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5話 冒険者登録

 数分後、なんとか(表面上は)落ち着きを取り戻した舞夜たちは、諸々の手続きを始めようとしていた。


「ぼ、ぼくは舞夜といいます。彼女はアリーシャ、一応ぼくの奴隷ということになってます。あの……先ほどはすみませんでした。アーナルドさん」


「んも~う! アナちゃんって呼んでって言ってるじゃないっ、照れ屋さんなんだからっ。もう気にしないで! ……でも、次に変な事言ったらお・し・お・き。あなた達の肛○括約筋がズタズタになるから覚悟するのよん?」


 ——逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ!!


 再び泣き出しそうになるのをなんとか抑え込み、要件を告げる。


「き、今日は、盗賊の討伐成功の報告と冒険者登録。それと素材の買取(・・・・・)のお願いに来ました」


「盗賊ねん……どこで出たのかしらん?」


 盗賊と聞いた瞬間、アーナルドの表情が真剣なものに変わる。


「エリオット村です。確か名前はリーサルバイトと……」


「リーサルバイトですって!? ということは相当な被害が出たはずね……。誰が倒したのかしら?」


 驚いた声を上げるアーナルド。

 その声に周りの冒険者達の注目が集まる。

 これにより、リーサルバイトがいかに危険視されていたのかが分かる。


「リーサルバイトでしたら、ご主人様が1人で壊滅させてしまいました。黒い魔法の槍でビッグファングを3体とも一撃。残りの構成員も黒い魔弾で、それも無詠唱で……」


 アーナルドの問いに、アリーシャが囚われていた自分が、この目で見ていたから間違いない。と答える。


「嘘だろ!? あんなガキがビッグファングを一撃!? まさか“上級魔法スキル”持ちか?」


「いや、黒い槍や魔弾なんて聞いたことがねえ。“古代魔法”……いや、まさか“固有魔法”……なのか?」


「それより無詠唱って言わなかったか!? それが本当なら“無詠唱スキル”を持ってることになるぞ!」


 その言葉に、ざわめき出す冒険者達。


 この世界おいて、魔法には属性の他に大きく分けて“下級魔法”、“中級魔法”、“上級魔法”、“超級魔法”、その上に今はほとんど使い手のいない“古代魔法”。

 そして、世界にただ1つしか存在しない“固有魔法”があり、そのどれもが“スキル”と呼ばれるシステムによって発動可能となっている。


 更に発動には、魔法名を叫ぶ必要があり、そうでない場合は“無詠唱スキル”といものが必要だ。


 ビッグファングを一撃で倒すには、上級魔法でないと不可能という意見が一般的。ゆえに、舞夜はそれ以上の魔法スキルと無詠唱スキルの使い手のであると勘違いされたのだ。


 舞夜の魔法はスキルなどではなく、鍛錬により会得した、全く別の技術体系なのだが……。


「ふふんっ」


 驚く冒険者達を見て、何故かアリーシャが得意げに笑う。

 自分の主人が強者として認識された事が嬉しかったようだ。


 耳をブンブンと上下に動かし、仁王立ち。

 その際に彼女の爆乳がぶるん! と突き出され、それを見た冒険者達が「おうふっ」と前屈みになる。


 そんな様子を横目で流し、自分もポジション(・・・・・)を直しながら、舞夜は話を続ける。


「今はエリオット村に捕まえてあります。それとこれを村長から……顛末が書いてある手紙です」


「分かったわん。すぐに確認して、職員を村に向かわせるわねん。これが本当なら、すごい報奨金が出るから楽しみにしててねん♪」


「それなんですが、半分は村に渡してもらえませんか?」


「あらん、本当にいいの?」


 アーナルドが意外そうな顔をする。


 舞夜は村を出る際、死んだ人たちの埋葬を手伝っていた。


 そこで気づいたのだ。

 もうこの村には、若い男がほとんど生き残ってないのだと。

 働き手がなくなっては、金がいくらあっても足らない。

 なので、報奨金の半分を分け与えると決めたのだ。


「じゃあ次は冒険者登録ねん。登録は舞夜ちゃん1人でいいのかしらん?」


「はい。ぼくだけで——「2人でお願いします」


 言う途中、アリーシャの声によって遮られた。


 この人は何言ってんの?

 エロフどころか駄エルフだったか? と考えを巡らす。


「ご主人様、わたしは故郷で戦士として働いてました。もともとエルフは戦闘民族ですし、なにより私は“加護持ち”です。お任せください」


 戦闘民族と聞いて、元◯玉や汚い花火を打ち上げる民族を思い浮かべる舞夜。

 だが、もっと大きな疑問を抱く。

 加護ってなんだろう? と。


「すごいわね、アリーシャちゃん。加護って、限られたエルフだけの力でしょ~? 確か常人の10倍位の戦闘力を持ってるんじゃなかったかしらん?」


「はい。だいたい合ってます」


 ——合ってるのかよ、マジで戦闘民族じゃないですか……。


 と、引き攣る舞夜。


 同時に、本当に戦えるのか? と不思議に思う。

 嘘をつく意味はないのだろうが、今もアリーシャのメイド服の下でぷるぷると動くメロンを見ればその疑問も当然だろう。


 それはさておき。


 戦える事が分かったとはいえ、アリーシャの様な少女に危険な事をさせるのが嫌だった舞夜は、考え直す様に説得したのだが……「ただのお荷物になるくらいなら、売られた方がマシです!」と本気で奴隷市場に向かおうとしてしまったので、許可を出すしかなかった。


 ——万一の時は、ぼくの命に代えてでも守り切ろう。


 舞夜は、そう決意する。


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