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昔は多くを望まなかった。
だって、望まなくても、色んなものを買い与えてくれる両親がいたし、ずっと側にいてくれる優しい兄がいたから。
十分満たされていた。
それを自覚したのは、色んなものが側から離れ出したから。
それでも、私が悲しげな表情をしたり、泣きだしたら、兄は私をうんと甘やかしてくれた。
だから、ずっとそれが続いていって、ずっとそのままでいいんだって思いたかった。
けど、現実を突き付けられた。
ああ、諦めなければいけない。
何もせずとも手に入る夢はもう終わり。
現実の私は強欲みたい。
だって、あれもこれも手放したくない。
それをせずに済むのなら、今まで逃げてきた事にも向き合える。
だから、みんな、覚悟してね?
私は欲しいものでいっぱいに囲まれていたいんだから。




