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金木犀の甘い香りが鼻腔を擽る。
香りの中に温もりも感じる。
その香りに溺れそうな程にここは満たされている。
その名に違わぬ色がヒラヒラと散る様子は艶やかに舞っているようにも見える。
気高く、美しく、心酔させる。
何故、私をここまで惹きつけてやまないのだろう。
いっその事、私の箱庭に閉じ込めておきたくなる。
けれど、それはできない。
時を止める事も出来ない私に、枯れる事のない世界は作れない。
私が作る世界はどうして醜くなっていくのだろう?
これ程までに美しい物で溢れる世界を、どうして私は再現できないのだろう?
私が欲しい物はきっといつまで経っても手に入らない。




