第007話 学校の常識
第007話 学校の常識
今日は神社の宮司の安倍さんに連れられて、県庁がある都市部の提携している大学に行くことになった。
どうもオープンキャンパスの日なので誰でも受講出来るらしい。
安倍さんが今日の目的を話してくれた。
「今日は皆さんに常識を手放していただくために、特別なオープンキャンパスの授業へお連れしました。
巫女の方々には常識が邪魔をして、修行に集中出来なくなることがよくあります。
今日の教授のお話を聞いて、是非、常識を疑ってもらいたいと思います」
大学の教室の前で安倍さんとサクヤ先輩と一緒に待っていると、大学の教授が来られた。
大学の教授の方が自己紹介を始めた。
「ようこそいらっしゃいました。
自己紹介させていただきますが、ここの大学で物理学の客員教授をしている近衛と申します。
安倍さんとは古いお付き合いで、よく神社へお伺いさせていただいているんですよ。
そういった経緯もあって、いつも巫女の見習いの方々には臨時でオープンキャンパスの授業をさせていただいております。
それでは授業を始めますので教室にお入りください」
近衛教授に言われて、教室の席についた。
一般人の生徒もたくさんいるようだ。
近衛教授のオープンキャンパスは面白いと評判で人気があるらしい。
近衛教授からは、さっそく一風変わった話を聞くことになる。
「今から新しい時代の基本的な考え方を皆さんにご説明します。
大学の物理学の教授が言うのも何ですが、正直言って普通に古い物理学を勉強しても意味がありません。
今から学校で教わったような忘れて欲しい古い概念を言いますので、きれいさっぱり頭の中から忘れてください。
そうしないとこれ以上の進歩が出来なくなります」
ビックリだわ。
この人は、いきなり全否定から入ってきた。
近衛教授は、頭をかきながら話を続けた。
「まずは新しい量子を基本に考える物理学です。
量子の世界では、この世は全て「波動」で出来ていると考えます。
学校で教わった原子とか電子とか古い物理学の世界は、もう忘れてください。
あらゆる物を構成する「波動」とは何か。
この「波動」を追求することで見えなかったものが見えてきます。
ある実験で誰かが観測した場合と、観測していない場合で実験結果が変わることが証明されました。
物理学の物理法則など所詮は観測者の意思によって「波動」に変化を与えると、物理的な結果なんてものは変わるのです。
光の量子もつれを波動関数で可視化した結果、古代から伝わる陰陽マークに酷似するのはなぜか、見て見ぬフリをせずに意味を考える時代はやってきたのではないでしょうか。
あらゆる物質は増やすことは出来ても、永遠に消滅させることは出来ません。
生まれた「波動」は消すことが出来ないのです。
この「波動」の概念を研究する波動科学が発展すれば、あらゆる物理や化学、そして工業製品を発展させるでしょう。
エネルギー問題や、環境破壊の問題も同時に解決し、反重力装置で自由に宇宙に行ける時代もくるでしょう。
さらには過去や未来、そして遠い宇宙の彼方にも移動することが出来ます。
「波動」を正しく理解し、その鍵となるクリスタルの真の機能を使いこなすことで、巨石文明のような、あらゆる超常的な現象も、あっさりと説明が出来るようになります。
家庭にさりげなく置いてある電子レンジは、驚くべきことに1950年代に開発されており、現代ですらも明らかなオーバーテクノロジーです。
この電子レンジの本当の構造を理解する時代が到来すれば、古代文明でクリスタルを重要視していた意味も、そのうち解明されるでしょう」
誰かがそうしたいと思っただけで実験結果が変わるって、なんだか分かる気がする。
たしかに願いって、実現するためには重要な要素なんじゃないかしら。
近衛教授は、教壇の前まで移動すると話を続けた。
「次に時間という概念です。
新しい物理学の世界では時間と言う概念はありません。
未来と過去は同時に存在し、未来は過去に原因結果の法則で影響するという理屈は現代の物理学では証明できても異端とされています。
ゲームの世界では、未来の因果関係で過去が変わるのは当たり前ですが、現実も同じです。
未来のせいで、現在や過去すらも変わるのです。
時間がまっすぐに直進するだなんて考えは忘れてください。
正しい時間軸の基礎となる法則は、原因結果の法則とも言いますが、先に原因があることと、後に結果があることだけです」
普通はこんな話しを大学で聞かされたらみんなドン引きするんじゃないだろうか。
サクヤ先輩は初っ端から突飛な話を聞かされて何やらザワついている。
この教授が言っている未来が過去に影響するって話は、たしかに誰かに聞いた話のような気がする。
大学の教授なんていうから眠くなるのかと思ったら、話が面白いので先が気になりだしている。
それにしてもこの教授は言うことも変だけど、見た目もファンキーだ。
その近衛教授は、教室の黒板の近くを左右に移動しながら、雄弁に語っている。
「次に人間の進化論です。
人間の進化論なんて忘れてください。
猿が人間になんてなるわけがありません。
猿が人間になるなら、そこの動物園にいる猿は何なんですか?
じゃぁ猿より賢いクジラや、イルカ、カラスは何なんですか。
その前にいた恐竜は何なんですか。
人間の遺伝子の地域別の系統と分岐は容易に確認出来る時代になりました。
日本人の遺伝子が特殊で周囲のアジアの国とは違う遺伝子だっていうのも確認されています。
じゃあ、人間の先祖は、動物園にいるどの猿が先祖ですか?
金髪で青い目を持つ白い肌の動物なんて恐竜図鑑や動物図鑑で見たことがあるでしょうか。
どの猿ともつながっていないのは遺伝子の分岐を見れば明らかでしょう。
ゲームみたいに、5千年前とかに、いきなり猿が人間に進化するのでしょうか。
我々の祖先であるネアンデルタール人とホモサピエンス人の2つの種族以降の脳は、1,000立方cmを超えていますが、それ以前の猿人では600立方cmしかないのです。
いきなりゲームのように種族が進化して、脳のサイズが2倍になるでしょうか。
脳の肥大化に併せて脳のエネルギー消費量も増え、体を動かさなくても体のエネルギーの25%も脳だけで消費するようになりました。
それ以前の猿人では脳のエネルギー消費量は8%程度と言われています。
我々の遺伝子が、地球の基準を遥かに超えるレベルで特殊過ぎるのは明らかでしょう。
それに、猿人と、ホモデニソワ人、ネアンデルタール人、ホモサピエンス人は同時期の同じ時代に生息していたことが確認されつつあります。
つまり別時代に直列で進化したのではなく、同時期に存在しライバルの種族として他の種族を淘汰するような戦争や征服行為があった可能性があるということです。
現在では、ホモデニソワ人の遺伝子を引継ぐ地域や、ネアンデルタール人、ホモサピエンス人の遺伝子を引継ぐ地域などが遺伝子の解析で明らかになりつつあるのです。
大陸ごとに、おおよそどの遺伝子を濃く引継ぎしているかは分かれています。
この遺伝子を持つ人間の分布を追えば、過去の時代にどのように大陸を移動していたのかも明らかになるでしょう。
いずれは約78,000年前の最初の人類に辿り着く以外の選択肢は全て失うでしょう。
良く常識と言われて教わったことを考え直してみてください」
たしかに猿がゲームみたいに、クラスチェンジして人間タイプに急に進化したらって考えると変よね。
エネルギー消費が変わるってことは、食べ物の生活習慣なんかも大きく変わったってことになるし。
なんだか分からなくなってきた。
教室全体もなんだかザワついてきた。
近衛教授は、黒板に図解を書きながら話を続けた。
「次に歴史です。
学校で世界の大規模河川の周辺で興った四大文明とか五大文明とかは教わりましたか。
この文明って、いつの時代だったか覚えていますか?
一般的に言われているのが、今から約5千年前が最古とかですよね。
イマイチわかっていないシュメール文明すら約6千年前とかですよね。
歴史の授業でサラっと流してしまう我が国の日本の歴史ですが、縄文時代っていつから始まっていたか覚えていますか?
約1万6千年前とかには普通にありませんでしたっけ。
普通に5千年前からある神社とかなかったですか。
「ココチリ」模様と言われる日本にある有名な紋章と同じ紋章が、世界中の古代遺跡に普通にあるのは何故でしょうか?
何か、順番がおかしくないですか。
ギリシャの哲学者も、もっと前の時代の話を普通にしていませんでしたっけ。
歴史の常識も忘れてください。
考古学の世界では特定の宗教の世界観を変えてはいけない暗黙のルールがあり、リアルな歴史は皆が知っていても学説としては成立しないのです。
また、昔から歴史は勝者の物とも言いますが、今の時代でも何も変わってはいないということです」
そうそう、それは前から思っていたのよ。
博物館とかで聞いた話と、教科書の時間軸が合ってないのは確かね。
近衛教授は、咳払いをしてから話を続けた。
「次にプレートテクトニクスです。
本当に地球の表面にプレートなど存在しますか?
高温のマントル層、低温のマントル層、地殻層の3階層以外に説明が必要なものなど本当にあるんですかね。
プレートではなく、地殻層の厚さが普通は平均500kmの場所が多いのが、部分的に120kmの薄い場所があるだけじゃないんですか。
地震の説明をするなら地殻層よりも、マグマ道の本管がある場所を調査した方がよくないですかね。
マグマ道とは、低温のマントル層からマグマの道が水道管のように地表に向けて伸びている管のことです。
マグマ道は、地表までの途中に水道のタンクのようなマグマ溜まりがあるのが特徴でしょうか。
このマグマ道の日本を縦断する本管が、日本海側のある半島と島の中間ぐらいから富士山に向けて直線で伸びているとは考えられないですかね。
この直線上には有名な火山と温泉街が5つ存在します。
標高の高い山々が連なる地域は、地殻層にマグマ道があって、地面を上へ押し上げるようなマグマの存在を考えるとスッキリしませんか。
北側の日本海側で起きたマグマ道上での異変は、徐々に南側に移動していく可能性を疑うべきでしょう。
四国にも富士山の名前を持つ山がありますが、昔の人がそのような名前をつけたということはマグマ道との関係を疑うべきでしょう。
マグマ道は水道管のように本管とは別に枝管も存在します。
まずはマグマ道の場所を特定して、次に枝管まで把握するのが最初にやるべきこととは思いませんか。
次に大地震の発生前後を、宇宙から調べないで地上で局地的に頑張って調べているのは何ででしょうね。
震源地の上空の電離層を宇宙から調査した結果はどうして公表しないのでしょうか。
普通に素人が考えても宇宙から地球全体の電磁気の磁場の変化を調べるのが先じゃないですか」
たしかに、この時代になっても、まだ地震の説明が上手く出来ないっておかしいと思うわ。
何か本質的な部分が間違っているんじゃないかって気がする。
近衛教授の常識外の話が、まだまだ続く。
「次に宇宙です。
学校では地球は太陽の周囲を1年かけて1周していると教わります。
本当に楕円で同じ場所を周回しているのでしょうか。
天動説と地動説のどちらが正しいと思いますか?
地球が所属する乙女座銀河団、天の川銀河、太陽系は全て渦巻の中核にあるブラックホールを中心に回転しています。
宇宙の写真を見ると星々が渦巻状に配置されているのを、常識として普通は知っているでしょう。
これは渦巻状に停止しているのではなく、常に移動しているということです。
太陽は止まっているのではなく、実はとんでもない高速で縦に移動しているとは考えられませんか?
つまり地球は太陽の周囲を1周しているのではなく、渦巻状に上昇し移動しており、同じ場所には二度といないということです。
これは地球が置かれた環境が極めて不安定で、同じ年の繰り返しなど二度となく、巨大な宇宙を人間と共に旅をしているということでしょうか。
みんなの宇宙船地球号とは良く言ったものです。
天動説と地動説を2択で迫る手法は、思考の広がりを驚くべきほど縛りつけます。
本当は両方がある意味で正しく、ある意味では誤っており、第三の選択肢が存在すると言うのが正解ではないでしょうか。
現在の状況として太陽系は、2013年頃からすでに新しい宇宙に入って進んでいます。
そして天の川銀河自体も2億3千万年かけて1周し終えて、新しい次のフェーズに切り替わっています。
太陽系がいままで通りの環境で変わらないと思う方がおかしいと思いませんか。
皆さんも、いかに今が激動の時期なのか日常レベルでも感ているんじゃないでしょうか。
地球の氷河期などの周期は何が原因で起きるのでしょうか。
地球と、天の川銀河の中心付近にあるセントラルサンと言われるものとの距離感が、地球の周期に影響しているとは考えられませんか。
地球が太陽の周囲を同じように周回しているなどという話は忘れてください。
螺旋状に移動するイメージとは天に昇る龍が太陽の周囲を回転しながら上昇していくようなイメージです。
太陽を頭にして惑星は龍のように連なっているように見えませんか?
ちなみに、これって何かに似ていませんかね?
そう遺伝子の螺旋構造です。
宇宙の構造と人間の脳は非常に似ています。
分からなかったことも、どちらかで分かっていることを調べれば解決に近づくでしょう。
これは宗教の古文書で見られるような宇宙創成の話と何か関係があるのでしょうかね。
日本では1万年近く前から地球のことをチダマと古文書に書かれていました。
地球が球のように丸いって事を知っていたということでしょうかね。
教科書と言ってることが違うって分かりますか?」
太陽が高速で移動しているなんて、地動説を聞かされた中世の人ぐらい目からウロコな話だわ。
言われるまで考えもしなかった。
でも言われてみると、直感的にその通りだと思う。
何でそんな当たり前の感じがする話を誰もしないんだろう。
何か学者たちに都合の悪い事でもあるのかしら。
近衛教授の説明は、さらに加速している。
「次に太陽です。
太陽の光線が熱いって話は本当だと思いますか?
太陽の光線が熱かったら、宇宙船に当たって炎上しませんかね。
宇宙は逆に寒くなかったではないですか。
宇宙は、真空のマイナス250度の世界で、人間が外に出れば一瞬で凍るような世界じゃなかったですか?
山の山頂って太陽の光線で熱かったでしょうか、逆に涼しかったような。
太陽側の地球の表面だけ、太陽の光線の熱さで容積が歪んでたりしましたっけ。
太陽の光線が熱いのではなく、太陽から出る放射物が地球の大気の成分に衝突して満遍なく熱が出ているって考えた方が普通じゃないですか。
太陽はガスの固まりで燃えているだなんて、そんな話は本当ですか。
ガスの固まりだったら、どうやって中心に重力を維持するんですか。
それにガスの固まりだったら引火して大爆発するんじゃないですか。
何億年も燃料切れにならないのもおかしくないですか。
地球と同じように地面があるから重力が維持出来るとは、何故考えないのでしょうか。
磁気、電気、光、色、火、音が「波動」による周波数が違うだけの同じ物質だという学説を追求しないと、太陽の説明は難しいでしょう。
固体は周波数が最も低い最終形態だとは考えられないでしょうか。
ガラスを通過する太陽の光線がガラスと同時に同じ空間を占有している事実に気が付くべきでしょう。
太陽についての常識は、全て捨ててください」
たしかにガスの固まりで何億年も燃え続けてるって言われたらおかしな話だわ。
地球上だったら大爆発するって、みんな普通に思うでしょう。
近衛教授は、次にブラックホールを黒板に図解し始めた。
「次に宇宙の謎で定番のお話です。
ブラックホールって皆さんご存じでしょうか。
ブラックホールって謎に何でも吸い込み続ける掃除機みたいな存在だって話です。
吸い込んだものってどこに行くのでしょうか?
普通に考えたら、吸い込んだものって、どこかへ吐き出しますよね。
頭の口と、お尻の関係に似ていると思っています。
集約して次元を上昇するブラックホールとは逆に、拡散して次元を下降するホワイトホールというものが存在します。
この二つのホールの関係も難しく考える必要はありません。
全ては2つの対となる遺伝子のヒモの螺旋構造と同じです。
螺旋構造は上から見ると渦巻に見えます。
二つの対となる陰陽、つまり光と闇のヒモが螺旋構造を維持しつつ回転しながら上下へ移動していきます。
この螺旋構造ですが、この中心にある光と闇が混ざった部分が、実は非常に大事です。
この混ざった部分こそが上下に穴を貫通させる大事な仕組みになっています。
では、なぜ螺旋構造による渦巻が必要なのか?
螺旋構造は周囲を巻き込みながら上下に推進力を生み出します。
ためしにお風呂の水を手で船のスクリューのようにグルグルと時計周りや反時計回りで回転させてみてください。
お風呂の水の中で上下に推進力が生まれていませんか。
ここでポイントなのは、このお風呂の水の形は横から見ると竜巻に見えますが、上から見ると何かに似ていませんか。
そう、銀河系の形です。
じゃあ銀河系の螺旋構造の渦巻の中心に何があるのか分かりますよね」
お風呂の例えは分かりやすいわ。
そう言われると、なんだか身近に感じる気がする。
近衛教授の壮大な話は続く。
「次に光です。
光より速いものって本当に無いんですか?
光は直進していると本当に思いますか。
光はなぜ直進する推進力を得ているのでしょうか。
光も「波動」も螺旋構造だからこそ、移動が出来ているとは理解出来ませんか。
だから皆さんが思っているよりも、宇宙の中では移動速度がかなり遅い。
世界のことを、同時並行で発生する横のパラレルワールドと、「波動」の高さで変わる縦の多次元の2軸で考えてみてください。
縦に移動したり、横に移動したりしてから、元の世界に戻れば一瞬で宇宙の果てに移動出来ます。
最近のSF映画は物理学者の話なんかよりも、よっぽど創造力豊かで良く出来てますよね。
まさにワープ航法のことです。
宇宙には宇宙に存在する根幹のエネルギーを引き込めるようなスポットがあると聞いたことはないですかね。
そういうスポットが発見出来れば大きく考え方が変わるでしょう。
当然ですが、この考え方であれば、過去にも移動出来ます。
宇宙で光より速いものが無いなんて誰が考えたのでしょうか。
もっと非常識な常識がないのか疑ってかかるべきでしょう。
光が最速だなんて概念は忘れてください」
確かに映画の世界って現実より進んでいる気がするけど、あんな知識ってどうやって調べたのかしら。
近衛教授はペットボトルのお水を飲んでから話を続けた。
「失礼しました。
それでは次に地球の重力はどうでしょうか。
地球の重力下では、重さが違う物が同じ速度で落ちるとは、一体どういう意味でしょうか?
偉大な科学者の数式を妄信せずに、良く見てみてください。
当たり前の常識で考えてみて、その数式自体に何か違和感を感じないでしょうか。
重力子なんて探しても永久に見つからないでしょう。
量子力学の説明の通り、世界が全て「波動」を固めた物質世界で形成されているならば、銀河系と同じように螺旋構造の強力な力で渦巻のように力場が形成されているとは考えられませんか。
こうした螺旋構造の渦巻の基本を理解しながら物事を考えていかないと、本当の物理の世界の姿が見えないのです」
重力子って何かの科学雑誌で見たことがあるけど、直感的に違和感しかないのよね。
やっぱりおかしいんじゃないかしら。
近衛教授の授業はさらに盛り上がってきた。
「次に脳はどうでしょうか。
脳って本当に記憶を保存していると思いますか?
それだと輪廻転生した過去世ってどう説明しますか。
幽体離脱した時や、幽霊が持つ記憶や感情って何でしょうか。
脳って感情を持っていると本当に思いますか?
緊張すると、脳より先に心臓が暴れていないでしょうか。
嫌なことがあると脳ではなくて、胃腸の方が辛くないですかね。
寝ているのに感情や記憶があるってどう説明しますか。
脳にあるシナプスって電気が動いてますが、ハードディスクって言うよりも通信機器に見えませんかね。
脳は、まだまだ十分な研究が必要でしょう。
遺伝子もセントラル・ドグマなどと呼ばれていますが、遺伝子が細胞や細胞分裂を全て管理していると言うのが常識です。
そうなるとトカゲの尻尾を切った場合に、どうして蘇生が可能なのでしょうか。
クラゲは栄養が無いと、子供時代に逆行して成長するのは、どうしてでしょうか。
腸で造血されるのは、どうして可能なのでしょうか。
血液は、どうして体のパーツに再構成されるのでしょうか。
エントロピー増大の法則が片道なのは、違和感を感じないでしょうか。
枝葉の研究などではなく、もっと根源的な部分に疑問を持つべきでしょう」
たしかに頭より体の方が正直って説明は意味不明よね。
じゃあ逆に頭って何って思う。
授業も時間的に終わりに近づいてきた。
教室の生徒たちの熱気も最高潮に達している。
近衛教授は話を続けた。
「それでは、そろそろ時間ですが。
いずれにしても全ての学問は学会と学部により縦割りに分断されることで、あるレベルから人類が発展出来ないような大きな足枷となるでしょう。
特に経済学を数学が出来ない文系が担ったり、地震の分析で衛星からの情報を使えないなど、そもそもこの縦割り科学をどう思いますかな?
既存の強大な学説は、政治経済を含めた世界全体の秩序に従い圧倒的に盤石な基盤の体制を敷いて栄華を享受しております。
これらの学説が例えどのようなモノであれ、基盤を揺るがす存在に対しては驚くべき行動に出ることだけは認識しておくべきでしょう」
そうこうしている間にあっという間に授業が終わった。
この教授は、冒頭から常識で考えたらハチャメチャだったけど、むしろ個人的には普通な事を言っているように聞こえてしまった。
近衛教授は安倍さんと話をしながら一緒に教室を退出された。
巫女の修行ってこんなのが続くんだろうか。
サクヤ先輩と目が合ったけど、苦笑いしている。
正直言って想像していたものと違い過ぎる。
でも何だか目が離せないって言うのか、この先で何が起きるのか、とっても気になるのは間違いない。