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記憶に咲いた一輪  作者: たわとと
9/11

にっき

「えっ…ダメだよ翠さん、危ないよ!?」

「そうです、何があるのか分からないんですから、1人はダメです」

「……」


凛斗と瑠宇は必死に俺を説得するが、彼らにこんなところを見せる訳にはいかない。


「大丈夫だよ、屋根裏部屋だしすぐ終わるから」


マスクを外して微笑みかける。


この階は他の場所と比べて埃があまり舞っていない。


ネズミの死骸や骨、乾いた血溜まりが残っていても異臭のようなものはしなかった。


「あーもー……気をつけてね翠さん!!」


どうやら諦めた様子の瑠宇は、最後に俺にそう声をかけて、パタリと静かになった。


いや、正確には凛斗たちと小声で話をし始めたんだけども。



▽▽▽▽▽



「うーん…」


ぽりぽりと頭を掻く。

手を伸ばせば届くほど低い位置にある天井、屋根裏部屋にしては簡潔極まりないほど何も無いまっさらな空間。

どこを探したって何かが出てくることは無いと思う。


空き巣が入ったのではないかと思うほど何も無い部屋を調べ終えて、ふぅ…と一息ついて、ラスボスの元へ歩みを進める。


ラスボスというのは、部屋の中心にある血溜まりのことだ。


「……ん?」


死骸のすぐ近くまで来た時、ふと視界に入った白い紙切れに興味を奪われた。


「もしかして…」


紙を取ろうとして、少し躊躇(ためら)う。小動物の死骸の下に敷いてあるように紙切れが落ちているので、取り出すのに少し勇気が要る。


「…どうにでもなれ…!」


触った瞬間サラサラと粉状に崩れた死骸に、ひっ…と小さな悲鳴が漏れた。

恐る恐る紙を引いて手に取ると、紙に付着した汚れを払い落とした。

紙には血がついておらず、この血溜まりが乾いた後に置かれたものなのだろうか。


でも何故?


そんな考えを振り払って、紙に書かれた文字に目を通す。


『おなかすいたなぁ ままおきないかなぁ ねぼうかな?』


黒のクレヨンで小さな紙に、一生懸命書かれていたその一行。


当時のその子供の気持ちを想像すると、胸が張り裂けそうになる。

もう二度と目覚めることのない両親の起床を待ちに待って、お腹が空いても何も食べられなくて。


悲しすぎるだろ。


「……早く、みんなのとこに戻ろう…」


ポケットの中に見つけた()()()をしまうと、瑠宇たちが待っている2階を目指して、振り返ることなく屋根裏部屋を後にした。



今日は早めの更新です!

屋敷に住んでいた子供は、一体どうなったんでしょうね…?

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