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淡い恋の物語  作者: お舐め
1/1

渋谷での出会い

慶次郎は駅の階段を下から上っていた。

すると階段の上の方から女の人が降りてきた。 見ると帽子かなんかを落として拾っているところだ。

登っている慶次郎がそれを拾って彼女に渡した。 彼女は丁寧に挨拶をしている。綺麗な人だ。歳は30から40代。見栄えする人だ。

見ると何か道に迷ってるようだ。ひたすら道案内を似ている。

「これはチャンスだ。」

と慶次郎は思った。

彼は彼女に近づいた。


「どこに行かれるんですか?」

すると彼女は手を振って

「私は耳が聞こえません」

というジェスチャーをした。

それで、彼女を駅員室に連れて行った。

「この人は耳が聞こえないんで、行先を教えてあげて下さい」

しかし、手話のできる職員は一人もいなかった。

そこで、駅にある手帖を持ち出して、

「ここに書いて下さい」と書いて見せた。

彼女は「真鶴」と書いた。

東海道線だ。

僕と一緒じゃん。


「一緒に行きましょう」とジェスチャーで示した。

僕は手話はできない。

電車は混んでなかった。二人で並んで座った。

色んなことを手帖とジェスチャーで話し

た。


慶次郎

「東京にお勤めですか?」

「そうです渋谷で働いてます」

「どんなお仕事ですか?」

「コンピューターデータ入力です」

慶次郎は彼女の顔を見つめて

「あ、僕も以前データ入力をやってました。プログラミングもしてましたよ」

「そうなのですか。 なかなか目が疲れる仕事ですね」

「僕は梅田慶次郎と申します」

彼はそう言いながらメモ帳に名前を書いた。

「梅田さんですね。よろしくお願いします。 私は田中真由美、と申します」

彼女も慶次郎の手帳に自分の名前を書いた。


真由美「梅田さんはどんなお仕事をされてますか?」

慶次郎「絵描きです。」

真由美は少し身を乗り出して

「それは興味ありますね。どんな絵を描いてますか?」

慶「主に女性の絵を描いてます」

彼は何となく得意気だ。

真「そうなんですか。 一度拝見したいですね」

彼は嬉しくなって

「あ是非、今度展覧会があるのでいらしてください」

真「嬉しいです。愉しみです」

「さあそろそろ降りなくっちゃ」

「梅田さんは小田原ですか?」

「ええ、近くですね。あ、あの、連絡先教えていただけますか?」

「はい、いいですよ。」

といってノートに記した。

「電子メール送ってもいいですか?」

と慶次郎は言った。

「どうぞよろしくお願いします」

慶次郎はことはあんまりうまく進みすぎるので半信半疑になった。

しかしメールは送ろうと決心して彼女と別れた。


彼は家に帰って母親と田中さんの話をした。

「すごく感じのいい人なんだ。 デートするかもしれない」

母親は顔をしかめた。

「でも耳が聞こえないんだったら何らかの支障があるかもしれないわよ」

慶「大丈夫だよ。 ダメだと思ったら別れればいいわけであって」

母「そんな簡単に行くかしら?」

慶「でも俺もう30だよ。そろそろ結婚しなきゃ」

母親はやはり心配顔だ。

慶「大丈夫だよ。 こんなのデートしてみなきゃわからないし」


慶次郎は自分の部屋に入ってパソコンにスイッチを入れた。そして早速メールソフトで田中真由美にメールを送った。

「今日は楽しかった。 近いうちにデートしましょう。4月20日に展覧会があるのでお越しになりませんか」という旨のメールだ。


しかしメールを送ってから2、3日経っても返事は来なかった。一週間たっても来ない。「これは脈がないな」

そう思って彼は諦めることにした。

ところが10日経ってやっと真由美の方から返信メールが届いた。

「梅田さん、お返事遅れて申し訳ないです。 あなたの展覧会行かせていただきたいと思うので待ち合わせしましょうか?よろしくお願いします」

慶次郎は承諾のメールを打った。

嬉しかった。

「デートだ!」

いや、まだデートとは言えない。でも、きっかけになる。

川崎に展覧会場があるんだ。

そこで待ち合わせした。

慶次郎は待ち遠しかった。

やがて、真由美が姿を現した。


真由美「お待たせしました」とジェスチャーと手話で話してきた。

慶次郎も会話帳を持参してきたので、積極的に話した。

「嬉しいですよ。僕の絵を見て下さい。」

「ええ」

彼の絵は人物画が多い。それは特徴ではないのだが、

その中に一つ二つ動物画がある。

一つは栗鼠、もう一つはレッサーパンダだ。

流石に真由美も目を止めた。

彼女は目を止めて驚いた。

「ええ?こんな鮮明な絵をお描きになるんですか?」

慶次郎は照れた。

「いやあ、好きなもんですから、ハッハッハ」

真由美は目を輝かせた。

「これ売って下さいませんか?」

「ええ?」

声にならない感激が彼女を纏う。

慶次郎は渋々手帳に書いた。

「これは非売品なんですよ。」

「でも、御商売なんでしょ?買わせてください。」

仕方ない。彼女が求めているのだから、お売りしよう、

と慶次郎は決めた。

「じゃあ、三千円ぐらいでどうですか?」

真「いいですよ。」

受付で梱包してもらって代金を真由美から受け取った。


慶次郎「本当に有難うございます」

真「こちらこそ素敵な絵、有難うございます。」

慶次郎は手話こそできないが、メッセージをやり取りできる喜びに浸った。

(つづく)




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