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万能聖女がチートすぎる!  作者: 空木るが
1部 追放聖女と邪毒竜の森
18/105

2章18 万能聖女、協力要請を受ける3

 


 ほどなくして姿を現した三体の魔物は、種族はそれぞれ違うものの、どうやらカオスゴブリンソードマンのお仲間のようだった。


『他の種族同士でも群れたりするのね』

『なくはないですが、非常に珍しいことですよ』


 ナビィと思念を交わしつつ、参戦した三体の魔物を鑑定する。



=========================

種族 :カオスホブゴブリン

性別 :♂

ランク:D+

称号 :ー

レベル:26

HP  :470/470

MP   :192/201

筋力 :143(+40)

耐久 :136

敏捷 :139

魔力 :69

抵抗 :87

幸運 :65

固有スキル:〈混沌Lv3〉

耐性スキル:〈毒耐性Lv4〉〈麻痺耐性Lv2〉〈闇属性耐性Lv1〉

武術スキル:〈弓術Lv3〉

通常スキル:〈遠視Lv3〉〈剛力Lv2〉〈命中Lv4〉〈気配感知Lv3〉

      〈罠感知Lv2〉〈索敵Lv2〉

=========================



 カオスホブゴブリンはカオスゴブリンの一ランク上位の魔物で、外見は些細な造形やたてがみの色が異なる以外、カオスゴブリンソードマンとそう変わらない。

 背に矢筒を背負い、かなり年季が入ってそうな短弓をその手に携えている。

 種族名にはいないが、クラスはアーチャーのようだ。



=========================

種族 :カオスコボルト

性別 :♂

ランク:D

称号 :ー

レベル:15

HP  :290/307

MP   :111/120

筋力 :83(+20)

耐久 :91(+60)

敏捷 :66

魔力 :34

抵抗 :62

幸運 :42

固有スキル:〈混沌Lv2〉

耐性スキル:〈精神耐性Lv3〉〈物理耐性Lv2〉〈魔法耐性Lv2〉〈炎熱耐性Lv1〉

      〈毒耐性Lv3〉〈気絶耐性Lv3〉

武術スキル:〈盾術Lv2〉〈棍棒術Lv1〉

通常スキル:〈自己再生〉〈噛みつきLv2〉〈爪撃Lv2〉〈殴打Lv3〉〈剛力Lv1〉

      〈鉄壁Lv3〉〈不屈Lv4〉

=========================



 カオスコボルトとは、デスハーピーから逃れたあとで何度か戦っている。

 黒い毛並みと青い目を持つ二足歩行の犬、もしくは狼といった姿。肩と腕に簡易な鎧をつけ、金属で補強された木製の盾と鉄製のメイスを装備している。



=========================

種族 :カラミティヴィーヴル

性別 :♀

ランク:B+

称号 :-

レベル:7

HP  :1414/1414

MP   :97/628

筋力 :587

耐久 :496

敏捷 :501

魔力 :333

抵抗 :372

幸運 :224

固有スキル:〈竜鱗〉〈災渦Lv6〉

耐性スキル:〈毒耐性Lv4〉〈麻痺耐性Lv2〉〈混乱耐性Lv1〉〈魔法耐性Lv1〉

魔法スキル:〈白魔法Lv4〉

武術スキル:〈投擲術Lv7〉

通常スキル:〈変化Lv1〉〈爪撃Lv1〉〈尾撃Lv1〉〈命中Lv5〉〈飛行Lv2〉

      〈裁縫Lv5〉

=========================



 この場で種族ランクが一番高いカラミティヴィーヴルは、驚くほど愛らしい見た目をしていた。


 顔の作りは人間の少女そのもので、雪のように真っ白な髪は先のほうがうっすらと紫色を帯びている。

 鮮やかな赤色の瞳はくりりと大きく、頭部には角が二本。肌は青みがかっているが、蛇に似た下半身と背中から生えた皮膜翼は白銀だ。


 しかしナビィいわく、本来のカラミティヴィーヴルの鱗と髪は青紫色で、瞳は深い蒼色らしい。アルビノの一種だろう、と。それに、顔の造作もあんなに綺麗なものではなく、もっと怪物寄りだそうだ。


 だが乃詠には、彼女の容姿よりも気になることがあった。


(あの子、怯えてるの? 能力値で圧倒しているのに?)


 強化や回復に特化した魔法スキルを所持してはいるが、全体的なステータスやスキル構成は近接型。だというのに、だいぶ距離を取った後方から投石での援護しかしていない。

 スキルの恩恵もあって命中率は高く、速度や威力もあるが、狙っているのは致命傷となりえない急所外――いや、ほとんどが足元の地面だ。明らかに牽制のみを目的としている。


(あの返り血まみれみたいな熊が恐ろしいのはわかるけれど……相手に、というより戦闘行為そのものに対する怯え……いえ、他者を傷つける行為への怯えかしら。だとすれば、ずいぶんと心優しい魔物もいたものね。まぁ、外見どおりというべきかもしれないけれど)


 そこまで考えて――いや、と乃詠は思い直す。

 他者を傷つけたくないというのが、優しさによるものとは限らないだろう。彼女の表情から見て取れるのは、徹頭徹尾〝怯え〟なのだ。

 己の手で他者を害するのが恐ろしいということなら、それは決して優しさなどではなく、心的な負の要因からくるものに他ならない。


(……まぁ、魔物にだっていろいろあるのよね、きっと)


 少なくとも、今それを乃詠が深く追及する必要はない。

 軽く頭を振って思考を打ち切り、戦闘のほうへと意識を戻す。


 カオスゴブリンソードマンチーム――長いのでカオスチームとするが、彼らはなかなかのチームワークを見せていた。


 刀を携えたカオスゴブリンソードマンが純粋なアタッカーで、盾とメイス持ちのカオスコボルトがタンクメインのアタッカー、弓使いのカオスホブゴブリンは中衛遊撃、カラミティヴィーヴルは後衛でのサポート役といったところか。


 実にバランスの取れたパーティー編成で連携も取れているが――しかし、劣勢なのは明らかにカオスチームのほうだ。


 確かに上手く立ち回ってはいるが、ジェノサイドベアの耐久力に対し、カオスチームには火力が不足している。

 ダメージ回避はできても、有効なダメージを与えられない――いわば膠着状態。

 このまま長期戦にもつれ込めば、先にへばるのはおそらくカオスチームだろう。


『――あぁ。運がないですね』


 そこへ、他の魔物の乱入があった。

 青毛に体長がニメートル近くある狼――D+ランクの『キラーウルフ』が四体。

 キラーウルフたちは特段、どちらの味方をするでもなく、戦いは三つ巴の様相を呈する。

 だが、弱いほうを狙うのは野生の摂理であり、戦闘のセオリーでもあった。


『ノエ様、どうされますか?』

『それは、もちろん――』


 頭の中でナビィの問いに返しながら、乃詠は立ち上がる。


 カオスゴブリンソードマンは、魔物なのに人である乃詠を庇ってくれた。

 筋力に劣っていると承知したうえで、切り札を使ってまで間に割って入り、逃げろと言ってくれたのだ。


 ステータス的に必要があったかどうかなど関係ない。

 体を張って助けてくれた――その事実だけで十分だ。


『彼らに加勢するわ』

『相手は魔物ですのに。義理堅い方ですね』

『そう育てられたのだもの』


 重んじるは義理人情。「仁義を欠く行いだけは絶対にするな」が口癖の、一家の組長たる父親。弱きを助け強きをくじく、現代ではもはや天然記念物と言える任侠一家――それが乃詠の実家なのだった。


 ただの女子高生らしからぬ気概と胆力の持ち主なのも、聖女らしからず武闘派なのも、遺伝に加えて育った環境が大きく影響している。もちろんそこには、親友の影響も多分に含まれているが。


「お嬢さん!? 何を――」


 棍棒を手に乱戦の中へ勇んで飛び込んでくる乃詠の姿に、ジェノサイドベアと対峙していたカオスゴブリンソードマンが吃驚する。しかし乃詠はチラと視線を流しただけで地面を蹴り、殺戮熊の背中へ躍りかかった。


 振りかぶった棍棒を全力で振り下ろす――が、返ってきたのは鉄板でも殴ったような硬い手応え。

 じぃんと肩まで衝撃が伝わってきて、乃詠は眉をしかめた。


「かったぁ……もふもふ詐欺だわ……」


 傍目には柔らかそうなもふもふ。されどその実態は鉄のごとき剛毛。

 まさに詐欺にあった心境で睨みつければ、ジェノサイドベアもまた苛立ったように乃詠を睨んでいた。

 それは煩わしさによる苛立ちだ。今の殴打で堪えた様子は一切ない。

 実際にはノーダメージではないが、ほんの少しHPが減っただけである。


「なんで逃げねぇんでぃ! 無謀にもほどがあらぁ! 死にてぇのか!?」

「死ぬつもりはないわ! さっきは庇ってくれてありがとう! その恩を返しにきたの! 心配しなくても大丈夫よ! こう見えて、私けっこう強いから! ……たぶん」

「たぶんじゃねぇかっ!!」


 捕捉はぼそりと小さな呟きだったが、耳ざとく拾ったようだ。そのキレのあるツッコミ――ますますもって魔物とは思えない。


『ジェノサイドベアの耐久値を上回る私の筋力でこれってことは、やっぱり〈物理耐性〉がいい仕事してるのかしら。レベル2とはいえ厄介ね』

『それもありますが、体毛が鋼鉄のごとき硬度を誇るのは、ジェノサイドベアのもともとの性質でもあります』


 ステータスには現れない特性というやつだ。

 厄介な、と乃詠は小さく舌打ちしてしまう。



 ――熟練度が一定に達しました。スキル〈身体強化Lv5〉が〈身体強化Lv6〉にレベルアップしました。



(グッドよ、【万能聖女】)


 この状況で、特に筋力へのプラス20は大きい。


 再度殴りかかり、ジェノサイドベアの攻撃を躱して胴を側面から薙げば、今度はちゃんと手応えを感じた。

 だが、相手もこちらの攻撃を馬鹿正直に食らうばかりではない。


 その鈍重そうな巨体とは裏腹に機動力が高く、なかなか有効打を与えられないまま――手元から嫌な音が聞こえた。



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