08 町巡り
翌朝…エニシとミリーは早起きをして準備に取りかかる。
「同じ部屋をもう一泊お願いします。それと朝食お願い出来ますか?」
「かしこまりました。すぐにご用意致します。」
カウンターに行き、店主であるウォールに今日分の宿泊代と朝食代を払いミリーと行き先会議を始めた。
「ミリーどの店を見に行く?」
「そうね…まずは武器に行くべきじゃない?」
「うむ…確かにいい加減武器と防具は欲しいな。」
「その後わぁ…道具屋に寄って、アクセサリーみて、服屋に寄って、屋台を巡って…」
うん。行きたいところいっぱいだな。ミリーは目を輝かしながらいきたい店をピックアップしていく。
「おう!今日はずいぶんと早いじゃねぇか!」
階段を降りながら、俺達に気付きデュランが声をかけてきた。
「おはよう!」
「おはようございます!」
「あぁ、おはよう!こんな朝早くに起きて何やってんだ?」
「これから町に出て、買い物をしようと思って、何処に行くか話してたんだよ!」
「そうか!じゃあ俺が案内してやるよ!」
デュランに行きたい店を伝えると、いい店を紹介してやるよと言わんばかりに、案内役を買って出てくれた。有り難いことだ。
「本当に!ありがとう、助かるよ!」
「いいってことよ!その代わり昼メシはおごれよな!」
「了解!いい店紹介してくれよ!」
デュラン達はこの町が拠点のようだ。2日くらいは自由行動らしく、デュラン以外はまだ寝ているそうだ。10分後に戻ると言ってデュランは部屋に戻って行った。
俺達は準備を済ませて部屋を出たから戻る必要もないので、食後に出された紅茶を飲みながら待つことにした。
「おーう!待たせたな!行くか!」
デュランは5分くらいで戻ってきた。紅茶を急いで飲み干しデュランと共に宿を出た。
日は昇ったばかり、日本で言うと朝6時くらいの雰囲気だろうか。ぼちぼち目を覚ます人が出てくるような時間帯だ。
そんな時間なのにも拘わらず、足早に歩く人々、店を開けようと準備をする人が沢山いて、すでに活気をおびていた。この町の住人は早起きが多いのだろうか?
「この様子だと、後10分もすりゃ店が開きそうだな!」
デュランはそう言って、ついてこい!って勢いで目的地であろう場所へ向けて歩き出した。
「そうだエニシ!今いくら持ってるんだ?」
「えっと、朝使ったから…金貨が1枚と、銀貨33枚と銅貨4枚だね!」
今持っているお金はココットさんに借りているお金なので、いくらあるか把握する必要があり、昨日のうちに数え終えていた。受け取った小袋には金貨1枚と銀貨50枚入っていた。流石商人だ、きっちりしている。その他諸々引っくるめて借金は金貨2枚といったところだ。
旅の序盤で借金…情けないが仕方がない。目処は着いてるからもう少しの辛抱だ。そんな心境を知ってか知らずかあっけらかんとデュアルは言う
「結構あるな!それだけあればとりあえず道具は揃うと思うぞ!まずは武器屋にいくか!」
…うん。借金してるのは知っていると思うのだが、お構いなしのようだ。…まぁ今はしょうがない。
デュランはずんずん進んで行く。住宅街を通りすぎ開けた円形の場所に出た。
「ここならなんでも揃うぞ!」
「「おぉー!!」」
店が20店舗くらい密集している場所だった。俺とミリーもその光景に驚き声を漏らす。
目の前には円形の広間があり、広間の真ん中にはベンチがいくつかあり、冒険者らしき人々が装備を見せあっている。その広間を囲むように、武器屋、防具屋、道具屋などが隣り合って密集している。
冒険者は朝が早いのだろうか?結構混雑していた。
よく考えられた作りだった。すぐに競合店の商品を見ることができて比較できる。どの店も『この店が一番質がいいよー!』とか、『うちが一番安いよー!』など、自分の店の強みを生かした呼び込みをしている。
「エニシは亜人とか大丈夫か?」
「亜人?どんなの?」
「えっと…ドワーフとかエルフとかなんだが…」
「やっぱいるんだ!見てみたい!」
「お、おぅそうか!なら良かった!」
デュランは急に突拍子もない確認をしてきたが、俺は深く考えず、やっとファンタジー人種を見れるのかなと心踊らせて返事をした。
「ここだ!」
「えっ?大丈夫かここ?」
スラム街の入り口付近にある、人気のない店でデュランが止まり自慢気に案内する。
「おーい!いるか?」
「おぉデュランかい、久しいのう」
「やぁ暫くだったなドムネド!客を連れてきたから、武器と防具を見繕ってくれ!予算は2人で金貨1枚だ!」
「むぅ?わかった!あんちゃんちょっとこっちにこい!」
ずんぐりとした体躯に、もじゃもじゃの白い髭の小さい老人のドムネドはデュランの頼みに応じ、俺を呼ぶ。
「ド、ドワーフ?」
イメージ通りの姿に思わず聞いてしまった。
「そうじゃ!奧にエルフもいるがのぉ!なんじゃ初めてみるのか?まぁ店を構えてるのは一握りじゃし、しかたないかのぉ。」
「そ、そうなんです!宜しくお願いします!」
「変わったあんちゃんだのぉ。」
感激し過ぎてドムネドの手を握り、上下にぶんぶん振っていた。
「とりあえずよく見せてくれ。」
ドムネドはそう言って俺をじっくり観察する。
デュラン曰くこのドムネドと言うドワーフは、人を見ただけで身体能力が大体分かるらしく、その人物に合った装備を見繕う特技があるそうだ。
「うむ。武器はこれと…防具はこれかのぉ…靴はこっちで…腕にはこれじゃな…よし!これを着てみてくれんか?」
「分かりました!」
「試着室は奥じゃ!」
「次は嬢ちゃんか?」
「はい!宜しくお願いします!」
俺が装備を見繕ってもらい、試着している間に次はミリーの番となった。
「ふむ。女なのに結構腕力があるようじゃな!まぁでも軽い方が負担が無いじゃろ。武器はこれで、防具はこれ、手はあんちゃんと一緒でいいじゃろ…素早さもあるようじゃから、足はこっちじゃな…よし!こんなもんかのぉ!」
「ありがとうございます!」
俺の試着が終わり、お礼を述べたミリーが試着室へと入っていく。
― ― ― ―
【エニシ装備】
武器 鋼銀の短剣(対アンデット効果中)
防具 青銅のメイル
腕 青銅手甲
腰 皮のベルト
足 鉄板入り革のブーツ
【ミリー装備】
武器 鋼銀の細剣(対アンデット効果中)
防具 鋼糸のメイル
腕 青銅手甲
腰 皮のベルト
足 羽ウサギのブーツ(走力小UP)
― ― ― ―
「うん!いいんじゃねぇか?やっと冒険者らしくなったな!」
「そうじゃろ!大まけして予算いっぱいの金貨1枚じゃ!うちじゃなきゃこんな値段じゃ揃わんぞ!」
デュランもドムネドも満足そうだ。
「結構な出費だと思うが、装備は命に関わる事だから、妥協はしない方がいいぞ!」
「そうじゃ、金がたまったらまた来るといい。デュランの知り合いに変なものを売り付ける事はせんからの!」
「「お世話になりました。また来ます!」」
俺とミリーは代金を支払いドムネドにお礼を言って店を後にしようとする。
「ちょっとぉ!!ちゃんと紹介してよ!!」
出てくるタイミングを逃したのか、頬を膨らませなから、周囲に『ぷん、ぷん』と見えそうな感じで、これまた、見た目イメージ通りのエルフが現れた!!
「そうじゃったな、すまんすまん。」
「まったくぅ…道具屋のフランベールです!宜しくね!呼ぶときはフランでいいわ!」
ドムネドは謝り、エルフのフランベールが自己紹介してくれた。
「あっ、ど、どうも!エニシと言います。こっちはミリー。よ、宜しくねお願いします!」
「はいっ!宜しくね!……ところで道具は買っていかなくていいの?」
…うん。またやってた。フランの手を握ってぶんぶんと…笑顔のまま手をほどかれ、商売を始めたフラン。
「そ、そうだね!回復薬2本と毒消し1本と麻痺治し1本の薬を貰えますか?あど回復薬になる前の薬草1束と回復薬を入れる空瓶を2本欲しいです!」
ドムネドの店の一画が、フランのやっている薬屋兼素材屋となっている。共同で店を使っているようだ。
「はいっありがとう!全部で銀貨2枚よ!荷物入れが無いようだからこの小物入はサービスであげるから中にしまっちゃうね!」
「ありがとうございます!」
「またきてねー!」
「まっとるぞー!」
ドムネドとフランに手を振り、3人はその場をあとにする。
「次は何処だ?」
「図書館のような沢山本の有るところに行きたいんだけど?」
デュランに次の予定を伝えた。
装備に結構お金を使ってしまった為、服とかアクセサリーはちょっと我慢だ。下着や部屋着のようなものは、各自銀貨5枚の予算で必要最低限で揃えた。早く金を稼がなければ…
「それならギルドの資料室に沢山あるぞ!ギルドに登録してあれば金はかからねぇし、ギルドで物足りなきゃ、金払って図書館行ったらいい!」
なぬっ!この世界の図書館は金がかかるのか。デュランが言うように、まずはギルドで情報収集だな!いっちょやったるでー!と目力強めでミリーとデュランに目配せをし、
「よし!ギルドへ行こう!!」
俺はそう言ってギルドへ向けて走り出した。
「お、おぅ。」
「…はぁ……。」
エニシの妙なテンションにデュランは困惑しながら、ミリーはやれやれとエニシを追いかける。
お金の価値を書いて置きます。
角銅貨=10円くらい
銅貨=100円くらい
銀貨=千円くらい
金貨=10万円くらい
大金貨=一千万円くらい
こんな感じの価値観で出てきます。