67話 製造計画
『ふほっ。ところで王よ、どのような武具をご所望ですかな?』
ジャックが舞夜へ尋ねる。
王という呼び方……本気で舞夜を崇めているようだ。
自分が王などと呼ばれて恥ずかしく思う舞夜だが、アンデッドたちの嬉しそうな様子に甘んじて、その呼び方を受け入れる。
それより、ジャックの質問だがもっともだ。
造ってもらうにしても、そのイメージを伝えなければ作りようがない。
できればこの世界には存在しない様な近代武器が欲しいと思う舞夜だが、どう伝えたらいいものかと悩む。
と、そこへカブが話しかけてくる。
『ネェネェ、王様。イメージの伝え方に悩んでるの? だったら魔力を放出しながら要望をイメージしてみてヨ。ボクたちはそれでイメージを読み取れるから』
「え? そんなことできるの?」
『舞夜は不死者の王になって、こいつらと魔力による絆が出来たのだから当然だろう』
驚く舞夜に、そんなことも知らんのかという顔で説明するインペリアル。
てっきり不死者の王なんて名前だけの地位だと思い込んでいた舞夜は「なッ!?」とさらに驚くのだった。
まぁ、本当はこんなものではないのだが……。
それはさておき。
早速、舞夜は自身の闇魔力を放出し、イメージを頭に描く。
それは、地球のとある武器。
圧倒的破壊力、連続回転機構、装填機構……男なら誰もがロマンを抱く代物だ。
『な!? なんですぞ、この無茶苦茶な武器は! よもやこんなものが存在するとは……!』
『スゴイ! スゴイよ王様! でも、こんなもの本当に作れるのかな……』
舞夜のイメージした武器に驚愕するジャック。
そして、はしゃぎ出すカブ。
だが、その勢いはすぐに消えてしまう。
この世界には存在しない武器、さすがに無理があったのだろうか。
『カブ! 何を言っておる! 出来る、出来ないの問題ではない。やるのですぞ! 王よ、もう少し細かいイメージ下され!』
だが、ジャックは諦める気は無いようだ。
それもそのはず、なにせ自分を救ってくれた主からの初めての命令。それを「出来ませんでした」などと言い諦めるのは、誇りある不死者の王の家臣としての名折れなのだから。
「そういえば、ジャックたちは食事はどうするんだ?」
『ふほほ! アンデッドゆえ、必要ありませんぞ! ただ、ご褒美に王の魔力を分けて頂けると……』
『すごく助かるよ! ボクたちにとって王様の闇魔力は癒しの力だからネ!』
——なるほど、生者への憎しみから解放することのできた、ぼくの闇の魔力はみんなの癒しになるってことか。それなら……。
『ふほっ。王よ、そんな大きなミスリルを持ち出して、どうするつもりですぞ?』
舞夜が洞窟からミスリルの塊を持ち出すのを見て、ジャックが不思議そうな顔を浮かべる。
「まぁ、見ていて。はぁぁぁぁ……!」
そう言って舞夜は大量の魔力を放出。
その全てをミスリルへチャージしていく。
こうしておけば、アンデッドたちがいつでも闇魔力を得ることが出来ると考えたのだ。
そして、それを伝えるとアンデッドたちは大喜び。
これでやる気もさらに湧くというものだ。
「そういえばインペリアルも、普段食事はどうしてるんだ?」
『我も基本的には必要ない。先日、お前から闇魔法をもらったおかげで、あと1万年は体内の“アトミック・ドライブ”で活動可能だ』
「い、一万年!?」
本当にこの怪獣娘はとんでも生物である。
アトミックドライブ——ということは、まさか核分裂で活動しているのでは……だとしたら彼女は自然界でもっとも進化した生物……。
だが、いったいどんな種族なのか舞夜が聞いても憶えていないらしく、真相は闇の中だった。
『それよりずるいぞ舞夜! アンデッドとばかり戯れおって……我とも戯れるのだ!』
「おい、やめろインペリアル! ああっ、もう……」
アンデッドたちと魔力で繋がる舞夜の姿に、インペリアルは嫉妬したようだ。
ガバっ! と彼に襲いかかり、前回この孤島に来た時のように抱っこしてしまう。
そして、その豊満なバストに顔面が埋もれる。
柔らかくも張りがあり、アリーシャに負けず劣らず。
つい、ムニュムニュ、スリスリと甘えたくなってしまうのだった。
『ふほほ! 我らの王は優しい上に、なんとも愛らしいですぞ!!』
『ウンウン、最高だネ!』
そんな舞夜の様子を覗き込み沸き立つジャックたち。
エルフに始まりインペリアルにアンデッド……つくづく異種族に愛される少年だ。
その後は、武器の製造とアンデッドたちの住処は洞窟の中にすると決め、開発計画の相談を開始した。
◆
「ふぅ、すっかり遅くなっちゃったな」
家へ続く路地を舞夜は小走りに駆けていく。
インペリアルやジャックたちと計画を話す内に、つい盛り上がってしまい、気づけば夜だ。
遅くなることを告げてなかったので、アリーシャたちが心配しているだろうと急ぐ。
「ただいま! 遅くなって、ごめん——」
「「「お帰りなさいませ! そして、不死者の王へのご就任おめでとうございます(ですの)!!」」」
——ッ!?
ドアを開け、遅くなったことを詫びる舞夜。
そんな彼を、不死者の王と呼び、アリーシャたちエルフ娘3人が下着姿で跪き出迎えた。




