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第13話 初めてのダンジョン 一層目〜逃げ腰は死の香り(相手が)〜

 あ〜。みなさん、こんにちは。

 あるいはこんばんは。

 もしくはおはようございます。

 ご機嫌いかがですか?

 うん? 元気だって? それはよかったですね〜。何よりです。

 うん? 普通だって? う〜ん……。ノーコメント。

 うん? 悪いって? まあそう言わずに、きっと良いことが近い将来起きますよ。

 僕? 僕はね……。



 かる〜く、最悪だよ☆



 どのくらい最悪かって言うとね、両手の爪が一枚一枚引っぺがされるくらいに最悪だよ。

 ……え? 例えがよくわからない?

 大丈夫ですよ。言っている僕だってよく理解していないから。ならどんな例えだったら自分でもわかるかっていうとね、



 ……はい。すいません。ちょっとした自己逃避ってやつをしていました。



 現在、僕は『アルメダ』より東の方角に位置しているダンジョンへと、足を踏み入れていた。

 洞窟のダンジョンで、薄暗い闇を、側壁に設置されているトーチが淡く道筋を照らす。ところどころカビや苔が生えており、湿気もムンムンだ。

 まったく……。こんなムンムンいらないよ。できれば囚われのお姫様の色気にムンムンしたいものだ。それに、プレイヤーさんはわからないだろうけど、さっきからコケに足を取られて危うく滑りそうになっているんだけど。滑りそうになるのを必死にこらえているから足の筋肉が必要以上に突っ張ってしまってすごく辛い。サロ○パスをログアウト中に運営側に求める必要がある。THE ヒラメ貼り。

 ちなみに言っておくと、ここに限らずダンジョンはすべて自動生成ダンジョンだ。何百、何千とあるダンジョンデータから階層ごとにランダムで決定されていき、それを攻略していくのだ。

 そしてダンジョンは、いつでも自由に入れるわけじゃない。ギルドからのダンジョン探索依頼を受け持っておくか、あるいはダンジョンを自由に探索できるようになるチケットなるものを購入しなければならないのだ。なお、後者の場合はダンジョンの階層に制限がないため、どこまで深層に到達できるか、といったやり込みプレイが可能である。

 それはともあれ。

 プレイヤーさんの操作に従って黙々と先を進むと、ややひらけた空間に到着した。

 半円状の空間で天井が高く、燭台が広間を囲むように配置されている。広間が東西南北に道にわかれているところから察するに、どうやらここは分岐地点のようだ。僕がこの部屋に入ってきたのは東の方面であるため、実質、わかれ道は三つあることになる。

 ……と、その広間のちょうど中心に、宝箱が鎮座していた。ダンジョンには欠かせない、攻略のほかにはこれが醍醐味だと言っても過言ではないものだ。

 プレイヤーさんも気づいたらしく、僕をその宝箱まで接近させる。

 だけど……、僕にはどうも嫌な予感しかしていなかった。

 宝箱がこうも簡単に目に着く場所に設置されているのだろうか。もっとなんかこう……部屋の隅にポツンと体育座りしているかののように配置されているものじゃないのか?

 宝箱まで近づくと、部屋の中が暗くて気づかなかった細部まではっきりと見ることができた。

 古めかしい、木でできたその宝箱の正面には、錆びた鍵穴と、ドクロマーク。



 …………あれ?



 なんだろう? 今さっき奇妙なものが僕の視界に入ったような……。

 いや、今でもなんか不吉でやたらとリアルに描かれたマークが僕の視野に収まっている。

 僕の両手は、プレイヤーさんの操作によって宝箱に手をかけられようとする。

 ……って、ちょっと待って!

 プレイヤーさん! この宝箱に描かれているおぞましいマークが目に入っていないの?

 明らかに罠! 「自分に触るとなにか恐ろしいことが起きますよ」って、ヤドクガエルみたいに見た目で強調しているじゃないか! 貴方は「この食材には毒が盛られていますよ」とあらかじめ宣告されているというのにそれを皿まで喰らう人間ですか?

 僕の手は、自分の意志とは無関係に宝箱の両端にかかり、それを勢い任せに上へと押し上げた。

 直後、広間に響き渡るサイレン。

 同時に、室内のいたるところに魔法陣が展開され、そこからモンスターがわらわらと出現してきた。

 Oh! なんというベタな展開! 宝を手に入れようとしてそれが罠でしただなんて、イン○ィ・ジョー○ズにとてもじゃないけど顔合わせできないよ! 顔合わせする予定もないけど。

 おまけに通路はことごとく強固な扉で閉じられ、モンスターの巣窟に僕はただひとり取り残されてしまった。

 スライムが五体。ゴブリンが三体と計八体。自分を包囲するように布陣が展開されている。

 四面楚歌の図とは、まさに今の僕の状況を言うんだろうね、きっと。

 今からでも遅くはない。フラグを立てなければ! え〜っと……え〜っと……。



 ……僕、このダンジョンクリアしたらログアウトするんだ……。



 ……あれ? なんだろう。この勝っても負けても死亡フラグ感が漂う台詞は。

 いかん! 自分でいうのもなんだけど、負け癖がついてしまっている!

 だけど、それを抜いたとしても絶望的なことに変わりはない。スライム一匹にだって勝てるかどうか怪しいというのに、それプラスアルファの敵勢に勝てるわけないでしょ。これはまた「『ああああ』は視界が真っ暗になった」フラグかもしれない。……いや、絶対にそうだ! 自信をもって言いたくないけど、絶対にそうなるに違いない! スライムの体当たり攻撃で世界的に有名な配管工の姿をした僕は、スペ○ンカーのごとく儚く散ってしまうんだ!

 かろうじて今までと違う点と言えば、ロングソードを装備しているということだけ。攻撃力こそ伸びてはいるが、ほかの能力値は紙レベルだ。風前の灯火、砂の上にできた城、穴に落ちそうになって二段ジャンプをマ○オにかまされそうになっているでっていうも同然だ。

 ……いやだ。僕はまだ……負けたくない!

 とかなんとか考えているうちに、ゴブリンが棍棒を振り上げてこっちに向かってきているし! それに煽動されるようにほかのモンスターも僕に照準を合わせてきた。

 うひいいぃぃぃ! 勘弁してくれ!

 棍棒の一撃が横一文字の軌道で僕に迫ってきた――――そのときだ。

 紙一重のところでプレイヤーさんが僕を操作し、攻撃から回避することに成功した。

 攻撃を避けられたゴブリンは、さらに追撃を入れてくる上に、周囲のスライムも自身の身を鉄砲の弾のように飛ばしてくるが、それもひょいひょいと回避していく。

 どうやらプレイヤーさん。今までさんざんやられたためか、逃げる能力だけはとてつもなく上達しているみたいだ。この技術、もっと別のほうへと向けてくれれば、僕もこんな苦労をせずに済んでいるはずだろうに、今更そんな過ぎた事を言ってもどうしようもないことだ。

 おまけに攻撃を避けているうちに、敵の攻撃が勢い余ってほかのモンスターへと直撃したりしていた。

 実はこのゲーム、攻撃の判定が敵味方を問わないため、こういったことが起きることがあるのだ。

 このプレイヤーさんが、まさかそんなことを知っているとは到底思えないから、すべては偶然……まぐれの産物ではあるけど、ともあれ助かった。プレイヤーさん、こういった土壇場の運はけっこう高いのかもしれないな。実力でないのが残念でたまらないものの、「運も実力のうち」って言葉もあるくらいだし、ここは存分にプレイヤーさんの運に乗っかることにしよう。

 スライムの肉片飛ばしが、僕を棍棒で殴ろうと猛然と迫り来るゴブリンにヒットし、体力バーが減る。さらに、ゴブリンの攻撃をひらりと舞い落ちる木の葉のごとき回避をすると、その先にいたスライムに棍棒がめり込む。中には、モンスター同士が仲間割れを開始しているところまであり、広間は実に喧騒としていた。

 プレイヤーさんは体力が著しく低く、かつこちらに注意がいっていないモンスターを見つけるや否や、僕にロングソードを構えさせて、背後から斬りつける。

 ……っていうか、汚い! 汚すぎるぞ戦略が! 勇者とはとても思えない戦い方だ!

 普通、勇者ってやつはどんなにこちらが不利であろうとも真正面から敵に突撃するものじゃないのか?

 畜生! 僕の勇者魂を返せ!

 僕の意志とは反対に、身体は卑怯な手段を駆使して敵を駆逐していっていた。

 なけなしのHPが残っているスライムに向かって、問答無用に剣で一刀両断。攻撃力が半端でないほどに強いため、まるで爆弾が体内で爆発したみたいにスライムの肉片が四方八方に四散する。SEもそれに見合うほどに派手な音だ。

 ゴブリンを倒すときも同様で、背後からこそこそと忍び寄り、その頭をスイカのごとく…………駄目だ! これ以上は十八禁スプラッターゲームになりかねないので僕の口からは説明できない。この壮絶さは、ハ○ター×ハ○ターで人が殺されるときの画に匹敵している。

 ……っていうかグラフィッカー! なんでこんなところに必要以上の労力を割いてこんなグロイ死に様をプレイヤーの方々に見せようとしているんだよ! バ○オハザードのようなゾンビゲームじゃあるまいし、「俺たちこんなにすごいグラフィック作れるんだZE☆」ってことか? まったく、子供が見てるでしょーが!

 広間で繰り広げられる卑怯で陰惨な殺戮ショーは、モンスターがすべて消滅するまで繰り広げられることになった。

 勇者というより、本当に魔王だよ。このプレイヤーさんは。

 お久しぶりです、なかたくです。

 前期テストが終了いたしましたので、これから更新していきたいと思います。

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