11/131
11
ショーウィンドウに飾られている真っ赤な靴に憧れた。
それはそれはとても美しくて、幼心にもいつかそれが似合う大人になりたいと願う程だった。
けれど、母は決して許してくれなかった。
綺麗だと言うのは許されたのに、自分が身に着けたいと言うと激怒された。
その理由が幼い頃の私には分からなかった。
けれど、年齢を重ねるにつれ、私が『普通』ではないと思い知っていった。
それでも、憧れは憧れだった。
あの真っ赤な靴が、たとえ真っ赤に熱せられた鉄の靴だろうと、履けば一生踊らされようとも構わなかった。
ただ、私はあれが似合うようになりたかった。