表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

巡り巡って結局はバナナ

「はあ……なんだってこんなことに……僕はバナナを食べてただけなのに……」

「そのバナナが巡り巡ってお前を今の状況に陥らせてるんだろうな」


 今、僕達二人は城下町を歩いていた。


「違うよ!あのつるっぱげ支部長さえ来なかったらあそこで気絶してたのはガンスだったのに……」

「もしそうなったら俺はお前を全力で打ち首にしてた可能性があるな」

「その前に貴様を抹殺してやるよ……」

「あ?国家反逆罪で引っ捕らえるぞ?」

「「…………!!」」←(ガンの飛ばし合い)


 と、僕がガンスといつも通り仲良くお喋りをしてると前から見覚えのある黒髪ポニーテール女子が話しかけてきた。


「ん?アルスとガンスじゃない。また喧嘩してるの?」

「いやリンネ、違うよ、僕らは楽しくガンスの暗殺についてお喋りしてただけさ」

「そうそう、アルスをどう処刑するかについて楽しく話してたんだ」

「「…………!!」」←(ガンのくれあい)


 僕らの楽しいお喋りを見てはぁ、とため息をついたのはリンネ。この城下町に住んでる宿屋の娘で、小さい頃はよく僕ら3人で遊んだりもしていた。


「それよりあんたたち、どうしてこんなところにいるの?城から出てくるなんて珍しいわね。特にアルス」

「まあこいつは外に出すとろくなことにならんからな」

「うるさいよガンス」


 ろくなこととはなんだ。ちょっとお茶目なことしちゃうだけなのに。


「今回は俺が監視してるからな。ひとまずは大丈夫だろ」

「王子が見張り役を監視って普通逆じゃないかしら」

「こいつの場合一人にさせると何盗むか分からんからな。めんどくさい部下だ」

「失礼な。別に僕だって盗みたくて盗んでるんじゃないやい」

「で、二人は今からどこに行くの?」

「ああ、ちょっと魔王退治に」

「それそんなちょっと散歩くらいのノリで言うことじゃなくない!?何があったの?」

「いや実は……」


 リンネにお城であったことを伝えた。


「はあ……なるほどねぇ……」

「どうしたの?そんな難しい顔して」


 リンネがうぅ~ん……とうなりながら何かブツブツと考えている。どうしたんだろう?


「決めたっ!」


 パッと顔を上げて何かを決心したような表情だった。


「え、何を?」

「私も旅についていく!」

「ええ!?本気で言ってる!?」

「だってあんたたちだけじゃ不安だし」

「失礼な!ポンコツ王子のこいつはともかく、僕の何が不安だというんだ!」

「おいおい、このアホ門番はいいが天才の俺を心配する要素がどこにある」


 ガスッガスッ ←(ローキックの応酬)


「そういうところよ」


 なるほど。僕らの見張り役は必要だ。このポンコツ野郎を存分に監視してもらわねば。


「このバカの見張りがいるのは分かった。よろしく頼む」

「でも危険だよ?モンスターもたくさん出るし、女の子にはやっぱりそんなことさせられないよ」

「問題ないわよ。これでもパパに格闘技教えてもらってたからね」

「でも……」

「おいアルス。お前忘れてないか?子供の頃にお前が何度ボコボコにされたことか」

「確かに……」

 

 因みにリンネのお父さんは元冒険者の武道家で、素手での戦いを得意としている。

 その影響か、僕が盗みをしちゃった後に顔の輪郭が変わるまでボコボコにされたのって1度や2度じゃなかった気がする。


「リンネってゴリラみたいな強さしてるもんね……」

「ぶち殺すわよ」


 リンネから殺気のようなものが溢れた。

 ハッキリ言おう。超怖い。


「リ、リンネならきっと大丈夫だね!お願いするよ!」

「任せなさい」


 リンネがドン、と自分の胸を叩く。胸が小さいのでドン、と音が鳴ってしまうのが悲しいところだ。


「……あんた、今失礼なこと考えてないでしょうね?」

「天地天命に誓ってリンネの胸が小さいなどとは考えてお尻から脚の指先にかけてまで激痛がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 気付いたときにはすでに間接技を極められていた。何この子超強いけど超怖い。


「全く……次私の胸が小さいって言ったら頭をリンゴみたいに潰してやるんだから。ふんっ!」


 心しておこう。頭をぐしゃっと潰されたくない。


「お前らイチイチャすんのは構わんがそろそろ行くぞ。リンネも早く準備してこい」

「イチイチャなんてしてないわよ!」

「いいから早く準備してこい」

「わ、分かったわよ……」


 リンネが家の方に戻っていった。

 ……それよりこいつは今のがイチイチャしてるように見えたんだろうか。僕には殺人鬼vs被害者の構図だとしか思えなかったんだが。


「それにしてもガンス、なんかリンネに冷たくない?」

「ん?お前にはそう見えたか?」

「まあそうだね」

「別に怒ってた訳じゃないがな」

「じゃあなんであんなにリンネを急かしてたの?」

「早く王都から出たいからだ」

「早く王都から……あぁ、なるほど。お姫様か」


 ガンスには結婚を約束されたお姫様がいる。美人で優しくて勉強もできる人なんだけど、何故かこいつはあの美人のお姫様を避けている。

 まあ僕が言いたいことはリア充爆発しろということだけだ。


「あいつには見付かりたくないからな。さっさと行くに限る」

「まあ、分かったよ」


 ガンスはお姫様の話をあまりしたがらない。なんでかは知らないけど一応ガンスの前ではお姫様のことはあまり話さないというのが暗黙の了解だ。


「アルス。リンネの旅支度が終わるまでまだ時間がかかるだろうから必要なものを買っておくぞ」

「うん、了解だよ」

「俺は食材を担当するからお前は必要な物資を整えておいてくれ」

「分かった、じゃあ20分後に集合で」

「おう」



  ☆


 20分後、さっきの場所に戻るとガンスが座って待っていた。


「お、来たか」

「うん、そっちもちゃんと買ってきてくれた?」

「当たり前だろ。ほら、お前の分の食料だ」


 ドサッ


 こんにゃく ←カロリー0

 ところてん ←カロリー0

 パセリ   ←カロリー0


「僕の大事なカロリー源がぁぁぁぁぁぁ!!」

「勘違いするな、それだけなわけがないだろう?ちゃんと用意してある」

「な、なんだビックリした、それだけじゃすぐに痩せ死んじゃうもんね」

「ああ、そうだろ?ほら、これだ」


 トスッ


 割り箸 ←カロリー0!


「これ使ってちゃんと食えよ」

「何も解決してないんだが!?」

「いや、割り箸が無いと手で食うことになるだろ?それじゃあ可哀想だと思ってな」

「いやもうちょっと他のところを気遣おうよ!?」


 なんてこった。これじゃあ僕の旅は魔王よりも先にカロリー0食品に殺されることになる。


「それよりもそっちはちゃんと買ってきたのか?」

「それよりもじゃないけど……。うん、まあちゃんと買ってきたよ」

「それならいい。丁度リンネも支度が終わったみたいだな」

「あ、ほんとだ」


 ガンスの見た方を見ると、走ってきてるリンネが見えた。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ