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シェーレグリーンのドレスを身にまとう君に綺麗だと言ってしまった事を深く後悔している。
君はボクの言葉に嬉しそうに微笑んでいた。
君は綺麗になる為の努力を怠らなかった。
流行りのものはすぐに取り入れて、他人からの目を常に気にして、優雅に振る舞っていた。
その様子はとても美しかった。
君が新しい白粉を使い始めた時も綺麗だと褒めた。
すると、君は頬をほんのり染めて、可愛らしく微笑んでいたね。
君が口紅を変えた時も綺麗だと褒めてしまった。
だって、君が幸せそうに微笑むから。
もし、ボクが君に綺麗だと言っていなかったら、君は今でも生きていてくれただろうか。
ボクの言葉が君の命を奪ってしまった。
これ程までに辛く悲しい後悔があるだろうか?
シェーレグリーンも、鉛白も、辰砂も綺麗に見えていたはずなのに、今では醜くて、憎くてたまらない。
そして、ボクの言葉が一番憎い。
ああ、君に綺麗だなんて言わなければよかった。




