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 朝、兄貴がヒーローマガジンを寄越して「なあ、面白いのが出てるぜ」と言った。俺は寝ぼけ眼でコーヒーと一緒にマガジンを受け取った。

「なにが書いてあるって?」

「いいから見てみろって」と笑いを堪えている。

 俺は少し不安に思いながらマガジンを開いた。兄貴が俺のおでこにキスをしている瞬間の写真だった。いつ撮ったのかと思えば、念写したらしい。頭にくる。

 しかも、下にご丁寧に記事まで付け加えてやがる。本当に頭にくる。

「侵入した記者は……」と書かれている。野郎、探偵だけじゃなく、清く正しく新聞や雑誌の記者でもいやがったらしい。さらに続けて読んで行くと、俺と兄貴の仲が兄弟を超えた仲ではなかろうか、なんて書いてある。男兄弟でそんなことあるわけないだろう。この野郎、絶対に一人っ子だ。

 俺は兄貴を睨むようにして「なんだよ、この記事!」と怒鳴った。

 兄貴は肩をすくめた後「知らないが、面白いだろ? 文章が無駄に俺たちの仲を色っぽく書いててさ。これが三文小説だったら、俺は買ったぜ」と笑った。

「まったく面白くない」

「この野郎、きっと一人っ子だな」

「絶対そうだ。兄弟いるんだったら、俺は奴の頭を疑うね。それにしても、念写なんかしやがって。下衆め」

「あの時、踏んづけて鼻血流したのはその為か。度し難い助平野郎だな。この写真、うちの目から見たのとそっくりだな。念のため、俺の部屋にはカメラ類を近づけさせないようにしよう」

「それがいい。一番いい」

「それにしてもよ、こいつ面白いな。始末はもうちょっと引き伸ばして、遊んでやろうぜ、なあ」

「遊ぶって?」

「この怪しい関係をわざと演出してやろうってんだよ。野郎、鼻血とよだれ出して喜ぶぜ」

「俺、絶対にやだよ!!!!!!!」

 兄貴は俺の大声に耳をふさぎながら「こんなはっきりした反応する奴、遊ぶ以外にないだろう」と言う。

「俺は、絶対に、嫌だ!」

「アハハハハハ! 考えてみろよ、兄弟。あんなひょろっこい探偵、いつでも殺せる。遊んで使い捨てようぜ。面白いじゃないか、なあ」

「じゃあ、兄貴、聞くけど、奴のお望みは俺たちががっつりやってることだぜ」

「イッヒヒヒ……。がっつりだって? そりゃ、俺も嫌だね。ただ、素振りと奴を挟んであれこれ言い合うだけでいいんだよ。あいつを弄んでやろうぜ」と兄貴は悪魔みたいなゾッとするほど色っぽい表情で笑った。俺も一応は兄貴に似たような顔をしているが、その表情だけは真似できない。

「兄貴、俺はフリだけでもあまりしたくない」

「自分のお綺麗な顔使って楽しもうってだけじゃねえか」

「他の野郎にジロジロ見られんのは嫌だぜ、俺」

「気にしなきゃいいじゃないか。そんなに嫌なら、片っぱしから目を潰して回ろう。それか、このマガジンの会社を潰すか」

「潰したって、他であの野郎があれこれ提供するさ」

「たくましいな。とりあえず、奴に電話しようぜ」

「なあ、本気で遊ぶのか?」

 兄貴は「もちろんそうに決まってるじゃないか。俺、面白いことは好きだぜ。やるよな?」と赤い唇をニンマリさせた。俺はため息を吐きながら頷いた。どんなに抵抗したって無駄なだけだ。俺は諦めるのが上手いんだ。

 兄貴は受話器をとって、ヒーローマガジンに電話をかけた。向こうでてんやわんやの騒ぎが起こっていることは想像に容易い。兄貴はニタニタ笑って、俺に「おい、あっちの野郎供、わたわたしてやがるぜ」と囁いて電話をスピーカーモードにした。

「あの、す、すぐにつながりますんで」

「その間、気の強い女に変わってくれよ。なんだったら、取材させてもいいぜ、今の間なら」と兄貴はクスクス笑った。よっぽど楽しいらしい。

 向こうの男はすぐに女に電話を代わり、女は自己紹介をして、取材してやろうじゃないかと鼻息を受話器に吹きかけた。俺は思わず吹き出しそうになって、口に手を当てて難を凌いだ。

「それで、何を聞きたい?」

「あなたと弟さんのことを!」

「おい、お前のことも知りたいんだってよ!」

「俺の好みは、気の強いのじゃなくて、大人しくておしとやかなタイプだって言ってくれ」

「あんたは好みじゃないってよ。俺は気の強い女は好きだぜ。そうそう、今夜空いてるかい?」

 兄貴はニンマリ笑った。

「兄貴、記者のお方は大概忙しんだし、やめとけよ」

「直営のレストランで取材させてやろうってんだよ。味のこと書いてほしいんだ」

「そりゃ、仕事熱心で」

「そうさ、俺は仕事熱心なのさ。それで、どうだいお嬢さん」

 兄貴は受話器を見つめた。

 女は頷いた。

 俺は十字を切った。

「じゃあ、今夜の6時はどうだい? それ以外じゃ空いてないんだよ。いいだろ? 弟と一緒に行くよ。で、まだ探偵さんは出ないわけ?」

「あ、すぐに。今きましたのでかわります」

 電話から離れたところで椅子に座る音と女が上司に何かを話す声が聞こえ、すぐに探偵の野郎が出た。

「よう、面白いの書いたじゃねえか。よくできてる。なあ、お前一人っ子?」

「そう、一人っ子。まさか読んでくれたとは驚きだ」

「弟がマガジンを取っててな。気に入ったよ。だから、うちに来な。カジノにだ」

「あら、行っていいの? 俺ったら、貧乏だし、礼儀知らずだし、一応記者みたいな真似もやってんだぜ?」

「ああ、知ってるよ。書き立ててもいいぜ、好きに。そいつが面白い間は殺さないでやるよ」

「そりゃあ、頑張って書かないと。俺は念写以外になにもないからね。それと頭もあったか。はははは!」

「それじゃあ、弟に話を変わるよ」と兄貴が俺に向かって、出ろよと指図した。

「よう、探偵。兄貴は面白がってるみたいだが、俺はちっとも面白がってないからな」

「残念だ」

「胸糞悪いことしやがって」

「ははははは!」

「だが、兄貴が面白がってるから、なにも言わないでおく。かわりに勝負をしよう」

「勝負? 賭けかい」

「ああ、賭け事には違いはない。カジノで待ってる。兄貴、お気に入りとおしゃべりしてなよ。俺、仕事の用意しとくからさ」

 兄貴は俺の肩を叩いて、探偵と話し始めた。

 確実に兄貴は楽しんでいる。兄貴の基準は俺と違うのでてんでわからない。こんな記事かかれりゃ、気色悪がって怒るところだが、兄貴は面白がっている。変なところで度量が広いのだ。

 部屋に入って、兄貴と俺のスーツを出して、簡単にアイロンをかけて香水をふりかける。俺も兄貴も女物の香水をしている。全部、どこぞの女から取って来たものだ。もちろん、下水行きになった女のだ。

 俺と兄貴は年は2つ違うが、双子みたいにそっくりだ。そっくりだが、確実に違いのわかる兄弟だ。

 兄貴の方が女っぽくて、俺の方が男っぽい。兄貴の方がまつ毛が長くて、俺の方が少し眉毛が濃い。ただ、体型は殆ど一緒みたいなもんだ。俺の方が多少はがっちりしているが……。

 だから、服もごちゃ混ぜになっていて、これが兄貴のでこれが俺のというのが少ない。ワイシャツだのポロシャツだのは特にそれが少ない。それにタイ類と靴下もだ。スーツのジャケットとパンツはそれなりに自分たちの物だというのがあるのだが、時々相手のを借りたりする。

 ただ、下着だけはきっちり分かれている。相手のなんて気色悪くていけない。

 兄貴が電話を終えて、部屋に戻って来た。

「あの探偵、時々感に触るけど、大方面白いな」

「面白くなんてないだろ」

「ムッスリするなって。それより賭けってなにでだ?」

「ボクシングに決まってるだろ。地下にあるじゃないか」

「あんまりボコボコにして、殺しかけないようにな」

「わかってる。なあ、記者の女、始末する気だろ」

「いいや、下手をやらなきゃ帰してやるさ」

「何言ってんだよ。俺たちのこと聞いた時点でやる気でいただろ」

 兄貴は「んっふふ」と笑って「まあな」と頷いた。

 

 カジノの開店時刻は20時丁度だ。ちゃんと夜だとわかる時間に始まり、朝日と共に終わる。だから、俺たちの朝っていうのは、たいてい11時だのそこらへんだ。

 兄貴と俺は、デートみたいにはしゃいだ格好をした。

 俺たちは指定した組織の直営のレストランに行き、裏方に信用の置ける奴だけを残して、他は帰らせた。食事をしているお客もだ。とは言っても、組織のレストランなので2時間早めに行って、これ以上のお客を断らせただけだ。食事はきっちりしてもらった。

 兄貴は組織に連絡して、許可を取っていたのですんなりできた。

 記者の女がやってきた。おめかしして可愛らしい。俺はもう一度、見えないように十字を切った。

 兄貴は彼女に手を差し出して「来てくれて嬉しいよ」と笑った。俺も笑った。

「まさかあの皇太子とお食事できるなんて! 本当に二人とも、すごく綺麗ですね」

「まあな。おい、飯を持って来てくれ。お行儀よくな」

 ウェイターは品よく会釈して厨房へ向かって行った。

「それにしてもよく来ましたね。こんな危険なところに」

「危険でも興味がありましたし、一面の記事にできますから!」と彼女は目を輝かせて言った。

 兄貴は気の強い女は確かに好きだが、興味を抱いてあれこれ聞いてくるのは嫌いだった。女はニコニコしながら、ノートとペンとカメラを取り出した。兄貴はにっこりした。カメラはあずからなかった。

「夢に溢れてるみたいで……。それで、何を聞きたい? 答えてやるよ」

 兄貴は俺を見た。俺も頷いた。

「それじゃあ、二人の生涯の話を。子供の頃はどんな?」

「今と変わらないよ。ああ、でも両親と祖父母はいたな。それだけだ」

「いたって?」

「なあに、俺がいまいる組織の連中に殺されただけの話だ」

「組織のだったのか、あれ」

「悪いな巻き込んで。嫌な胸騒ぎがして起きてたんだ。本当だぜ? 俺は確かに悪ガキだったが、情のない男じゃないから」

「知ってるよ。俺が一番知ってるとも。あの日は兄貴、朝っぱらからイライラしてたからな。それに、その時は組織なんてのには入ってなかったろ?」

「入ってなかったね」

「じゃあ、組織に入ったのは、復讐のためですか?」と彼女は聞いた。

 兄貴は笑って「バカ言うなよ。金にもならねえのに」と言った。

「では、なんのために入ったんです」

「そりゃ、金が欲しかったし、自分に一番合った仕事だからだろ。それに幹部の奴らを警察に突き出したんだ。それで俺の能力ってのが、お上にわかってもらえるだろう? そしたら俺はすぐにえらくなれる。えらくなれるってことは金がたんまり手に入るってことだ。俺はこの顔だろ? 女には困ったことはないが、特上のを抱くには金がいる。だから、それだけさ。復讐なんて気持ちがありゃね、さっさと組織を寝返って、皆殺ししてるさ」

 彼女は汗を掻いた。

「でも、その金のおかげで俺は学校を出れたんだ」と俺はせめてもの償いで言った。彼女はいくらか緊張を解いて、興味津々という顔をした。

 兄貴は俺の肩をがっつりと掴んで「俺の弟は秀才でな。飛び級で大学に18で出たんだ! 俺より頭の出来がいいぜ。結婚するなら、俺の弟みたいなのと結婚しなよ、お嬢さん」と笑った。彼女も笑った。俺も笑った。

「弟さんのこと、本当に大切にされてるんですね」

「当たり前だろ。こいつは俺のために生きてるんだから。なんのために大学に行かせたと?」と兄貴は俺を見た。俺も見返した。兄貴は出て来たステーキを頬張った。

「わかってるよ、兄貴。兄貴は、生きることに貪欲で、よく深い人間でね。決してヴィランじゃないんだ。ただ、必死に生きてるだけなんだ。人一倍、生きることに執着してるだけなんだ」

「生きることに?」

「そう。組織に入ったのも、でかいところから守ってもらうため。金を持つのも生きるため。女を買うのも……それはちょっと違うが、まあ似たようなところだ。ただの欲望の塊だよ、兄貴は」

「あなたは、それで不満じゃないんですか。お兄さんに物みたいに扱われて」

 俺は彼女に笑いかけて「良識のあるお嬢さんだ」と言った。

「ああ、本当に」と兄貴も頷いた。

「俺は兄貴を愛してるんだ。もちろん兄弟愛だぜ? そこは間違えないでくれ。だから、別に俺はそこらへん気にしてないし、兄貴に逆らえば、俺は兄貴に殺されるだろう。俺だって死ぬのは嫌だからな。でも、一番の理由は、俺が兄貴のことを愛してるからだ」

「俺はいい弟もったなあ。俺も愛してるぜ」

「どうも。ところで何を固まってるんだ? 俺たちの兄弟愛がそんなに重い? ま、普通一般からしちゃ重いだろうな」

「そうか? 重いか?」

「重いよ」

「ふうん」と兄貴は興味なさそうに言った後、彼女に向かって「料理は美味しいかい?」と聞いた。彼女は頷いて、しっかり記事にします、と言った。

 俺たちはその後も彼女とあれこれ喋り、和やかとは言い難いがそれなりに平和に食事は終わった。

 彼女が席を立ち、出て行こうとしたところで、兄貴は彼女の名前を呼んだ。彼女は立ち止まり、こちらを向いて全身を緊張で固まらせた。もちろん理由は兄貴が銃を持って、彼女に向けていたからだ。

 彼女は震えながら、ドアノブをガチャガチャ回した。

 だが、開かない。

 このレストランのドアは、いろんな理由で開きづらくできているのだ。震えてちゃ開くはずがない。裏の方から誰かが走ってくる音が聞こえる。兄貴は俺に「彼女からカメラを取りな」と言った。俺は彼女に近づいてカメラを取り「すまないな、お嬢さん」と呟いた。

 彼女は目を見開いて俺を見た。カタカタと震える口から「助けて」という言葉が発せられた。

「俺は兄貴の弟なんだよ。それに言っただろう? 俺は兄貴を愛しているって」

 俺は彼女の瞼にキスをして、目の前から離れた。彼女の眼球には兄貴が銃を構えて笑っている姿が映されていることだろう。

「なあ、お嬢さん」と兄貴は言った。

「なんで殺されるのか知りたいだろうから教えるが」と近づきながら続きを言う。

「俺たちの記事を書くってことは、俺たちの弱みをどこぞの誰かが発見するかもしれないし、それは俺たち兄弟の寿命を縮めるものだ。そうだろう? だからだよ。俺はね、弟が言った通り生きる欲望に溢れた人間なんだ。決して、ヴィランじゃないぜ。俺は、ただの人間だからな」

 彼女は勇敢だった。

「さっきの話は全部嘘なんでしょう?」

 兄貴はにっこりと笑って「いいや、全部本当さ」と言って、引き金を引いた。彼女は俺を無視して、必死にドアノブをあけようと背中を向けた。俺にはありがたいことだった。

 ドアノブには赤いものがついている。

 銃を一発撃ち込まれただけじゃ、人間はすぐに死なないもので、彼女は痛みにのたうちまわりながら、やっとドアを開けることに成功した。兄貴は踵をかえして、厨房へのドアを見つめた。俺も兄貴のように彼女のことは忘れて、隣に立って、ドアが開くのを待った。

 勢いよくドアが開き、顔を真っ赤にした探偵が姿を現した。

「よう、探偵」と兄貴は陽気に言った。寿命が伸びたから嬉しいんだろう。

「お前がウェイターに変装してるのはわかってたんだ。あのお嬢さんの用心棒でもしてたんだろう」

「なんで殺したんだ」と探偵は怒りで声を震わせた。

「その知能指数の高い頭で考えな」

「兄貴、人間、怒ってちゃ、まともな判断ができない」

「そうか、そういうものだな。じゃあ、教えてやるよ。俺たちのことを聞いたからだよ。それだけでと思うかもしれないが、自分のことを話すってことは、生命線を見せるのと同じだ。頭のいい連中なら、俺の弱みを握っちまうだろう。俺はな、生きる欲望にまみれてるんだ。そんなのが、生きて返すと思うか?」

 俺は言葉を発せない探偵の代わりに、彼が思っているだろう質問に答えた。我ながら、優しいやつだと思う。

「お前はきっと、じゃあ、本当のことを言わなきゃいいと思っただろう。でも、先に聞きたいって言ったのは、そのお嬢さんだ。断ってやればいいと思ったろう。だが、真っ先に俺と兄貴のことを聞きたいってんだ。いずれ、お前みたいに、俺たちを嗅ぎ回るハイエナになるに決まってる。そうじゃないかもしれないが、可能性があるなら潰すってもんだろ? 彼女を潰しておけばどうなると思う? 俺たち兄弟の真相を本当に知ろうとして、本当に知っちまうやつがいなくなる」

「むしろ好奇心で集まってもらえれば話は早いんだがな。そうすりゃ、俺の生命線もちったあ守られるだろう?」

 探偵の目が血走った。それから、こっちを見た。彼は、俺を勘違いしているらしい。

「お前は俺のことをまだいい人間で、兄貴には渋々付き合っていると思ってるみたいだが、俺は兄貴の弟だぜ? よく考えてみろよ、そのことを」

 俺たちは探偵のために道を開けた。

 探偵はまっすぐ彼女に向かって走って行き、まだ息のある彼女をかつぎあげて、店の外に出て行く。ドアは開いたままだ。

 兄貴は俺に言った。

「おい、照準を合わせてくれ」

 俺は頷いて、兄貴の腕を掴んで彼女の頭に銃口の照準を合わせた。

「お前は殺さない。俺は殺す。引き金を引くのは、俺の役目」

「兄貴」

「なんだ」

「もう7時半だ」

「そりゃ、いけないな。さっさと帰ろう」

「まだ、コーヒーが残ってるぜ」

「じゃあ、カップごとカジノに持って行こう。あとで返しゃいいさ」

「そうだな」

「なあ、これ、口紅がついてるぜ」

「キスしてやれよ。気の強い女が好きなんだろ?」

「それもそうだな」

 兄貴はコーヒーを飲んだ。表では探偵の泣き叫ぶ恨みのこもった野太い声が、俺と兄貴の名前を呼んでいた。

最低だぜ、この兄弟。

でも、この話はヴィランの話なので胸糞悪いのまだまだある。最低だぜ。

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