見つけたもの
「見つからないね…」
あれからもう一回2階の部屋全てを回ってたからのちずを探したのだが、どこにもそれらしき紙は見つからなかった。
階段付近の床で円になって座って、今は作戦会議を行っている。
「翠さん、ぶっちゃけ三階の地図なくても探索は出来るぞ」
「うん、そうなんだけど…なんか気になるじゃん?」
生憎、俺は一度気になるものが出来たら最後まで調べ通し、諦めろと言われても諦められないタイプの人間なので、今回もこれは譲れそうにない。
「じゃあ、もっかいさっきの地図確認してみよ。もしかしたら見逃しがあるかもよっ?」
瑠宇はそう言って、俺のポケットからたからのちずを出すように促した。
「見逃しって言ってもなぁ…」
フリースジャケットのポケットから紙を取り出すと、表面に書いてある地図と文字、そして裏面に書いてある字やシミまでを念入りにチェックする。
「……ダメだ、よく分かんない」
膝に肘をついて眉をひそめる。
もしかして、前にここを訪れた人物が持ち去ってしまったのだろうか。
「翠さんて、案外好奇心旺盛なんスね」
「そう見える?」
「見えます。危なっかしい」
柘榴は見た目に反してちょっぴり怖がりなところがあるようで、さっきも少し物音がしただけでもものすごい顔で構えのポーズをとっていて思わず和んでしまった。世間はこれをギャップ萌えというのだろう。
「でも、見つからないんじゃ探索は埒が明かないし、無いものを探しているなら尚更だよね」
そう言って立ち上がろうとした時、フラッとよろめいて一歩後ずさってしまった。
立ちくらみだろうか。
「…っ…」
いいや、違う。
激しい頭痛と共に襲ってきた耳鳴りは、しだいにザザ…と不快なノイズ音と、うめき声のような音声に変化していった。
「翠さん…?」
3人が心配してこちらを見上げてくる。
彼らにこのことを言ってしまえば、不安に駆られてしまうことだろう。
なんでもないよ、と声を出そうとした時、ノイズ音やうめき声が一瞬だけ晴れて、
『床の下』
と、誰かの声が聞こえた。
「えっ?」
思わず廊下の奥を見つめる。
今確かに誰かが床の下、と言った。
はっきりと、そう聞こえた。
耳鳴りは止み、不快な声や音も聞こえなくなった。だけど、今度は胸の中をなんとも言えない悲しい気持ちが蝕んでいく。
これは、孤独であることの寂しさだろうか。
誰かに見て欲しいと主張しても、誰もこちらを見てくれない、もどかしさだろうか。
「翠さん!」
「っ…あ…」
瑠宇に袖を握られ、我に返った。
あれは一体なんだったのだろうか。
「……ねぇ…今、声聞こえなかった?」
「こ…声、ですか…?」
俺の問いに、凛斗は眉を下げて困ったような表情を浮かべる。
「あ、いや、ごめん。やっぱ気にしないで」
「翠さん…もしかしてなんか聞いたの…?」
「ううん、多分気の所為だから。あはは…」
誤魔化しはしたものの、彼らは意味ありげに視線を交わしあうと、何かを察したようにもう一度こちらを見上げる。
「翠さんてさ…霊感あるタイプ?」
聞かれると思った。
どう答えようかと考えたが、やはり正直に言った方がいいだろう。
「いやぁ…友達が霊感強かったんだけど、一緒にいるうちにうつった…かな。でも見えたりはしないんだよね」
聞こえる程度で、それも極たまに。
凛斗が「なるほど…」と顎に指を添えて考え込む。
「僕達は声らしき声は聞き取れませんでした。翠さん、その声はどんなものでしたか?」
「えっと…どんなって…」
高いようで低く、幼いようで大人びた声。
目に見えない相手からの声は、聞き取るよりも感じ取るようなものなので、声自体はよく分からず首をひねった。
「声はどんな感じか曖昧だけど、言葉ははっきり聞こえたよ」
興味深そうに息を飲んだ凛斗。
「床の下、って言ってたよ」
▽▽▽▽▽
中心の部屋に再び戻ると、今度は床を徹底的に調べて、たからのちずを探す。
三度目の正直だ。今度こそ見つかってくれ。
謎の声に従って床の隙間や、床下になにか挟まっていないか確かめる。
すると、あっ、と声を上げた柘榴がちょいちょい、と手招きをした。
「この床外れるぞ」
「でかした!」
ギシ…と音を立てて外れた床板。その下には薄汚れた一枚の紙が隠されていた。
その紙こそ、俺たちが探していた三階のたからのちずである。
手にグローブをはめて、その紙を拾うと、黒いクレヨンで書かれた文字が目に入ってきた。
そして、三階の地図は…
「…赤いクレヨンも使われてる…あ、それじゃ読むね」
パサ、と紙を広げる。
『たからものはね さんかいにあるよ』
『ぼくがいちばん だいじにしてるものなんだ』
『それとね ままとぱぱがね』
『まっかなんだ』
背筋を嫌な汗が伝う感覚。
だんだんと嫌な音を立てる心臓。
「…真っ赤って…」
…まさか…。
はい!!地図探し編は完結しました!!
ジワジワと翠たちに迫っていく恐怖ですが、どうなるんでしょうね。
イラストを描きながら毎日投稿って難しいですね…一日よ、伸びろ。
という訳で、また次回お会い致しましょう!
おやすみなさいっ
追記:サブタイ変更し忘れてました…w