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万能聖女がチートすぎる!  作者: 空木るが
1部 追放聖女と邪毒竜の森
28/105

3章28 万能聖女、ダンジョン攻略に乗り出す3



 この地下空間へと足を踏み入れ、試練ボスの姿を認めた時点で、すでにステータスの鑑定は済んでいる。



=========================

種族 :アシュラオーガ

性別 :♂

ランク:A

称号 :【求道の修羅】

レベル:54

HP  :2464/2464

MP   :1075/1075

筋力 :1249(+140)

耐久 :971(+140)

敏捷 :1020(+140)

魔力 :555

抵抗 :759

幸運 :339

固有スキル:〈阿修羅Lv4〉

耐性スキル:〈炎熱無効〉〈毒耐性Lv5〉〈腐食耐性Lv2〉〈麻痺耐性Lv3〉

      〈気絶耐性Lv4〉〈恐怖耐性Lv4〉〈空白耐性Lv4〉〈物理耐性Lv3〉

      〈魔法耐性Lv2〉

武術スキル:〈大刀術Lv8〉〈格闘術Lv7〉

通常スキル:〈身体強化Lv7〉〈気配感知Lv5〉〈直感Lv4〉〈洞察Lv4〉

      〈瞬動Lv5〉〈魔纏Lv6〉〈魔纏・紅炎Lv5〉〈覇気Lv3〉

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 さすがは試練ボスと言わざるをえない圧倒的なステータス。これまで会敵してきた魔物とは、まさしく次元が違う。


『個体によって上がり易い難いはありますが、魔物の成長率も種族ランクで大体決まっています。このアシュラオーガは、どうやら通常のAランク個体よりも成長率が高いようですね。称号の効果でしょう』


 やはり称号やスキルの詳細を解析するだけの余裕は乃詠にはないが、代わりにナビィが行使してくれる。



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◆称号【求道の修羅】

◇称号効果

①『克己』:成長率2倍。ただし、レベルアップに必要な経験値も2倍となる。さらに継続戦闘、および己を追い込むほど成長率が微上昇する。また、HPの残量が一割を切ると全ステータスが1.5倍となる。

②『生命生気』:戦闘中に限り、HPを秒間で一定量、回復させ続ける。

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(『克己』はともかく、『生命生気』の効果は厄介ね)


 その効果は、アークの持つ〈自己再生〉に類似しているが、こちらは傷を癒す際に必ずMPを消費し、また傷が深いほど消費MPが増える。

 対するアシュラオーガの『生命生気』はMPの消費が一切ない。


 何秒でどの程度の量、回復するのかは不明だが、負わせた傷がMP消費なしで自動的に癒え、減らしたHPが回復し続ける――命の削り合いをするうえで、これほど厄介な能力もないだろう。


 乃詠にも称号効果の『HP回復速度上昇』と固有スキル〈聖治癒〉があるので、条件的にはほぼ同じと言えなくもないのだが、HPの自然回復量というのは本当に微々たるもの。称号効果はそれを多少、速める程度でしかない。完全に『生命生気』の下位互換だ。

 それに〈聖治癒〉にしてもMPを消費するのだから、戦闘が長引くほど不利になるのは乃詠のほうである。


 そんな乃詠の現在のステータスは――



=========================

名前:一色乃詠 

性別:女

年齢:17歳 

種族:人間(異世界人)

称号:【万能聖女】

レベル:47

HP  :2220/2220

MP   :2344/2354

筋力 :1185(+140)

耐久 :998(+140)

敏捷 :1283(+140)

魔力 :1179

抵抗 :1323

幸運 :924

固有スキル:〈救済〉〈聖結界Lv6〉〈聖治癒Lv7〉〈浄化Lv6〉〈祝福Lv5〉

      〈聖別Lv5〉〈豊穣Lv5〉

耐性スキル:〈瘴気無効〉〈精神耐性Lv8〉〈苦痛耐性Lv8〉〈空白耐性Lv5〉

      〈毒耐性Lv5〉〈闇属性耐性Lv5〉〈物理耐性Lv5〉

魔法スキル:〈水魔法Lv6〉〈風魔法Lv5〉〈火魔法Lv6〉

武術スキル:〈棍棒術Lv5〉〈格闘術Lv7〉

通常スキル:〈製薬Lv5〉〈身体強化Lv7〉〈自動発動〉〈マップ〉

      〈ナビゲーション〉〈鑑定Lv6〉〈解析Lv6〉

      〈アイテムボックスLv6〉〈気配感知Lv6〉〈悪路走破Lv5〉

      〈木登りLv5〉〈登攀Lv5〉〈危機感知Lv5〉〈空踏Lv5〉

      〈魔纏Lv6〉〈念話Lv5〉〈暗視Lv5〉〈偽装Lv5〉〈成形加工Lv5〉

      〈料理Lv5〉

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 敏捷は乃詠が圧倒しているが、筋力はアシュラオーガに軍配が上がる。こればかりはどうにも覆せず、さらには上から押している敵のほうが有利だ。このまま力比べを続けても、乃詠の敗北は必定。


(……もっとレベルを上げてから挑むべきだったわね)


 だが、これでも粘ったほうなのだ。ナビィからの基本情報をもとに試練ボスの能力値を予測し、そのうえで一週間かけた。

 そうして十分な安全マージンを取ったつもりだったのだが――アシュラオーガのステータスが、想定をはるかに上回っていたのだ。


 もちろん、もっと時間をかけることだってできた。ダンジョン内ということもあり経験値には事欠かず、称号の恩恵もある。


 しかし、レベルは高くなるほど上がりにくくなっていく。必要経験値が増え、低ランクの魔物だといくら狩ってもレベルアップにはなかなかつながらない。


 こんな陰鬱かつ物騒きわまりない森でずっとサバイバルをしていれば、乃詠でなくとも嫌気が差すだろう。早く抜け出したいという気持ちは、当初から微塵も変わっていない。


 何より、リオンたちを早く解放してあげたかった。

 一週間足らず居ただけでうんざりするような環境で、人の心を持ちながら何年も過ごしてきた彼らを、一刻も早くここから出してあげたかった。


 その想いが、乃詠をどうしようもなく焦らせたのである。


(いえ……今更だわ)


 もう試練ボスは目の前にいて、戦闘はとっくに始まっているのだ。

 後悔は詮無く、ないものねだりなど愚の骨頂。今はただ――この戦いに勝つことだけを考える。


 意識を切り替えた乃詠は、現状を打破すべく思考を回す。


(――『ウインドカッター』)


 通常のそれよりも密度を上げ、殺傷力を増した風の刃を複数生み出し、アシュラオーガの顔面や首を目がけて撃ち放つ。


 撃たれる側にとって、最も厄介なのが〈風魔法〉とされている。なぜなら、風というだけあって目に見えないからだ。

 だが視覚的に捉えられなくても、そこに存在している以上は空気が動くし、魔法現象ゆえに魔力も発している。


 保有スキルもあってその手の感覚が優れているアシュラオーガは一瞬、そのまま受ける姿勢を取ったが、すぐに通常の『ウインドカッター』と違うことに気づき、最小限の回避を選択した。


 大刀を引かせることに成功した乃詠は、即座に距離を取る――ではなく、逆に相手のほうへと踏み込んでいく。


 敵は長柄、こちらは無手。リーチ差がありすぎる。間合いで不利な以上、相手を殴るためには、とにかく懐に飛び込んでいくしかないのだ。


 とはいえ、真正面に飛び込むほど乃詠も愚かではない。相手が対人並みに知能のある魔物だからこそ有効となるフェイントを入れ、わずかに身を屈めながら側面へと回り込み、渾身の正拳を突き込む。


 だが敵さんも、そう易々と食らってはくれない。器用にも持ち替えられた大刀の柄に防がれてしまう。そして直後、下段からの蹴りが乃詠を襲った。


 事前に相手のステータスを把握していなければ意表を突かれていただろう。だが予測はしていても、これには堪らず距離を取らざるをない。


 間合いが開いてしまえば、再び相手の土俵。

 当人の心情をこれでもかと体現した獰猛な大刀さばきは、されど流麗で巧緻を極めたものだ。スキルレベル8は伊達ではない。


 牙が見えるほど口角を持ち上げたアシュラオーガは、楽しくて仕方がないといった様子。

 その苛烈ともいえる猛攻を、乃詠は防ぐので手いっぱいだ。ときおり牽制目的で魔法を飛ばすも、なかなか踏み込む隙を与えてはもらえない。


「――姐さん、使ってくだせぇ!」


 〈風魔法〉の『エアインパクト』による衝撃で、強引に敵を引き剥がして大きく距離を取ったとき――その瞬間を見計らったように、リオンが自分の得物である刀を投げて寄越した。


 パシリと受け取った乃詠の唇が、笑む。

 相手とのリーチ差を少しでも埋められればと考えたうえでの判断だろうが――これ以上ない支援である。


(ちょうど、私にも何か武器があればと思っていたのよね!)


 それにしたって、リオンも快く渡したわけではあるまい。

 刀は武士の魂――とまでは言わずとも、自分の大事な得物を、一時的にとはいえ他人に預けたくはないだろう。使用するとなればなおさらだ。


 しかし彼は、乃詠の勝利のために苦渋を呑み、愛刀を貸し出した。

 その決断と献身には、もはや感謝しかない。


「ありがとうリオン! 愛してるわ!」


 ゴンッ、と背後ですごい音がした。


「な、なに今の音!? どうしたの、大丈夫!?」


 敵から目を離すわけにはいかないので、乃詠は後ろを振り向けないが――入口付近の壁際まで下がって戦闘を見ていたリオンが、背後の壁に思いきり後頭部をぶつけ、その痛みも併せて悶えていた。


「……な、なんでもありやせん……こっちのことは、お気になさらず、戦闘に集中してくだせぇ……」

「そう? ならいいのだけど」


 乃詠の今のセリフが軽口の範疇だと理解はしているが、さりとて彼女の性格からそれが決して心にもない言葉でもないこともわかってしまうから、彼らにとっては精神への衝撃が大きいのだ。


 そんな彼の肩を、ギウスが気持ちはわかるとばかりにポンポンと叩く一方で、アークとベガからは、嫉妬と羨望のこもるじっとりとした視線が注がれていた。



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