ハープ・セレネイド
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ハープ・セレネイド
作:狩屋ユツキ
<アメリア♀>
森の中に住む魔女。賢女とも呼ばれる。
穏やかで丁寧だが人間離れした感性も持っている。
<ジョシュア♂>
アメリアの助手を務める骸骨。
基本的に陽気で家事全般が得意。
<ファミル♀>
歌をゴブリンに取り上げられた女性。
生業は吟遊詩人。
(途中できらきら星を歌います)
<ゴブリン>
ファミルと兼役。
ファミルの声で喋る。
見た目は奇妙な小人。
20分程度
男:女
1:2
アメリア♀:
ジョシュア♂:
ファミル・ゴブリン♀:
------------------
アメリアN「ここはとある森の中にある一軒家。住んでいるのは二人だけ。小さな家だけれど、その扉を叩くものはそう少なくない。今日は迷い人が一人、この扉を叩いているようです……」
間
(扉をノックする音)
ファミル「すみません、何方かいらっしゃいませんかー!」
ジョシュア「はいはーい、今出るよー」
アメリア「あ、ジョシュア、貴方は出ないほうが……」
ファミル「ああ良かった……って、きゃああああ!!!!ががが骸骨!!!」
ジョシュア「あ、しまった。フードを忘れてた」
アメリア「ああ、ほら言わんこっちゃない……」
間
ファミル「びっくりしました……」
アメリア「落ち着いた?」
ファミル「はい……お茶もお菓子も美味しいですし」
ジョシュア「今日のお菓子はバナナマフィン!紅茶はカモミールティにしてみたよ。あんまり慌ててその場で倒れそうだったから落ち着くお茶が良いと思って」
ファミル「あ、はは……だって、その、骸骨さん……が喋って扉を開けてくれたものですから……腰が抜けるかと思いました」
ジョシュア「骸骨さんじゃなくて僕はジョシュア!はい、リピートアフターミー」
ファミル「じょ、ジョシュアさん?」
ジョシュア「オッケー!!」
アメリア「それで?ファミルさん……でしたっけ。道に迷ったということだけれど、何処に行く予定だったのかしら」
ファミル「あ、医者の街メイディアに……その、薬を求めて」
アメリア「薬?何処かお悪いのかしら?とてもそうは見えないのだけど」
ファミル「いえその、悪い、というか……」
ジョシュア「バナナマフィン三つも食べたしね」
ファミル「それは此処に着くまでに食料が尽きてしまったので……路銀を稼ぐことも今はできませんし……石壁の国から歩いて来たんですけれど、元々が方向音痴なんです、私」
ジョシュア「バナナマフィンはまだあるからいっぱい食べて大丈夫だよ!」
アメリア「ジョシュア、ちょっと静かに。……石壁の国から歩いてきたと言っていたけれど、路銀を稼ぐことが出来ないってどういうことかしら。しかも“今は”って」
ファミル「はい、実は……って、行きがかりの人にお話することじゃないような気が……」
アメリア「ああ、それなら心配しないで。私は森の魔女。医者の国メイディアに薬を売りに行く、いわば薬売りの一人だから。もし役に立つ薬があるならこの場で売ってあげられるわ」
ファミル「そ、そうだったんですか。医者の国メイディアにはよく効く煎じ薬を売る魔女がいるとお伺いして此処まで来たのですが、貴女がその魔女だったのですね!!」
ジョシュア「アメリアの薬はメイディアでも評判の薬だからねえ。即効性で効果抜群!自然物で作っているから体にも優しいし、副作用も穏やか。まさにいい事ずくめ!!」
アメリア「はいはい、売り込み文句はその辺にして。で、ファミルさん、一体どういうお薬をお求めだったのかしら。貴方さえよかったら、身体を診させてもらってそれにあった薬も作ることが出来るけれど」
ファミル「本当ですか!!」
ジョシュア「うわ、いきなり立ち上がっちゃ駄目だよ!!お茶がこぼれた!!」
ファミル「あ、すみません……」
アメリア「よっぽど深刻な症状のようね。詳しく話を聞かせてくれるかしら」
間
ファミル「一ヶ月ほど前のことです。私は吟遊詩人なのですが、とある街道で歌を歌っているときに不思議な生き物に出会いました。生き物と言っても、人の形をしていて……小人、というのでしょうか。小さな人でした。それが言うのです。『お前の声は美しいな。俺は歌が大好きなんだ。歌え、歌え、もっと歌え。そうしたらお前に望むだけの宝石をやろう』って。最初は何を言っているのか意味がわかりませんでした。でも、言葉通りに歌い続けていたら、その小人は大量の宝石が詰まった袋を私に渡して続けてこう言ったのです。『やあ本当に美しい歌だ。俺は十分に満足した。だからお前の歌声を買い上げよう』」
ジョシュア「ふむ。その小人は多分ゴブリンと呼ばれる種類の小人だね。ゴブリンは人に害をなすことが多いけれど、同時にちゃんと筋は通す生き物だから」
ファミル「はい……。そのゴブリンは宝石の詰まった袋の代わりに私の歌声を奪っていってしまったのです。気付いたのは次の日、いつものように歌おうとしたとき……。いつもは浮かんでくる歌詞も旋律も全く出てこなくなって、やれることと言ったらこの竪琴を弾くことだけ……」
アメリア「竪琴を持っているから吟遊詩人なのだろうとは思っていたけれど、そんなことがあったのね。で、その歌声を持っていったゴブリンは見つからなかったのかしら」
ファミル「生憎全く情報がなくて……赤い帽子を被って茶色いチョッキを着ていました。でもそんなゴブリンの姿は見たこともないと石壁の国の何処で聞いても言われるばかり……そうこうしているうちに魔女の噂を聞き、藁にもすがる思いで医者の国メイディアを目指そうと思ったのですが……」
ジョシュア「メイディアまでは遠いし、行き道に街も少ないしねえ。石壁の国からここまでは民家も少ないし」
ファミル「そうして二日ほど何も食べずに迷っていたところをこのお家を見つけたので……」
ジョシュア「とりあえずなにか食べ物を恵んでもらおうと思って扉を叩いたわけか」
ファミル「はい……お恥ずかしながら。で、……私の歌声を治す薬はあるのでしょうか?」
アメリア「ゴブリンが奪った歌声はゴブリンから取り戻すしか無いわ。残念だけど薬ではどうにもならないことね」
ファミル「そんなぁ……」
アメリア「でも、赤い帽子に茶色のチョッキ。その情報があれば彼を見つけ出せるかもしれなくてよ。ジョシュア、私の部屋から水晶玉を持ってきて頂戴な」
ジョシュア「はーい」
ファミル「あの……見つけて、どうするんですか?」
アメリア「勿論、貴方の歌声を取り戻すのよ。宝石は全部使ってしまった?」
ファミル「えっと……結構貰ったのでまだほとんど残っています」
ジョシュア「アメリアー。持ってきたよー!」
アメリア「ありがとうジョシュア。テーブルに置いて頂戴。……全部使っていないのは幸いだったわ。全部使っていたら歌声と引き換えにした契約が結ばれてしまっていたところだったから」
ファミル「ふぇっ?!か、勝手に押し付けられて勝手に持ち去られたのにですか?!」
アメリア「魔法とはそういうものなのよ。特にゴブリンたちの使う魔法は“奪う魔法”だから相手の意志を確認せずに行うことが出来るの。……さてと、赤い帽子に茶色いチョッキを着たそのゴブリンの姿を思い描いて。できるだけ鮮明に」
ファミル「は、はい……」
ジョシュア「お茶のおかわりをその間に入れておくね。上手く見つかると良いんだけど」
アメリア「……ほうら、水晶玉に彼の姿が映ったわ。貴方から奪った歌声で楽しく暮らしているようね」
ジョシュア「本当だ。うん、歌いながら踊ってるねえ……実に楽しそうだ」
ファミル「この歌声……間違いない、私の声です!!このゴブリンで間違いありません!!」
アメリア「では、このゴブリンから歌声を取り戻しましょう」
ファミル「ど、どうやって……?」
アメリア「奪う魔法には奪う魔法を。外に行きましょうか、魔女の魔法を見せてあげるわ」
間
アメリア「じゃ、魔法陣を描くから、ちょっと離れて見ていて頂戴」
ファミル「はい……」
ジョシュア「大丈夫だよ、アメリアの魔法は凄いんだから!きっと君の歌声を取り戻してくれるよ」
ファミル「……」
アメリア「(地面に魔法陣を描きながら)北にエメラルド、南にルビー、東にサファイア、西にダイアモンド。円を描くは我が鳥の杖にて召喚の術と線を繋ぐ。望みの者を此処へ引き寄せよ。風の精霊シルフィードよ、目に見えぬ鳥の翼にてその者をこの場に。我が命じる、いでよ、歌唄いを骸に変えしゴブリン!」
ファミル「あ、あのときのゴブリン!!」
ジョシュア「間違いないね?」
ファミル「間違いありません!!」
ジョシュア「それはよかった」
ゴブリン「私をこんなところに呼んでどういうつもりですかな、森の魔女」
アメリア「その声をファミルさんから奪ったでしょう。宝石は返すから、その声をファミルさんにお返しなさい」
ゴブリン「そうは仰られても、私はこの声が気に入ったのです。元のガラガラ声に戻るのは嫌です。それにその娘は宝石を貰ったときに引き換えてもいいと言ったんですよ」
ジョシュア「え?」
アメリア「どういうことかしら」
ゴブリン「歌の中にあったのです。宝石と引き換えにならぬ歌声など何の価値もないと。だから私は宝石と引き換えにこの声を貰ったのです。どうですか、筋は通っているでしょう」
ジョシュア「それなら確かに……ちょっと強引ではあるけれど……」
ファミル「あれは……!!……その、歌声を誰も聞いてくれなくて、くさくさしていたときだったから……」
アメリア「事実なのね?」
ゴブリン「私はこの声が気に入ったのです。だから返す気はありません。諦めてください」
アメリア「でもファミルさんは後悔しているわ。ゴブリン、契約は破棄よ。その魔法陣から元の場所に帰りたければ、私の言うことに従いなさい」
ゴブリン「はあ……仕方ないですねえ……。わかりました、返します。でも宝石と引き換えですよ」
ジョシュア「宝石なら此処にあるよ。ほら、減った分もちゃんと補填してあるから確認してご覧」
ゴブリン「確かに。……では、お返しいたしましょう」
間
アメリア「ファミルさん、もう歌えるかしら」
ファミル「あ、あーあーあー……きーらーきーらーひーかーるー……はい、歌えます。……けど……」
ジョシュア「けど?」
ファミル「……私の歌声を誰も聞いてくれないのも事実なんです。聞いてくれたのはあのゴブリンだけ……。私は吟遊詩人なのに誰の心にも響かない歌しか歌えない……」
アメリア「そうねえ……人の心に響く歌は、今の貴女には無理なのかもしれないわね」
ファミル「!!」
ジョシュア「アメリア、そんなはっきり」
アメリア「取り繕ったって一緒でしょう。今の貴女の歌は、ただの人間には響かない。だけれどね?貴女の歌声は人以外を惑わす魔力が宿っているわ」
ファミル「え?」
アメリア「おかしいと思ったのよ。ゴブリンが入れ込むにしても強引に奪いたくなるほどの歌声が人を惹きつけないなんて。さっききらきら星を歌ってくれたでしょう。それで確信したわ。貴女の声には魔力が宿っている。上手く使えば、貴女は魔法使いになれるかも」
ファミル「え、ええええ?!私が魔法使いですか?!」
ジョシュア「しつもーん!魔女と魔法使いって何が違うんですかー!!」
アメリア「魔女は薬や魔術で人を癒やし、傷つけもする。対して魔法使いは己に宿る魔力だけで精霊や魔物を味方につけて使役する。そういう違いがあるわ」
ジョシュア「なるほどー」
ファミル「私が……魔法使い……」
アメリア「どうかしら。この先に森林の国という国があるのだけど、そこのエルフたちに混じって暮らすというのは。彼らは魔力を操り、それによって生活を行っているわ。貴女の歌声はそこでなら活かせると思うの」
ファミル「……」
ジョシュア「森林の国は良いところだよ。緑豊かで空気も美味しいし……まあ、あんまり食事にお肉は出てこないけど」
ファミル「……私、行ってみます」
アメリア「そう」
ファミル「でも、そこに生涯留まるつもりはありません。魔力の使い方を覚えたら、今度は世界中の人や精霊や、魔物や、何もかもを魅了する吟遊詩人になってみせます!!」
ジョシュア「これはまた、大きく出たねえ……」
アメリア「ふふ、そのくらいの気概があれば大丈夫でしょう。森林の国は少し遠いけれど、迷わずに行けるように魔法の地図を書いてあげる」
ファミル「な、何から何まですみません……あの、お代は……」
アメリア「いらないわ。……と、いつもなら言うところなんだけど」
ジョシュア「せっかくだし、ねえ」
ファミル「?」
アメリア「さっきのきらきら星、竪琴付きで全部聞きたいわ。良いかしら」
ファミル「!!お安い御用です!!」
間
ファミル「キラキラ光る お空の星よ 瞬きしては 皆を見てる キラキラ光る お空の星よ(次のアメリアのナレーションにかぶせて歌ってください)」
アメリアN「(きらきら星にかぶせて)その日は美しい歌声に惹かれてやってきた森の動物達とお茶会を楽しみました。ゴブリンには少し悪いことをしたけれど、この声はゴブリン一人が持っていくには惜しいものだったの。ジョシュアは無い耳を傾けて身体でリズムを取っていたし、私は目を閉じてもうすぐ訪れる夜の帳に思いを馳せた。今日の星はきっといつもより輝いて見えるでしょう」
ファミル「あ、今日一日は泊めてくださいね?私、夜道を歩くのは怖いので!」
ジョシュア「これだけ図太ければなんにも怖いことなさそうだけどね」
アメリア「どうせ地図を引くのに夜通しかかるわ。今日のディナーは何かしら、ジョシュア」
ジョシュア「今日は僕特製!アメリアの大好きなビーフシチューにガーリックバターのバケット、それにレタスとトマトのサラダ付き!」
アメリアN「美味しいディナーの後にもう一回あの曲を歌ってもらったら、きっと素敵な眠りにつけることでしょう。貴方ももし、寝付けない日があったら夜に耳を澄ませてみてくださいね。もしかしたら、魔力の歌声が貴方のもとに、月と星の力を借りて届くかもしれませんから……」
了
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