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「綺麗事ばかりおっしゃらないでいただきたく存じます」
貴女はそんな事を言った。
私の言う事はそんなに綺麗事だろうか?
聖女なんて呼ばれても、戦場に出て手を汚しているのに、言っている事が本当に綺麗事だろうか?
貴女の方が余程、綺麗事を吐き捨てそうなのにね。
剣を一度も握った事もないその手は白く、柔く、美しい。
紅で彩られたその唇から紡がれる言葉こそ、醜く、汚い現実を知らない綺麗事に聞こえる。
戦いで手を汚させられた聖女と戦いを知らずに守られた悪女。本当に汚いのはどちらなのだろうね。
希望に満ちた幻想を吐かせられる私の言う事は貴女にとっては綺麗事なのかもしれないね。
けど、現実を見て?
私は民たちに必要な希望を国の意志で吐かせられているだけの偶像。
それを理解していない貴女はただただ守られるだけの綺麗な存在。
そのくせ、我儘ばかり言うのだから、悪女と罵られるんだよ。
それが嫌なら、もっと現実を見てごらん?
偽物の悪女様。




