119/131
119
しとしとと雨が降る中、傘もささずにいたら、あなたは私に傘を差しだしてきた。
私はそんなものは必要ないのよ。必要なのはあなたでしょう?
だって、平気そうな顔で微笑みかけてきているけど、濡れた肩が寒そうに震えているわ。
私はどれだけ濡れようと平気よ。
寒さなんて感じやしないわ。けど、あなたは私に触れると「冷たいね」と、言うの。
だったら触れないでと返したくなる。
俯くと、あなたは自分の傘に私を入れるの。
要らないと言っているのに、俯いた私が凍えているとでも思うみたい。
私のいる側と反対側の肩を濡らして凍えているのはあなたの方だというのに。
本当に嫌になる。
馬鹿みたいね、あなたも、私も。
あなたの傘を拒めずにいるのは、凍えているからじゃなく、あなたを突き離せないから。そんな私は馬鹿だわ。
そして、それに気付けないあなたも馬鹿だわ。