表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球で虐げられた《最強》闇魔術士は、異世界でエルフ嫁たちに愛される  作者: 銀翼のぞみ
三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/132

98話 Lv.3

 ――……ッ!!??


 舞夜が激しく動揺する。


 仕方あるまい。

 なにせ、人質の正体がアリーシャとリリアの母親だと言うのだから。


 そして、その言葉は本当らしい。


 隷属の首輪によって、虚ろになったマリンブルーの瞳。

 緩くウェーブはかかっているが、腰まであるプラチナの髪。

 そして浮世離れした美貌に、これでもかというほど実った2つの果実……。


 そう、彼女は最愛の奴隷たち……特にアリーシャに似ている。

 舞夜が感じた既視感はこれだったのだ。


『魔法使いよ。まずは、そのふざけた兵装を降ろして、こちらに来るのだ』


 そう言ってレイヴィアタンがナインヘッズのひとつを指差す。


「変な真似はするなよ? おかしな動きをした瞬間、この女の首を掻っ切ってやるからな」


 片や、カリス王子は、レオナの首へ短剣を押し付け、舞夜を脅す。


 ズドンッ……


 そんな音を立て、ナインヘッズたちが地に落ちていく。


 舞夜が、2人の言葉に従ったのだ。

 ヒュドラから降りると黙って2人のもとへと歩み寄る。


「あひゃひゃひゃひゃッ!! あれだけ猛威を振るっていた男が、女ひとり人質に取られただけで形無しだな! これでアリーシャとリリアは私のものだぁぁ!!」


 狂ったように笑うカリス王子。

 いや、実際のところ彼は狂ってしまっていた。


 恋い焦がれた2人の少女。

 それを掻っ攫った憎っくき相手を葬るために、国を裏切り、魔王と手を組み、ここまでの事態を引き起こしてしまったのだから……。

 以前、舞夜暗殺に失敗し、帝国から抗議が届き、追い詰められたのも今回の暴走の理由の1つだろう。


『では、死んでもらおう、魔法使い。……《蛇王剣》!!』


 レイヴィアタンが叫ぶ。

 すると手の中に、持ち手から鎖が伸びる毒々しい紫色の魔剣が現れた。

 その剣先からは、粘り気のある液体が滴り、足元に落ちるとジュワッと地面を溶かしてしまう。


 舞夜は動けない。

 自分が動けば、レオナの頸動脈に、カリス王子の持つ短剣が突き刺さってしまう――そんな未来を、魔素可視化の力が示しているからだ。


 深く俯き、彼の表情は伺い知ることは出来ない。


 そして……


 ザンッ――!!


 鋭い風切り音を立て、《蛇王剣》が舞夜の左胸部を突き抜けた。

 すると舞夜の体が、漆黒色に輝き出し……霧散した。


「やった……やったぞ! ついに……ついに……ッ!! ぎゃははははははは――!!!!」


 大敵である舞夜を、とうとう葬り去ることに成功した。


 その事実に、カリス王子が歓喜する。

 喜びのあまり、涙さえ流している。

 それほど、アリーシャとリリアに愛された舞夜を憎んでいたのだ。


『ば、馬鹿な……どういうことだ!?』


 だが、おかしい。

 舞夜を葬ったはずのレイヴィアタンが、ひどく狼狽している。


「ふははは! どうしたというのだ、嫉妬の魔王よ? 貴方の願いも、これで成就するというのに」


『我の……我の《蛇王剣》は猛毒の魔剣だ。敵に小さな傷をつけただけで、即、死に至らせることが出来る。だが、決して相手を消し去る力は持っていない……!!』


「――ッ!? ど、どういうことだ! だが確かに、あの小僧の体は消え去ったぞ!!」


 レイヴィアタンの答えに、カリス王子の体を言いようの無い恐怖が支配する。


 そして、2人の耳に、こんな声が木霊する。


 こういうことだ――と。


 バシュッ!!


 突如何もないはずの空間から一条の漆黒の閃光が迸った。


「あぎゃぁぁぁぁぁぁああああッ!!??」


 上がる悲鳴。

 見れば、カリス王子の片腕が、あらぬ方向に飛んでいく。


 その拍子に、レオナの体が放り出される。

 その体を……フワッと黒い霧の様なものが受け止めた。


 かと思えば。

 そのまま大きく距離を取り、彼女を安全なところまで連れていく。


『何が……何が起きている!?』


 レイヴィアタンが呻く。

 その前方で、霧は収束していく。


 そして――


「ふう……やっぱり、このモード(・・・)は、制御が難しいな」


 なんと、収束した霧の中から舞夜が現れたではないか。


 あまりの事態に、激痛で喚き散らすカリスのことも忘れ、レイヴィアタンが『なん……だと……ッ!?』と、目を剥く。


 そんな様子を尻目に、舞夜は虹色の《黒滅閃》を発動。

 レオナの隷属の首輪を解除する。


「大丈夫ですか?」


「体が自由に……あなたはいったい……?」


 虚ろな瞳でレオナが尋ねる。


 その意識おぼろげな様子を見るに、今までのやりとりを覚えていないらしい。

 よほど、隷属魔法が強くかかっていたのだろう。


「ぼくは、舞夜と言います。あなたの娘、アリーシャとリリアの……まぁ、旦那みたいなものです」


「まぁまぁ、ずいぶん可愛らしい旦那様なのね〜。それに、この状況……私にとっても舞夜ちゃんは救世主様みたいね?」


 ちょっと気恥ずかしげに答える舞夜に、レオナは、おっとりした様子で、そんなことを言う。


 舞夜は、「話は後です、下がっていて下さい」と言い、レオナを庇うような位置取りをする。


『魔法使い、貴様いったい何をした!?』


 驚愕から回復したレイヴィアタンが、剣を構え臨戦態勢に入ったからだ。


 ちなみレイヴィアタンの疑問だが……

 その答えは、人体の“魔素化”だ。


 舞夜は“魔素察知”の他に、新たな力を得ていた。

 今の彼には、レベルに分けた3つの魔導士モードがある。


【Lv.1】

 魔素可視化による超近未来予知。


【Lv.2】

 マモン戦で目覚めた、体外の魔素を操ることが出来る、魔法の遠隔発動(この能力を擬似的に再現する為にヒュドラは作られた)。


【Lv.3】

 自分の体を魔素レベルに分解する、魔素化。

 魔導士モード発動中、1回だけではあるが魔素となることで、あらゆる攻撃を無効化することが出来る。


 といった具合だ。


 今回の場合。

 レオナを安全・確実に助け出す為に、敵の脅しに屈服したフリをし油断させ、レイヴィアタンの《蛇王剣》が胸に突き刺さるその瞬間に、Lv.3を発動することで見事に救出して見せたのだ。


 だが、そんなことを敵に教えてやる義理はない。


 舞夜は地に落ちたナインヘッズを起動。

 そして――


「《黒滅閃》!!」


 9つのユニットから、一斉に閃光を放つ。


『甘いわ! 《ドラゴニック・フォース》!!』


 しかし、レイヴィアタンは、かつてマモンも使っていた魔法無効化スキル、《ドラゴニック・フォース》を発動。


 直撃するはずだった《黒滅閃》を、ことごとく無効化してしまう。


『まだ終わりではない! こうなったら、我の本当の姿を見せてくれる!!』


 直後――


 レイヴィアタンの体が紫色の光に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ