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ごめんなさい、そのガラスの靴は本当は私のものではないの。
ただただ、煌びやかなその世界に憧れて、祈ってしまったの。
そしたら、周りが誤解して、勘違いして、間違えてしまったの。
本当は私じゃない誰かのものだったはずなのに、私も否定せず、曖昧に微笑んでしまった所為。
少しだけ夢を見てしまったの、キラキラした世界で楽しい時間を過ごす事を。
だから、この時間は夢で、終わりが来るって信じていた。
なのに、あの人は私に執着を見せた。
それが恐ろしくて、振り切って逃げた。
私じゃない誰かの居場所を取ってしまうんじゃないかと、恐れた。
ガラスの靴の片方は態と落としたんじゃない。
逃げる途中に脱げてしまったの。だって、私のじゃないから、サイズがあっていなかったんだもの。
魔法は解けて、ドレスもなくなったのに、片方のガラスの靴を見て、恐怖を覚えた。
だから、慌てて壊して捨てたの。
これで、きっと誰も私を探せないよね? きっとそうよね?
そう思うのに、どうしてかしら? 不安なの。
これは他の誰かが主役のお話なんだもの。謝るから、だから、お願い、私を見付けないで。




