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色とりどりの浴衣がヒラヒラと目の前を通る。
楽しそうな笑い声、祭囃子、出店からの威勢のいい声。
色んなものが溢れすぎてて眩暈がしそうだ。
そっと目を閉じると頭を叩かれた。
「店番だろうが」
その怒号に溜め息が零れた。
「はいはい」
そう返事をすると睨まれた。
本当は店番なんかしたくない。
眩暈のするあの景色に溶け込みたい。
そんな気持ちをぐっと堪えながら、愛想笑いを浮かべる。
脇役がいないと主役は楽しめない。
誰かにそんな事を言われたのを思い出した。
きっと自分は脇役で、お祭りを楽しんでいる人は主役なんだろう。
自分はいつも主役にはなれない。




