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プロローグ2 王室にて

 同刻、レーデ・ベルテンの中心部に位置するディザレス城内では三人の男を通した門番のモースからの連絡を受けた魔王の側近であるリィーザ・アザレスタが王室に姿を現した頃だった。


「アルシア様、東門の番をしていたモースからの連絡が」


「分かったわ、リィーザ。それで内容は?」


  玉座に腰をかけて佇む少女が一人。

 その少女こそがレーデ・ベルテンの領主にして魔王――アルシア・ベル=ディザレス、父親譲りの猛々しい角さえ除けば、雪のように白い髪と海のように青い瞳をした可憐とも奇麗とも言えるようなその姿からは魔族としては余りにもかけ離れており、ましてや天敵とも言える天界の者、天使族に間違えられる事も多くはない。それ故か、幼少期の頃は魔界でも多少なり忌み嫌われることが多かったが、今では領地内では先代魔王の父親と同じく賢王と呼ばれている。


「勇者や兵士ではない人間三人がこの地に来た、との事。なんでもアルシア様に頼みがある、とか……アルシア様どうなされますか?」


「いいわ、要件だけは聞いてあげるわ。警戒心と観察力の塊のようなモースが通すぐらいなんだから。でもそうね、その要件に応じるかどうかは内容次第ね……それより、リィーザ。そんなに畏まらなくていいと何回言えば分かるの?私が堅苦しいの嫌いなの知ってるでしょ?」


「ですが、アルシア様は魔王で、私は魔王の側近です。昔のように親しげにしては――」


 いいの、とリィーザの言葉を遮りアルシアは言葉を続ける。


「確かに立場というものがあるわ。でもね、私はそれ以上に親しみを大事にしたいの。だから、様とか敬語とかそういうの禁止!『心から信頼し、従わせる』と父が言ってたようにね」


 そう、アルシアにとってはリィーザは昔からの親友でありながら、姉として慕っていた部分もあった。同じようにリィーザもアルシアを本当の妹のように可愛がった時期があるのだ。むしろ親しくあるのが普通というべきなのだ。

 しかし、アルシアのその発言はいつも失言に終わる。リィーザにとってはアルシアは魔王という括りよりも可愛い妹という認識が高く、それを全て堅苦しい口調や態度で我慢し続けているリィーザの枷を外してしまうハメになるのだ。


「負けよ、負け!やっぱり私の妹は強くて可愛いな」


 途端、リィーザは抱きつき、頭を撫で、キスをしようしてきたのだ。抱きつきは不意打ちに等しくアルシアは防げず、頭を撫でられるのも防げず、キスは寸で止め、反撃してリィーザの抱擁から抜け出す。


「だからって抱きついたり撫でたりするの禁止!!恥ずかしいじゃない!それにこういうのはグレイスだけで間に合ってるの!!それだからリィーザはいつもいい人だって見つけられないのよ!!私にとってリィーザは親しくあるべき人だけど限度ってものもあるでしょ!?」


「はぁー可愛い」


 ダメだと諦めたアルシアはリィーザを王室から追い出した。それからしばらくして一人の青年が王室に入ってくる。見るからに爽やかな好青年でルックスもスタイルも良い美形な青年だ。


「リィーザが落ち込みながら歩いてたけど、アル何かした?」


「反省してもらう意味も込めて追い出してやったわ、それと訓練指導お疲れグレイス」


 グレイス――グレイス・ヴェリタス、アルシアが愛して止まない青年の名前だ。幼い頃のアルシアを助け、それを知った先代魔王が人間と共存しようと言い出した原因を作りだした本人でもある。

 そう、グレイスは元々魔界の住人ではなく地上界、つまるところの人間界の住人。

 アルシアが十歳の誕生日を迎えた時にアルシアの父親によって家族全員で魔界に連れてこられたのだ。そこから八年の月日が経ち、魔王と騎士という立場でありながら、夫婦という関係まで発展していた。


「……また暴走してたんだ。そうだ、アル。さっき男三人と会って扉の向こうで待たせてるけど入れて大丈夫?」


「えぇ、モースからの連絡で領地に入ってきた人間ね。いいわ、通してあげて」


「分かった」


 そして、王室の扉が開く。後に魔界へ来た男達は語る『鏖殺騎士』と呼ばれた魔王の騎士――グレイス・ヴェリタスの物語。

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