ方の違いなのか。

 黒板を爪で引っかく音、または金属がこすれ合う音が平気な人もいるという。乃詠はどっちも苦手だ。


 けれどもまぁ、ただ背中がずっとぞわぞわして鳥肌がヤバいというだけで、状態異常にかかったわけでもなければ、行動を阻害されるということもない。


 種族ランクだけは高いベガと、称号効果に『ぶへんもの』という威圧・恐怖耐性のあるリオンも、乃詠と同じく不快そうに顔を歪めているだけで、特に身体的な影響はないようだ。


 問題はギウスとアークだった。彼らはすっかり身が竦んでしまい、その場から動けなくなってしまっている。


「ぐぬぬぬぬぅ……恐怖になんか、負けて、たまるかっスぅ……! オイラは、お前らなんかに、決して屈しないっスよぉぉぉっ……!!」


 黒い毛皮を逆立て、歯を噛みしめながらしばし唸っていたアークが、うがーっと吠えるや一歩を踏み出す。

 驚くべきことに、彼は気合で『恐怖』の戒めを解いてのけたのだ。


「や、やったっス! 〈恐怖耐性〉スキル、ゲットしたっスよ!!」

「え、本当に?」

「本当っス! オイラは恐怖に打ち勝ったんス!!」


 ステータスを見てみれば、本当に〈恐怖耐性〉スキルが生えていた。


「さすがはド根性ワンちゃんねぇ」

「だからワンちゃんはやめてほしいっス!?」


 確かに、耐性スキルというものは大抵、その効果にさらされ続けることで獲得できるものだが、しかしそれとて容易ではない。幾時間、もしくは幾度もの尋常ならざる苦行を味わう羽目になるのだ。

 だというのに、アークは数分にも満たない時間を耐えただけで、耐性スキルを獲得してしまった。


 これはちょっとアークが異常だ。乃詠の称号さんでもあるまいに。

 まぁ、彼は精神力がずば抜けて高いし、もともと耐性スキルを獲得しやすい体質なのかもしれない。


 とはいえ所詮はレベル1。得意げに笑っているが口元が震えているし、顔色も真っ青で、瘦せ我慢をしているのが見え見えだ。……毛皮があるのに顔色がわかるとか、いったいどういう原理なのだろうか。


 そしてギウスに至っては、本当にキツそうだった。


「……すみません、姐さん、僕ばかり、足を引っ張ってしまって……本当に情けない限りです……」

「気にしなくていいわよ、ギウス。落ち込むこともないわ。あなただって頑張ってそこまで強くなったのだもの。十分すごいじゃない。アークがちょっとおかしいだけよ」

「ひどい言われようっス!? オイラだってめちゃくちゃ頑張ったのに……」

「冗談よ。あなたも本当に頑張ったものね。偉いわ。でも異常なのは確かよ」

「それ、姐さんにだけは言われたくないんスけど」

「私の場合、私がおかしいんじゃなくて、称号さんがおかしいのよ」

「称号だってその人の立派な一部っスよ」


 乃詠とアークのおかしい議論はともかく――事実として、彼らの頑張りはすさまじいものであり、二週間強という期間で、リオン、ギウス、アークに至っては上位種族への進化も果たしていた。



=========================

名前 :(リオン)

種族 :カオスゴブリンハイソードマン

性別 :♂

ランク:C+

称号 :【傾鬼者】

レベル:22

HP  :863/863

MP   :357/357

筋力 :314(+100)

耐久 :272

敏捷 :292(+120)

魔力 :157

抵抗 :190

幸運 :130

固有スキル:〈混沌Lv5〉〈天下御免〉

耐性スキル:〈毒耐性Lv6〉〈麻痺耐性Lv3〉〈混乱耐性Lv2〉〈気絶耐性Lv3〉

      〈闇属性耐性Lv2〉〈物理耐性Lv1〉

武術スキル:〈剣術Lv7〉〈居合Lv4〉

通常スキル:〈剛力Lv5〉〈俊足Lv6〉〈瞬動Lv4〉〈気配感知Lv3〉

      〈先見Lv1〉〈直感Lv2〉〈瞑想〉〈錬魔気〉

=========================


=========================

名前 :(ギウス)

種族 :カオスゴブリンガンナー

性別 :♂

ランク:C

称号 :【トリガーハッピー】

レベル:28

HP  :656/656

MP   :285/285

筋力 :220(+60)

耐久 :199

敏捷 :217(+40)

魔力 :122

抵抗 :133

幸運 :96

固有スキル:〈混沌Lv3〉〈射撃狂〉

耐性スキル:〈毒耐性Lv5〉〈麻痺耐性Lv3〉〈闇属性耐性Lv2〉〈気絶耐性Lv1〉

      〈精神耐性Lv2〉〈混乱耐性Lv2〉   

武術スキル:〈弓術Lv3〉〈射撃Lv4〉

通常スキル:〈遠視Lv3〉〈剛力Lv3〉〈命中Lv6〉〈気配感知Lv4〉

      〈罠感知Lv2〉〈索敵Lv3〉〈俊足Lv2〉

=========================


=========================

名前 :(アーク)

種族 :カオスコボルトガードマン

性別 :♂

ランク:C

称号 :―

レベル:12

HP  :583/583

MP   :230/230

筋力 :189(+100)

耐久 :203(+140)

敏捷 :153

魔力 :89

抵抗 :131

幸運 :81

固有スキル:〈混沌Lv3〉

耐性スキル:〈精神耐性Lv6〉〈物理耐性Lv5〉〈魔法耐性Lv3〉〈炎熱耐性Lv2〉

      〈毒耐性Lv4〉〈麻痺耐性Lv2〉〈闇属性耐性Lv2〉〈気絶耐性Lv2〉

      〈混乱耐性Lv2〉〈恐怖耐性Lv1〉

武術スキル:〈盾術Lv6〉〈棍棒術Lv4〉

通常スキル:〈自己再生〉〈噛みつきLv2〉〈爪撃Lv2〉〈殴打Lv4〉〈剛力Lv5〉

      〈鉄壁Lv7〉〈不屈Lv5〉

=========================



 ちなみに名前が括弧表記なのは、正式に命名したわけではないからだ。正式名ではないが、仮の名前としてステータスが認識しているということである。


 個体によってはレベル上限に達しても進化できない場合もあり、それは実際にレベルを上げ切ってみなければわからないため、無事に進化を果たせたことに皆、心底から安堵していた。


 姿にそこまで大きな変化はないが、三人とも少しばかり身長が伸び、体格もややたくましくなっている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ