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シェーレグリーンの服も、鉛白入りの白粉も、辰砂の口紅も、どれもとても綺麗だったわ。
けどね、どれもこれも人の体を蝕んでいったの。
分かっていたはずなのに手放せなかったの。
そんな気はしていても遠ざけられなかったの。
だってね、とてもとても綺麗だったの。
私を飾るそれらはどれも綺麗だったの。
身に着けると、それらの毒で蝕まれていく事にはいつだったか気付いていたのよ。
最初のうちに手放せば助かったのかもしれないわ。
それができなかったのは、それらを身に着けた私を、あなたが綺麗だと言ったからよ。
だから、それらを身に着けて私は逝くわ。
だからお願いよ。最期に私にもう一度「綺麗だ」と言ってね。




