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記憶に咲いた一輪  作者: たわとと
3/11

たからのちず

色々ありつつ、屋敷内に入ってもうひとつの扉を開けた俺たちは、その空間に広がるあまりの異様な匂いに思わず後ずさり、顔をしかめた。

そして、それと同時にぶわっと舞い上がった埃が鼻を刺激して、くしゃみや咳が俺たちを襲撃する。


「はっ…くしゅっ…やっばい…」


噛み殺すようなくしゃみをした瑠宇と、腕で口元を覆いながらゲホゲホと咳をこぼす凛斗。特に気にする様子もなくリュックサックから懐中電灯を取り出して、辺りを照らす柘榴。


微かに眉をひそめて、自分もリュックサックから懐中電灯を取り出すと、カチッと電源を付ける。


「あー、もう無理…」


俺たちと同様に床にリュックサックを下ろして、ガサゴソと中を漁りながら呟いた瑠宇は、パッとリュックの中から出てきた箱を掲げた。


「箱買いして正解だった」


はいっ、と一人一人に手渡したのは、箱の中から取り出した未使用のマスク。


「さすがだな」


柘榴はマスクを付けながら微笑みを零すと、瑠宇は「当たり前じゃん」と満足気に笑った。可愛い。


俺も彼から貰ったマスクをつけると、懐中電灯を右手に持ち直して探索を開始したのであった。



▽△▽△▽



「にしても、ドアインドアだったなぁ」


玄関扉を開けた先には小さな空間があって、その空間の奥には、玄関扉より一回り小さな扉があったのだ。その時点では外からの光を頼りに進んでいてちゃんとした扉の色は見えなかったが、恐らく茶色…か、赤色だろう。


そうして扉の奥に進んだ俺たちは、迷路のようになっている屋敷の中を探索していた。


一階のこの場所では、赤い絨毯が余すところなく敷かれていて、小さなホテルのようなイメージが浮かんだ。


真っ直ぐに伸びた廊下の両側には部屋があり、右側に3つ、左側に3つと計6つの部屋が、あわせ鏡のように全く同じ位置、デザインで並んでいる。


だが、部屋の扉はというと、ノブが壊れて回らなかったり、錆びたりして入れない部屋が多かった。


唯一入れた部屋は殺風景過ぎるくらい何も無く、強いて言うなら埃が他の場所よりも厚めに溜まっていたことくらいだろうか。


廊下の先を行くと曲がり角があり、その曲がり角を進んで行くとキッチンのような場所が現れた。キッチンの床は白い大理石の床材が使われているようだが、何十年も放置されてるのだ。流石に床にもいくつかヒビが入っていた。


「このキッチン広いね」

「ねー!ここで料理したら楽しいだろうなぁ〜」


そんなふうにルンルンとした声色で言われたら、思わずからかってしまいたくなる。

マスクをしていて口元は見えないのを利用して、ニヤリと笑った俺は、


「…試してみたら?」


と、言ってみた。


「……遠慮しときます」


少し考えた瑠宇は、キッチンの棚に並んでいる缶詰を手に取りながらそう答えた。即答しないんだね。


「おや、翠さん。なんだか面白そうなものを見つけましたよ」


彼が近づいて見せてきたのは、子供のおもちゃで、かなり古びた車のプラモデルだ。

凛斗が見つけたこのおもちゃのおかげで、サイトの記事に書かれていた()()()()()の存在が確かになった。


でも、少し…いや、かなり気味が悪いので「元あった場所にしまっておこうか」と、ひょっこりと顔を出してきた恐怖を悟られぬように、彼に元の場所に戻すよう促したのだった。



一通りキッチンは調べたが、それ以上は特にこれといっためぼしいものは見つからず、キッチンを出て廊下の更に奥を目指すことにした。


奥の方は長方形の大きなテーブルと、10個ほどあるアンティーク調の椅子が綺麗にテーブルを囲って置いてある食堂のような部屋…と、小さく開かれたままの赤い扉を見つけた。


「本当に広いですね」


マスクを外した凛斗は、ふぅ…と息を吐いた。確かにマスクつけっぱじゃ息が苦しいよね。


自分もマスクを外して軽く息を吸うと、埃と異臭と変な匂いとが一気に肺に入ってきてしまい、むせ返った。



▽△▽△▽



そんなこんなで一階の探索をし終えた俺たちは、元来た道を戻り、途中で見つけた階段を上ろうとした。その瞬間、キーン…と耳鳴りがして、階段の横に手を置いた。


途端、ガタッと何か変な音がして、はっと手元を見る。

そして階段横の壁をよく見ると、壁…というより、壁紙に切れ目が入っていた。


「…これ…もしかして…」


壁紙の切れ目から指を入れ、ビリッとそれを剥がすと、出てきたのはまたもや扉。


「うっそ…隠し扉…?」


息を呑んだ瑠宇たちは、じり…と1歩後ずさった。


「これね…多分見つけたの俺たちが初めてだよ」


壁紙を剥がしながら呟き、ちらりと後ろを見ると、信じられないといった様子で3人はまだ固まっていた。



「これくらいでいいかな…」


扉全体が見えるようになって作業を止めると、ようやく我に返った凛斗と柘榴が俺の肩を同時に掴んだ。


へっ?と間抜けな声を漏らした自分だったが、彼らの真剣な眼差しに固唾を飲んだ。


「えっと…?」


恐る恐る見上げると、2人はどうしてわかったのか、と質問をしてきた。


「あー…や、友人にあちこちの心霊スポットとか、洞窟とか、変な場所に連れ回されて…仕掛けとかにも慣れちゃった…みたいな?」


あはは、と苦笑いを零しながら俯く。決して嘘は言っていないのに、何故こんなにも冷や汗をかいてしまうのだろう。あぁ、分かった。肩を掴む2人の顔が恐ろしく怖いからだ。


「是非あなたみたいな人をオカルト研究会に迎え入れたいのですが…」

「ううん…もう学生じゃないからなぁ…」


ぽりぽりと頭の後ろを掻きながら「でも元会員だよ」と言ったらさらに食いついてくる。


「ねーぇ…」と柘榴たちの後ろから弱々しく聞こえた瑠宇の声に、2人は振り返った。ついでに俺も、二人の間から顔を覗かせて彼を見る。


「翠さん困ってるからもうやめなよ…あと早く進も…」

「あ…」


声を漏らしたあと、やっと正気に戻った柘榴と凛斗は俺の肩に置いてある手を退けると、ぺこりと頭を下げてきた。へにゃりと笑って「大丈夫だよ」と言ったら、2人は安心したように目を細めた。



「うっわ」


壁紙の向こうに隠されていた扉をなんとかこじ開けて、中に入った。

赤色の絨毯はところどころ黒いシミができていて、更にこの部屋は妙に鉄臭いし生臭い。


そして、小さなその部屋の中はというと、シングルベッドの横に勉強机、机の左横には小さめの本棚が置いてあった。


本棚の中は本が数冊入っているが、蜘蛛の巣だらけで表紙は汚れ、さらに手に取ってページを開くと、紙魚が数匹這い出てきて思わず本を床に落としてしまった。


「翠さんどうした?」

「ううん、虫がいたから驚いただけだよ」


本を拾ってもう一度ページを開くと、今度は紙魚ではなくページの破けた部分や、穴が空いて傷んでいる部分が目に入った。


ボロボロな本に一通り目を通すと、そっとまたそれを本棚に戻した。


「何か見つけた?」


3人に尋ねると、屈んでいた瑠宇が「あのねー…」ともごもごと喋りだした。


「ベッドの下になんかあったんだけど、きったなくて取れなかったっていうか、取りたくなかったっていうか…」


そう言いながら気まずそうに俯く彼を横目に、ベッドの下にある何かを懐中電灯の光で照らす。四角い形をした何かは、手に取るまで何かは分からない。


リュックサックを床に下ろして、ベッドの下に潜り込む。


「えっ、翠さん汚いよそこ…!」

「汚くても何があるか気になっちゃうからね。…取ったよ」


箱を無事入手したので顔を出そうとした時、マスクの外から入ってきた埃が鼻を刺激し、むず痒くする。


しまった、と思ったのもつかの間「はっくしょんっ」とくしゃみをした瞬間、ベッドの下に溜まった埃が一気に舞い、俺の顔面は大惨事となった。マスク越しのくしゃみでこれか…。


「わっ…!翠さんっ…」

「翠さん大丈夫スか!?」


柘榴が俺をベッドの下から救い出すと、3人は俺の顔を見て「ぷっ」と吹き出し、笑った。


「翠さん顔真っ黒〜!!」

「炭の粉でも飛んできたんですか…まったく…」


マスクを外しながら「そんなに笑う…?」と眉を下げて、顔や髪についた埃を払い落とす。

それを見た凛斗が、ふむ…と呟いて、自分のリュックからウェットティッシュを取り出した。


「手だけじゃ落ちませんよ」


俺の顔にピタリと冷たい感触が伝わって、ビクッと肩が跳ねてしまう。

凛斗は俺の瞼にまでついた汚れを落とすと、もういいですよ、と真っ黒に汚れたウェットティッシュをリュックの中にしまった。


「ありがとう」

「どういたしまして」


そんなやり取りをし終わって、手元にある四角い物体に目を向ける。これは…どう見ても…


「箱、だね」

「箱ですね」

「箱だな」

「あ、僕もそれ言わなきゃダメ系?箱だねんっ!」


口々に感想を述べたあと、今度は箱を控えめに振ってみることにした。

中身は空っぽなのか、まったく音がしない。


仕方ないので箱を開けてみると、そこには1枚の紙が入っていた。


紙を取り出して何が書いてあるのか見てみると、書かれていた子供の絵にゾッと鳥肌が立ってしまう。


たからのちず!と可愛らしく子供の字で書かれたそれは、クレヨンで囲った四角の中に恐らくこの屋敷の一階と二階の間取り図であろう線を見て、単純に(えが)かれた地図を笑っていいのか怖がった方がいいのか分からなくなってしまった。


「この地図を書いたのって、もしかしなくても…?」

「家主の子供でしょうね…」


たからのちずに書かれているのは、屋敷の一階と二階の間取りと庭の犬小屋で、まだ何か書いてないかと紙を裏返すと、黒いクレヨンで『さんかいのちずは このちずのほしのところに あるよ!』と記されていた。


「位置的に中心の部屋ですかね」

「多分ね…あるかどうかなんだけど…」

「まぁ、あるかどうかは探してからのお楽しみっ!ワクワクするなぁ〜!!」

「あんまりはしゃぐなよ」


俺を置いて、宝の内容はなんだろう、とか、どのあたりに置いてあるのか、とか考察を始めた3人をぼうっと眺める。


なんだか、嫌な予感がする。このまま進んでしまっていいのだろうか…?




………そう思った時点で引き返せばよかったのにな。














さぁ、とうとう宝の地図を見つけた4人ですが!

次回は4話ではなく、翠と例の友人さんについての番外編を書こうかと思ってます。

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