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地球で虐げられた《最強》闇魔術士は、異世界でエルフ嫁たちに愛される  作者: 銀翼のぞみ
三章

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83話 醜き者の末路

 帝城……その大きさは約40メートルくらいだろうか、石造りの白き姿が他の建物同様にオレンジの光でライトアップされた姿は実に美しい。

 その周りには堀があり、城へ通ずるのは吊り橋のみとなっている。

 城自体も外敵からの守りはバッチリな様だ。


『くすっ、まさか暴食の魔王たる、この私が堂々と帝国の城に入れる日が来るなんてね……』


 舞夜の肩の上でベルゼビュートが舌ったらずな口調で、感慨深げに言葉を漏らす。


「ふふっ、ベルゼビュートちゃんの頑張りが報われて良かったですね」


「……ん。頑張った」


「いい子いい子ですの」


『ねぇ、あなたたち? 私、一応、魔王なのよ? ちょっと子供扱いが過ぎるんじゃないかしら?』


 小さな子供をあやすようなアリーシャたちの口ぶりに、頬を膨らませ「怒ってます」と主張するベルゼビュート。


 しかし、その声色はどことなく嬉しそうだ。

 その証拠に小さなあんよをプラプラさせている。


 ——ああ、白くてすべすべした太ももが頬に……。


『あら? 魔導士様ったら、さっきはあんなこと言ってたくせに、やっぱり私の体に興味があるの?』


「ち、違っ……! それより、ぼくの思考を口に出すのはやめてくれ!」


 とっさに意識してしまったベルゼビュートの体の魅力。

 それをバラされそうになり焦る舞夜。

 思考を覗くのは百歩譲って許すとしても、頭の中で考えたことを周囲に漏らすのは勘弁してほしいというものだ。


「さすがご主人様ですっ!」


「……ん。幼女もイケる」


「レベル高すぎですの!」


 自分たちの恋人が、幼女性愛もイケるかもしれないという疑惑がかかったというのに盛り上がるアリーシャたち。


 舞夜は「違うから!」と抗議するだが……


『違くないでしょ、魔導士様? だって、私の感触を楽しんで……』


「《黒ノ魔弾(ブラック・バレット)》ぉぉぉぉ!!」


 これ以上はまずい。

 そう判断し舞夜は頭上のベルゼビュートに魔弾を放つ。


 予告なしに襲いかかった闇魔力による快楽に、ベルゼビュートは、『んひぃぃぃぃ!?』と絶叫。


「ご、ごほん! ちょっといいか?」


 とそこへ。

 ジュリウス皇子がわざとらしく咳払い。

 真面目な彼には、これらの会話は少々刺激的過ぎたのだろう。


「どうしました、ジュリウス?」


 だが、幼女性愛者の疑いをかけられそうになっていた舞夜には助け舟。

 よくやったと心の中でガッツポーズし先を促す。


「せっかくの機会だ。これからお前たちをヘースリヒに会わせたいと思う」


「「「……ッ!!」」」


 ジュリウス皇子の言葉で舞夜とエルフ嫁3人の表情が一気に強張る。


 第二皇子ヘースリヒ——。

 かつてシエラを我が物にしようと、舞夜の暗殺を企みアルフスの王子・カリスと共謀し、先代勇者・アカツキと賢者・コンを送り込んだ黒幕……その罪が調査団の調べにより、事実と判明したのは記憶に新しい。


「ヤツの処分は王位剥奪に生涯を幽閉され過ごす事が、つい先日決まった。つまり、今後ヤツの身に何が起きようと誰も咎めはしないわけだ……。ここまで言えば分かるだろ?」


 ジュリウス皇子の言葉に舞夜は、なるほど……と内心呟く。

 つまり、弟であるヘースリヒの始末を舞夜やシエラに任せても構わないと暗に告げているのだ。


 どうするかは会ってから判断するといいと言って、ジュリウス皇子は舞夜たちを城へ招き入れる。


 一行を出迎えたのは豪奢なエントランスと使用人たち。

 夜更けというのといきなりの訪問だったのもあり、その人数は少ない。


 だが、さすが帝城。

 メイドの顔も立ち振る舞いもレベルが高い。


 ジュリウス皇子の話によれば、ここで働くメイドのほとんどは貴族の娘らしい。

 そんな身分の娘がメイドなんてしている理由は、下手な下級貴族のもとに嫁ぐよりも、ここで働くほうが手当が良かったり、或いは皇族の誰かの妾の立場を狙っていたりと様々だそうだ。


 そして、綺麗に飾られた絵画や壺などの美術品が並ぶ廊下を抜け、上階へと続く螺旋階段を登ること少し、城の最上階、その最北部分の一室の前にたどり着く。


「さぁ、開けるぞ」


 ジュリウス皇子が使用人に用意させた鍵を重厚な扉の鍵穴へと差し込み、扉を開ける。


 すると——


「ぶ、ぶひっ? あ、兄上……!」


 ジュリウス皇子を見て、声を漏らす人物。

 丸々と太った身体に焦点の合わない双眸。

 髪はベタつきブヒブヒと鳴くその姿はなんとも醜い……。


 ——こいつ……本当にジュリウスの弟なのか?


 その豚にも劣る容姿に、舞夜はそう思わずにはいられない。


「相変わらず醜いですの」


 舞夜の隣でシエラも顔を顰める。


「し、シエラ!? わ、私のシエラ!! ぶひぃぃぃぃぃ!!」


 愛しいシエラの姿を見つけたヘースリヒが大声をあげ駆け寄って来る。


 少女の名を呼びながら「ぶひぃ」とは……実に“キモい”。


「寄るな! このクズが!!」


 ジュリウス皇子が怒鳴り声とともにヘースリヒの顔面にガントレットに包まれた拳を見舞い、地面に叩きつける。


 ヘースリヒは「ぶびゃぁぁぁ——!?」と叫びをあげ悶絶。

 鼻から血をシャワーのように噴き出し、その口からは歯が数本飛び散った。


「いいかヘースリヒ。もし勝手に動けば次は、腕と足の骨を折る。もちろんハイポーションはやらんからな?」


「は、はい、兄上……」


 ジュリウス皇子の脅しに、鼻を押さえながら答えるヘースリヒ。

 その姿に満足げに頷き、ジュリウス皇子が舞夜たちに話しかけて来る。


「さぁ、お前たち、こいつをどう処分したい?」


「はい! シエラにいい考えがありますの! 奴隷にして、娼館に売り飛ばすというのはどうですの? たしかこの帝都にはそういった(・・・・・)場所もあったはず……」


 舞夜がどうしたものかと思案しているとシエラがそんなことを言い出す。


 なかなかにえげつない考えだ……。

 つまり、デブ専のガチムチ兄貴たちが通うような店に売りつけ、そこで無理やり男娼奴隷として働かせようというわけである。


「ふむ……じゃあ、それでいくか?」


 仮にも自分の弟だというのにジュリウス皇子も乗り気だ。

 いかに、この無能で醜い、腐りきった性根をしたヘースリヒを嫌っていたのかが分かる。


「ぷぎゃぁぁぁぁぁ! 嫌だ! そんなの嫌だぁぁぁっっ!! 私はシエラと……シエラとお互いに初めてを迎えるんだぁぁあっぁ!!」


 再びヘースリヒが騒ぎ出す。

 当然、そんな魔の巣窟に奴隷として売り出されると聞いて「はい、分かりました」とはなるはずがない。


 黙らせるためにジュリウス皇子が制裁を加えようとするが……


「あはははは! 馬鹿なこと言わないで? 私の初めては、もう愛しの舞夜様に捧げたの! 今だって毎晩……ね?」


 心底おかしいといった様子でシエラが笑い声をあげる。

 そしてそのまま、ヘースリヒに見せつけるように舞夜へとしなだれかかり——


 くちゅ……。


 キスをする。

 深く、そして音を響かせ舌を絡ませていく。


 自分の口に舌をねじ込んでくるシエラ。

 彼女の普段とは違う喋り方、そして妖艶な雰囲気に舞夜は完全に飲み込まれ、されるがままになってしまう。


「ああ、ああ……!? そんな!! ぶひゃぁぁぁぁぁぁぁ——!!??」


 自ら乱れ始めるシエラ。

 そしてその相手、目の前の少年が自分が殺そうとした人物、舞夜だった。

 そしてもう既にシエラの初めては彼に……


 その事実に気づいたヘースリヒは髪を掻き毟りながら、完全に発狂してしまう。


 この数日後、彼はシエラの要望どおり、隷属魔法により奴隷とされ、この帝都で一番ハードなプレイが可能と、男たちの間で大人気の娼館、“ガチムチ・フレンズ”に売り飛ばされることになる。


 そして遠くない未来、娼館指名率No.1のフレンズになったとかならなかったとか……。


 これがハーフエルフの美少女、シエラという高嶺の花に恋い焦がれて暴走した、醜き男の末路である。

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