07 秘められた能力
冒険者ギルドを出ると、時刻は夕暮れであった。
ギルドが混雑していたのは、依頼を終え、ギルドに結果報告する人が多い時間だった為だ。デュランも担当した護衛の依頼の報告をして報酬を貰ったみたいだ。
「ここだぁ!」
「おー、でかいな!」
ギルドから10分くらい歩き、酒場を見つけたデュランが教えてくれた。
酒場は真ん中が吹き抜けになっている2階建てで、この時間は2階まで一杯だった。ラオルが先に席を取っていてくれたようで、
「ここっすよ!」
入り口から入って、真っ直ぐ見上げた辺りの2階の席で手を振っている。
今回は『紅色の騎士』の3人と俺達2人の、5人で宴会だ。
「好きなもの頼めよ!」
「俺とりあえず肉がいいっす!」
「アンタに言ってるんじゃ無いわよ!」
仲の良い3人だなぁと思いながら、各々が食べたいもの、飲みたいものを頼んで宴会がスタートする。
「適正検査はどうだったんだ?」
「…あれね…ランプがいっぱいついちゃって驚かれちゃたよ…」
デュランから聞かれ、俺は返答に困りながら返した。
「うそー!驚かれたっていくつ適正があったの?」
「えっと5個あったんだよ。それと紫がついたからって…」
「「「えー!!」」」
サニッシュに聞かれ答えたら、言い切る前に3人が声を揃えて絶叫しながら固まった。
「…やっぱり渡り人ってやつはすごいんだな…」
「「うん。」」
沈黙を破りデュランが感慨深そうに頷き、残りの2人も続いた。
「と、とりあえず、た、食べましょうか?」
サニッシュが動揺しながらも意識を強引に食事へ誘導する。
気を取り直して皆一斉に食事を始める。デュラン、ラオル、サニッシュは酒を飲むペースが2倍くらいになったがスルーしよう。
世間話を交え、徐々に場も元通りになり、皆満腹になったので宴会はお開きとなる。
ギルドから直行だった為、宿屋を探す暇が無かったので、今回はデュラン達が泊まる宿に一緒に行くことにした。
酒場から5分程歩いてすぐについた。トントの時の宿とは違い、しっかりとした造りの建物だった。うん!やっぱり町は違うと思った。
「いらっしゃいませぇ!」
元気な声で接客してくれたのは10才くらいの少女。
「チェックインはこちらです!」
されるがままにフロントまで案内された。
「?」
なんかモジモジしてる。
「…チップが欲しいのよ…」
サニッシュが小声で教えてくれた。
「ありがとう!」
俺は少女に銀貨1枚を手渡しながら言った。
「ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしください!」
少女はそう言うと『トトトッ』ってまた入り口の方へ走っていった。うん。将来が楽しみだ。
「先程は娘がすみません。お客様は2名様ですね。生憎、2名様のお部屋が1部屋しか空いてないのですが、宜しいでしょうか?」
「構いません。それでお願いします。」
「一泊1部屋銀貨5枚です。」
俺は店主とやり取りをし、宿泊代金を払い鍵を受け取った。
「んじゃまたな!」
「またね!」
「この町にいたらまた会えるっすよ!」
「お世話になりました。またどこかで!」
「お世話になりました。お体にお気をつけて!」
俺とミリーはデュラン達にお礼をし、それぞれ自分の部屋へ向かった。
部屋の布団はふかふかだった。値段の割りに良い宿みたいだ。灯りも多く明るい。試したいことがあったので、部屋の確認も早々に行動にうつした。
「ミリー試したいことがあるからベットに座って貰えるか?」
「えぇ、いいわよ!」
俺はミリーにお願いして正面に座ってもらった。ここに来るまで、探り探りスキルを使っていたのだ。そして見つけたのだ。
―《鑑定》発動 ―
【ミリー・アトウ】Lv1
生命力 30/30
魔力 60/60
腕力 50
魔法力 60
素早さ 90
◇スキル
魔法(水、風、白) 俊敏 危険察知 体術 異世界パック
二重意識
◎専用スキル
獣人化
― ― ― ―
「見えた!!!」
「何が見えたの?」
「ミリーのスキルとか色々。」
「えっ!!」
ミリーは顔を赤らめて俺を見る。
「いやいや…ミリーの名前とか、レベルとかどんなスキルがあるかだけだから…」
勘違いしたように見えたので弁解し、ミリーにどんなスキルがあるか伝えてあげた。
まずミリーの名前からしてツッコミたいんだけど、思った通りゲーム中っぽいんだな。ミリーは俺の妹?って感じの設定なんだろうか?…まぁ嫌じゃないけど。これからは兄妹と言う設定で行こう!ってかミリーも名前に食い付いた!!…まぁ嬉しそうだし良しとしよう。
「ミリーの固有魔法は専用スキルの獣人化じゃないかな?変身とか変化の魔法の類いだと思んだけど?」
適正検査で紫がついたのに、ミリーの魔法の適正は3種類になっていたので、それしかないと結論付けた。《獣人化》を更に詳しく見てみると『体を獣人の姿に変化させ、身体能力をアップさせる』だった。しかし、獣人化かぁやっぱ耳とか、尻尾とか生えてくるのかなぁ…早く見てみたい!能力より姿が見たくて堪らなくなったのは、ミリーに内緒にしておこう。
「どうしたの?エニシなんかにやけてない?って!やっぱり…」
「ごめん…これは…ち、違うんだ。」
ミリーはまたもや顔を赤らめて、ジト目で俺を見る。俺はアワアワしながら弁解することとなった。
気を取り直し、
「じゃあ次は自分をみてみるかな!」
【エニシ・アトウ】Lv1
生命力 45/45
魔力 78/80
腕力 40
魔法力 80
素早さ 40
◇スキル
魔法(火、土、風、白、時空)異世界パック
叡知(高速思考、高速理解、速読、鑑定)
◎専用スキル
融合と分離
― ― ― ―
異世界パックは、異世界言語理解と、異世界語を話せる事と異世界文字を書けて読める事のようだ。成長補正も有るみたいだからすぐに強くなれるかな?
《融合と分離》も詳しく見てみる。『物、魔法、スキルを混ぜ合わせたり、分解したりできる』なんかすごいのキター!!使いこなせれば超絶便利スキルじやないですか!!
あとは身体能力だな。レベル1だし、このパラメーターが強いのか弱いのかよく分からない。スキルも使いこなせなければ、宝の持ち腐れだし、とりあえずレベル上げれば良いのかな?ゲームとかだとそれが定説だしな!
ミリーもそうだが、専用スキルとは前世のどこかで起きた出来事が関係しているみたいだな。ミリーは前世猫だし、でも完全にはならないんか?俺は死んだときにミリーの魂を取り込んで…分かれて……うーん…専用スキル…安易だわぁ…
果たしてミリーの獣人化は猫ベースになるのだろうか?俺のスキルをみる限り猫率が一番高いけど…どうなんだろ?
俺もミリーもなかなかチートスキルであろう。
「クラリエル様ありがとうございます!!」
俺は手を組んで天井を見上げた。
自分のスキルが分かり、やりたいこと、出来そうなことが色々浮かんでくる。これぞ異世界の醍醐味!とテンションはMAXだ!
「ミリーっ!明日は町を見て回って、冒険に必要なものを買って図書館にでも行こう!!」
「わかったわ!そうしましょう!」
「じゃっ!おやすみっ!」
俺は興奮しながらミリーに明日の予定を告げ、すぐにミリーから顔を反らし、背を向けてベットに横たわる。自然と浮かんでしまう笑みを隠すように布団にくるまり、早めの就寝を決め込んだ。
「…ぐふふ…」
一方ミリーは、変な笑い声を上げるエニシを一瞥し、自分も寝る準備を始める。
ミリーは、ショッピングに強い憧れがあったようだ。脳内は人間の女の子、当たり前である。今のミリーにとって見るもの全てが新鮮で、1日中興味が尽きなかったのだ。
明日の予定を聞き、どんな店に入ろうかなとか、どんなものを食べようかななど考えて、ミリーのテンションも上がる一方だった。
エニシは既に寝息をたてて寝ている。どれ程の時間妄想していたのであろう?早く寝なきゃと爛々と開いている目を瞑り寝ようとする。
うとうと…思ったよりすぐだった。ミリーは寝付きがいいようですぐに眠りについていたのだった。
そろそろ本格的に冒険に入っていきます。






