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バナナって美味しいよね

 ここはアルガン王国中央都市アルガン、更にそのど真ん中にあるアルガン城。


 そんな城のとある日常のこと。


「くぁあ……王城の警備はいつやっても暇だなぁ」


 僕は王城の警備として王の間の前でバナナを食べながらぼーっとつったっていた。


「よおアルス。……お前仕事中になんでバナナ食ってるんだ?」

「あ、ガンス。いや暇でお腹空いたなと思って。それより王様に何か用?」


 このそこそこ身長の高い細マッチョは王子のガンスだ。


「いや駄目だからなそれ。それにしてもお前、一応俺は王子なんだから敬語くらい使ったらどうだ?」

「あはは、幼馴染みでずっとつるんでるくせに今さら何言ってるのやら」

「いや、普通は幼馴染みだとしても王子には敬語は使うだろ……」


 ガンスが呆れた顔でそういう。

 失礼な。それじゃまるで僕が常識をわきまえてない人間みたいじゃないか。


「まあお前の場合親父にも失礼な態度取るから今さら何を言ったところで変わらんだろうがな」

「そんなことないよ!敬語はちゃんと使ってるさ!」

「ノリが一国の王に対するものじゃないって言ってるんだよ」

「そんなこと言ったらガンスもでしょ?」

「俺は息子だからいんだよ。取り合えず入るぜ、またな」

「うん、また後で」


 扉を閉める。

 これもまた日常。毎日毎日こんなことを繰り返してる平凡な日々。


「だからこそ暇なんだよね。まあ平和なのはいいことなんだけどさ」


 取り合えず食べ終わったバナナの皮を門の前にセットしておく。ガンスが滑ってこけるのを期待。

 そしてまたつったっていて五分後くらいのこと。


「た、大変だ!王室に入れてくれ!」


 中年くらいのハゲ親父が走ってきた。誰だろう?なんか見たことあるような……。


「どうしましたか?そんなに息を切らして」

「勇者がやられた!このままじゃ魔王を倒す者がいなくなってしまう!」

「ええ!?そりゃ大変だ!」

「ああ、だから通してくれ!」

「いえ、それはできません、何故なら通っていいのは警備である僕が知っている人でないと入れることができないからです」

「貴様、この王室第一研究支部長の顔を知らないのか!?」


 あ、どっかで見たことあると思ったら研究部門のトップだった。ハゲくらいしか覚えてなかったから分からなかった。


「こ、これは失礼しました!どうぞお通りください!」

「ふん、言われずとも!」

 

 そして研究支部長は門の中に入ろうとした。

 あ、やべ。バナナセットしたままだ。


 ツルッ ゴン!


「………」

「やっべー……」


 研究支部長は気を失っていた。これじゃ王様に勇者が倒れたことを伝えられない。


「仕方無い、僕が伝えよう」


 そして門を開けた。


「王様!勇者が倒れたとのことです!」


 僕が放った言葉に王様は一瞬面を食らったようで、ガンスと顔を見合わせていた。


「「いやなんで門番のお前が伝えに来るんだ?」」


 親子でハモられた。


「今はそんなことはどうでもいいでしょう!緊急事態なんだから!」

「まあ確かにそうだな」


 王様がモジャモジャの髭を触りながら話しかけてくる。


「ふむ……全滅か?」

「はい」

「そうか……全滅か……」

「はい……全滅です……」

「それなら仕方無いな」

「はい?」


 何が仕方無いんだろう。まさか魔王討伐を諦めるつもりだろうか。


「お前が勇者をやれ」

「え?はい?ええええええええ!?」

「どうした、不服か?」


 不服しかない。


「そもそもどうして僕なんですか!強くないですし他にももっと適任はいます!」

「ふむ、それならばこの第二王子、ガンスを共に行かせよう。それなら構わないか?」

「いや、旅につけてくれるならもっと可愛い女の子がいいです!こんなむさ苦しい男と二人で旅なんで嫌ですよ!」

「お前失礼すぎないか?」


 ガンスが何か言っているが構わない。僕は憤ってるんだ。


「我が儘を言うんじゃない。王の名の元にガンスと共に魔王退治に行くことを命ずる。いいな?」

「うぅ……分かりました。最後に一つ質問しても?」

「構わん」

「ありがとうございます。じゃあ……どうして僕を選んだんですか?」


 これは大切なことだ。もし王様が僕のことを見込んで選んだのだとすれば魔王退治を成し遂げればきっと大躍進に違いない。これは僕の将来のためにも必要な質問なのだ。


「勇者がいなければ代わりの者に行かせなければ民が不安になるだろう。王国としても代理を出さねばなるまい。そこで我が忠実であり、更に優秀、逞しくも強い臣下であるアルスを選んだのだ」

「ほう……なるほど、それなら僕を選んだのは間違いじゃありませんでしたね。この忠実優秀、逞しくも強くてイケメンなこの僕が魔王退治に向かえば王国は安心安全間違いなしです!」


 いやぁ、流石一国の王様だね。見る目は確かだったようだ。


「親父、本音は?」

「一時的に代理を出せれば誰でもよかった」

「………」


 王様じゃなかったら殴り飛ばしてるところだ。

 

「さあ行け、新たなる勇者よ!魔王を倒して世界に平和をもたらすのだ!」

「無理矢理話変えやがった!」

「ほら、行くぞアルス」

「うぅ……嫌だよぉ……」


 こうして僕らは王の間を後にした。


「おい、誰か倒れてるぞ」

「なんだって!?……あ、支部長のこと忘れてた」


 そこから門の前で気を失っている支部長を見て王城内に敵が侵入していると大騒ぎになっている皆の誤解を解くのと謝罪に5時間かかった。

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