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神様って、きっと誰かに助けを差し伸べたり、試練を与えたりする存在じゃないじゃないかって思う。
ただ、そこに在るだけ。
誰もが侵害する事もできなければ、関与する事もできなくて、何者かに縛られる事もなく、それでいて、誰かが信じてくれないと存在すらできなくなる曖昧な存在なんじゃないかな。
人ならざるもの。
それはあやふやで、それでも確かに在ると認識しているもの。
不思議なもので、だからこそ、人間はそれを特別視して、縋るのかもしれない。
けど、助けを求めても助けてはくれないし、何者かを罰するよう告げても、罰を与えてはくれない。
動くのは人間。手を下すのは人間。
穢してはいけないと信じられているのは神。けど、穢された神はどうなるのかしら?
落ちて、墜ちて、堕ちて、一体何に成り下がるのかしら?
人はそうなっても信じるのでしょうね、自分の信仰対象を。