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地球で虐げられた《最強》闇魔術士は、異世界でエルフ嫁たちに愛される  作者: 銀翼のぞみ
二章

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73話 新兵器と破滅の息吹

 ——この声……ジャックか?


 ——ふほほほ! そのとおりですぞ!


 頭の中に響いた声。

 それは孤島にいるはずのジャックのものだった。


 舞夜が不死者の王となったことで、配下であるアンデッドたちは彼の頭の中のイメージを魔力を通して読み解くことが出来るようになったのは記憶に新しい。


 それから時間が経った今、その能力はさらに強さを増し、遠く離れた主君の心情を感じ取ること、そして遠距離での念話が可能になった。


 そんな内容がジャックから伝えられる。


 ——い、色々つっこみたいところだけど、どういうことだ? 任せてほしいって……。


 ——ふほ! 実は丁度アレ(・・)の試作機が完成したのですぞ!


 ——ハハ! 魔族の大軍が侵攻してるらしいし、試運転には丁度いいよネ!


 舞夜の質問に開発していた武器、その試作機が完成したと伝えるジャック。

 さらにそこへ、カブも念話に割り込んでくる。


 ——そうか! アレが完成したのか!


 舞夜の目が輝く。

 それが本当であれば、魔族の大軍が相手でろうとも……。


 だが、ここでひとつの問題があることに気づく。


 それは距離だ。

 この都市から孤島までは少しばかり距離がある。


 舞夜が防具に施した《飛翔》の能力を使っても十数分かかってしまうし、そもそも今の舞夜は魔力操作がうまくできないので、迎えに行くこともできない。


 ——ふほほっ! それでしたら問題ありませんぞ!


 ——ウン! もうすぐそっちに着くからネ!


「は?」


 間抜けな声をあげる舞夜。

 そんな彼の上空を5つの影が通り過ぎて行った。





 北の街道——。


「ぐうぅ!? このままでは……!」


 ギガントシールドを展開したサクラが、魔族の猛攻を受け、苦しげな声を漏らす。


『まだ終わりじゃねぇぞ! 喰らえ《ファイアー・ボール》!』


『こっちもだ! 《アイシクル・ランス!》』


 猛る火球。

 凍てつく氷の槍。

 魔族の攻撃がさらに彼女を襲う。


 その周りを見れば彼女の同僚である、セドリック、ダニー、ハワード、それにケニーにマリエッタはもちろん、他の隊の騎士たちも苦戦を強いられているのが確認できる。


 だが、そんな中で、一際激しさを増す一角があった。


「はははは! こんなもんかよ、帝国勇者団とやらはよ!?」


 高笑いするのは、1人の青年。

 その手には鈍色に光るハンドガン……そう、アレックスだ。


 対峙するのは、勇大と剛也の2人。

 だが、弾丸による連撃を、アーティファクトで展開した神聖属性の結界で防ぐだけで精一杯といった様子だ。


「なんなんだこいつは!? 銃を召喚するスキルなんて聞いたことないぞ!」


「それになんだって、人間が魔族側についてやがる!!」


 アレックスの固有スキル《ガンズ・サモン》に驚愕する勇大。

 剛也は人間が魔族に与みしていることに悪態を吐く。


「もう! なんでこんな時にジュリウス殿下は、帝都に戻っているのよ!」


「はわ! 危ない凛ちゃん!」


 さらに別の場所。

 苛立ちを覚える凛に、敵の攻撃に気づき注意を促す桃花。


 凛の言うとおり、帝国最強の勇者、ジュリウス皇子はここにはいない。


 アリーシャたちの事情聴取を終え、全ての証拠が揃ったことで、弟のヘースリヒを裁く為に帝都に戻ってしまっていたのだ。


 彼が不在の今、勇大たちにとって、小国とはいえ一国を滅ぼすほどのアレックスの相手は荷が重すぎる。


 他の魔族の強さも然り、戦況は都市が劣勢だ。


「あぁ、洒落臭い! おい、半人前ども! 俺の本気を見せてやる!」


 優勢ではあるが、目的である舞夜が一向に姿を見せないことに、アレックスは痺れを切らした。


 その言葉に勇大たちは「まだ本気を出してなかったのか!?」と驚愕の声を漏らす。


「《ガンズ・サモン》!!」


 カッ! とアレックスのもう一方の手が光に包まれると、新たな拳銃が現れた。


「喰らいなぁ!!」


 ドパン! ドパン! ドパンッ!!


 二丁拳銃となったことで、その攻撃がさらに激しさを増す。


「くそっ、まずい……!」


 声を漏らす勇大。

 見れば光の結界が点滅し始めた。

 度重なる銃撃に強度が限界を迎えたのだ。


 そして——


 パキン……ッ。


 乾いた音とともに結界は砕け散った。


「くくく……これで終わりだぁ!!」


 アレックスの銃口が2人の眉間を捉える。

 そして引金を引こうとしたまさにその時——


 ふほほほほ!!


 上空から笑い声が響き渡る。

 それと同時、ダン! と5つの影が両者の間に落ちてくる。


 ジャックにカブ、それに3体のスケルトンだ。

 そして、それぞれ黒光りする長大な金属製の物体を手にしている。


「アンデッドが空から降ってくるだと!? いや、それよりその装備、まさか……!?」


 ジャックたちの登場、そしてその手にした武器の姿を見て、アレックスが目に見えて狼狽する。


 そして慌てて発砲。

 その弾がアンデッドたちに直撃するが……


 カンカンっ。


 そんな音を上げ、弾かれてしまう。


 アンデッドたちは肉や臓器を持たない。

 ゆえに弾丸の1発や2発ではどうともならないのだ。


『ふほほほほ!!』


『今度はこっちの番だネ!』


「待っ——」


 ズガガガガガガガガ——!!


 アレックスの「待ってくれ」の言葉を轟音がかき消した。

 ジャックとカブの武器が激しい閃光を散らしながら振動する。


 音の正体は発砲音。

 閃光の正体はマズルフラッシュ。


 アレックスが狼狽する様な武器の正体……その名も、“闇魔力駆動式弾丸連続射出機”……要は舞夜の闇魔力を動力とした“ガトリングガン”。


 これこそが、舞夜が孤島でジャックたちに開発させていた代物だったのだ。


 ただの銃でガトリングガンに対抗出来るはずもなく、あれ程に猛威を振るっていたアレックスは一瞬で消し炭と化すのだった。


『さぁ、お前たち! 魔族どもを蹂躙するのですぞ!!』


『『『アァー……!!』』』


 ジャックのかけ声で3体のアンデッドも魔族の固まっている方角目掛け、一斉に弾丸を射出する。


 ズガガガガガガガガッ!!

 ズガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッ!!!!


 幾千ものマズルフラッシュ、そして轟音が魔族に襲いかかり、蜂の巣と変えてゆく。


「アンデッドが魔族を……?」


「ああ、それになんだあの武器は……」


 次々と魔族だけを狩り尽くすアンデッドの姿に、戦いの参加していた騎士や冒険者たちが呆然と呟く。


「何をしている、今が好機だ! 総員、残った魔族にかかれ!」


 そんな中でも冷静さを失わなかったサクラが、周りに指示を飛ばす。


 かくして、魔族は殲滅されるのだった。





「撤退! 撤退よ〜!!」


 戦場から数キロ離れた場所で、戦況を見守っていた怠惰の魔王・ベルフェゴールが配下の魔族にへ向け大声をあげる。その表情に怠惰の象徴たる気怠さは一切感じられない。


 ——ただのアンデッドどもが、なんて戦力を……! あんなもの喰らえばたとえ私であっても……。


 ベルフェゴールは自分の右腕、アレックスですら手も足も出なかった、ガトリングガンの威力に恐れを抱いたのだ。


 だが、その指示は無駄に終わることになる——。


 ドシン……! ドシン……ッ!!


『なに!? この揺れは〜!?』


『ベルフェゴール様! あれを……あれをご覧下さい!』


 大地の揺れに驚くベルフェゴールに、配下の魔族がある方向を指差す。


『なによ……あれ〜……』


 目を剥くベルフェゴール。

 その視線の先には、比べてしまえばドラゴンさえも小さく見えてしまうほどの存在……蒼黒の体に鋭い牙の覗く顎門、そして鋭い眼光で彼女を睨みつけ、ゆっくり、ゆっくりと距離を詰めてくるインペリアルの姿が——。


『ふむ。もしやと思い来てみれば、やはり魔王が隠れておったか……。魔王よ! よくも我の愛すべき者の大切な場所を奪おうとしてくれたな!!』


 インペリアルが怒りの咆哮をあげる。

 彼女はジャックたちの報告を聞き、魔族が大軍で押し寄せるということは、どこか離れた場所に魔王がいるのではと考え、海を越えてやって来たのだ。


 ちなみにジャックたちが、あの短時間でこの都市にたどり着くことができたのかだが……驚くなかれ。なんとインペリアルが孤島から、その巨腕で彼らの体を鷲掴みにし、投げ飛ばしたからだ。


『ひぃぃぃ!?』


『落ち着くのよ〜!! この馬鹿者!』


 見たこともない大怪獣の怒り。

 それに怯え、悲鳴をあげる配下の魔族に、ベルフェゴールが喝を入れる。


 ——確かにあれはとんでもない巨体よ〜。でも、これだけ距離があれば撤退は容易……。


 そう判断してのものだ。

 だが……


『我の舞夜に害を為そうとした罪……万死に値する!』


 怒りの言葉とともに、インペリアルの背ビレに青白い光が灯っていく。

 そして——


『《アトミック・ブレス》!!』


 轟————ッッ!!!!


 巨大な顎門から、蒼黒色の熱戦が放たれた。


 それは全てを破壊する原子の息吹。

 圧倒的な熱量を以って大地を、魔族を次々と消しとばしていく。


 ——ああ、魔神イルミナス様……。


 そして、死を覚悟したベルフェゴールは最期に自身の仕える魔神の名を心に浮かべ、破滅の光の中に飲み込まれていくのだった。

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