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彼の喉笛は掻き切られた。
彼女の心の臓には鈍く光るナイフがつきたてられた。
もうすぐ彼らはこの世を去ってしまうのだろう。
これは誰が望んだ結果?
誰も彼もがあの恐怖に立ち向かっては散っていく。
臆病な私は見つからないようにフードを深く被り、物陰に息をひそめる。
何時になったら、この悪夢から目覚められるのだろう?
魔王に勝つ事の出来る勇者は今日も現れない。
明日現れる人は勇者になれるのだろうか。
今日も私は震えるしかできない能無しだ。それはきっと明日も……。