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地球で虐げられた《最強》闇魔術士は、異世界でエルフ嫁たちに愛される  作者: 銀翼のぞみ
三章

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94話 新兵器“ヒュドラ”出撃!!

 ブオォォォォォン――ッ!!!!


 帝都の城壁。

 その南門から、そんな爆音とともに漆黒の影が、とんでもない速度で飛び出す。


 よく見れば影には、それに跨る人影の様なものが見える。


 そう、舞夜だ。


 そして彼が駆る影だが……


 漆黒の装甲。

 前後についた馬鹿みたいな太さと大きさを誇る2つの車輪。

 そして後方には左右についた白銀の長細い物体……ブースターから炎が勢いよく噴出している。


 その名も、複合魔力駆動式超大型二輪装甲モービル――“ヒュドラ”。


 地球で言う大型二輪車よりも、ふた周り以上の大きさを誇る機動兵器だ。


 巨大な金属の塊が、闇魔力によって駆動するタイヤと、後方のブースターから出る風と炎の魔力によって、乗り物の限界を超えた速度をもって爆進していく。


 これが、この数ヶ月、舞夜が孤島にてジャックたちアンデッドと開発していた代物だ。


「見えた」


 風の魔力を展開し空気抵抗を緩和しながら爆進すること少し――


 前方に大軍の影が見えて来た。


 情報どおり、左翼にアンデッド。

 中央に魔族。

 そして、右翼に隷属の首輪が嵌められたエルフの女戦士たちの姿が確認できる。


『なんだアレはッ!!』


『馬……なのか!? いや、あんな速度はありえんぞ!』


 姿を確認したのは敵の軍も同じ。

 ヒュドラを駆る舞夜の姿を見て、驚きや狼狽の声が上がる。


『ええい、怯むな! 見たことのない馬だが、敵は単騎だ。一斉放火で仕留めろ!!』


 魔族のひとりが指示を飛ばす。

 どうやら敵の司令塔のひとりの様だ。


 弾かれた様に魔族どもが矢を番え、詠唱を始める。

 そして、矢が、火球が、氷の槍が一斉に舞夜へと降り注ぐ。


 対し、舞夜も高らかに、こう叫ぶ。


「“ナインヘッズ”、展開!!」


 するとヒュドラの装甲が一斉に、パーンッ! と音を立てパージした。


 装甲は9つに別れ、空中に離散。

 なんと、そのまま降りかかる矢や魔法の前に高速で移動し、攻撃を全て防いでしまう。


『な、なんだあの物体は……!?』


『まるで生きているみたいに、あのガキを守ったぞ!』


 ヒュドラに施された装甲――ナインヘッズは、ミスリルとヴィブラウムでできた、超合金製の展開装甲だ。


 舞夜はそれを卓越した魔法操作技術で、並列操作。

 自在に動くオールレンジ防御ユニット群として扱うことに成功したのだ。


 まさかの“遠距離タンク”の誕生である。


 だが、ヒュドラと舞夜の実力はこんなものではない。


「今度はこっちの番だ!」


 そう言って、9つのうち4つのナインヘッズを自分の周りに残し、あとの5つをエルフたちのいる方へと飛ばす。


 そして――


「今解放してやる! 《黒滅閃・改》!!」


 言うのと同時。

 5つのナインヘッズから、虹色(・・)の《黒滅閃》が斉射。


 その全てがエルフたち首輪(・・)に命中する。


 すると――


 パキンッ……


 乾いた音とともに隷属の首輪が外れたではないか。


「体が……体が自由に動きますなのです!!」


「ほ、本当だ! いったいどういう……」


 ナタリアを始め、自由を奪われていたアマゾネスたちが、一斉に喜びの声を上げる。


 その間にも舞夜は魔法の手を緩めず残りのエルフたちを解放。

 敵の攻撃は4つのナインヘッズを縦横無尽に操作して防ぎ、それでも対処しきれないものは《黒ノ魔弾(ブラック・バレット)》などを発動し、全て撃ち落としていく。


 ちなみに、隷属魔法からエルフたちを解放できたわけだが……


 舞夜は、この数ヶ月間で、魔導士の力の鍛錬も怠らなかった。

 その中で、一度、アリーシャとリリアの隷属の首輪を、“魔素可視化”の力で解析し、隷属魔法の構造を完全に把握。

 その解き方までも解析してしまったのだ。


 そして生まれたのが、今も超高速で空中機動するオールレンジ攻撃ユニットと化した、ナインヘッズから放たれる、虹色の《黒滅閃》……というわけである。


 ナインヘッズから魔法が放てる仕組みは、あらかじめミスリル部分に“魔法付与”していたからだ。


 尚、せっかく手に入れた力だが、アリーシャとリリアが猛反対するので、彼女たちの奴隷解放には至っていない。


「なぁ、アンタ! 誰だか知らないが助けてくれてありがとう!」


「私たちも戦うのですッ!!」


 解放されたアマゾネスたちが舞夜の元へと集う。

 彼に加勢しようと闘志を燃やすが……


「いや、これから大技(・・)を放つ。ここは危険だから都市に向かって逃げてくれ」


 と、舞夜はそれを拒否。

 アマゾネスたちに撤退を指示する。


「これだけの力……私たちを逃す為の嘘ではなさそうなのです」


「そうだね、なら助けてもらっておいて、申し訳ないが頼みがあるんだ……」


 舞夜の力に、そう判断したナタリアたちが、さらに声をかける。


 自分だけでなく、彼女たちを守るためにもナインヘッズをフル回転で操作し、思考回路が擦り切れそうな舞夜は「手短に!」と先を促す。


「私たちの戦士長がまだ敵に囚われているのです! なんとか救ってあげて欲しいのですっ!!」


「まだエルフが……分かった。安心しろ、必ず救い出してやる。だから早く逃げるんだ!」


 ナタリアたちの悲痛な訴え。

 舞夜は、彼女たちを安心させる為に不敵な笑みを浮かべ、それに応える。


 するとアマゾネスたちは、ぽうっと頬を染め、誰もが「はい……」と、しおらしく返事をし、一礼すると都市の方へと駆けていく。


「あの子……可愛い顔して、とっても男らしいのです……」


「ああ、惚れちまったよ……」


 ナタリアたちの間で、そんな会話が交わされるが、目の前の攻防で精一杯の舞夜の耳には届いていない。


 エルフたちが逃げ切る時間稼ぎの為に、舞夜はナインヘッズを従え、ヒュドラで敵の中央へと突撃。


 たまったものではないと、左右に逃げ出す魔族とアンデッドに、自身からは《黒ノ魔槍(ブラック・ジャベリン)》、ナインヘッズから《黒滅閃》などを放って駆逐していく。


 そんな中でも後方から攻撃の手は止まらない。


 魔法が降り注ぐが、それらは防御用に展開したナインヘッズで防ぐか、その言葉のとおり、血と汗滴る努力の上で会得した操縦技術でドリフト・スピン・スライディングすることで、全て回避して見せる。


「ば、化け物か! あいつは……!?」


 魔族のひとりが、そんな言葉を漏らすが、お前たちにだけは言われたくないというものである。


 だが、その言葉はある意味正しいのかもしれない。

 何故なら彼らは、このあと舞夜が放つ一撃で、その半数近くを失うことになるのだから……

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