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地球で虐げられた《最強》闇魔術士は、異世界でエルフ嫁たちに愛される  作者: 銀翼のぞみ
二章

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46話 イトシキモノ

「やめて……! やめてぇぇぇえ!!」


「うるせぇ! 大人しくしろ」


「ヘヘッ」


 深夜の路地裏で、そんなやり取りが交わされる。

 どうやら、1人の女性を2人の男が襲おうとしている様子だ。


「おい、やめろ……」


 そこへ、くぐもった制止の声が割り込む。

 声のする方向を見た男たちは……


「お、お前は……! に、逃げるぞ! “闇甲冑”だ!! ——ぐあぁぁぁ!?」


「おい、しっかりし——アバババババッ!?」


 闇甲冑——。

 その名を口にした次の瞬間、男は肩を矢で射抜かれ崩れ落ちる。


 仲間のもう1人が、容態を確かめようとその体に触れるが、直後に強烈な電流が走り、叫びを上げる。


 カチャ——ッ。


 音が鳴る。

 闇甲冑……そう呼ばれた、漆黒の武者鎧を着した男が、腰の刀を引き抜いた音だ。


「《魔弾》、発動……!」


 バシュッ! バシュッ!!


 くぐもった声でそう呟いた瞬間、刀の切っ先から《黒ノ魔弾(ブラック・バレット)》が勢いよく射出される。


 魔弾は男たちの頭に直撃。

 見事、意識を刈り取った。


「あ、あの……ありがとうございました」


「行け、夜は出歩くな。もし、出歩くなら路地裏は避けろ……」


「は、はい……!」


 闇甲冑の言葉に再度礼を言うと、襲われていた女性は走り去っていく。


「ふぅ、慣れない口調は疲れるな」


 女性を見送った闇甲冑から、可愛らしい声が。

 言うまでもなく、闇甲冑の正体は舞夜だ。


 いったいなぜ、彼はそのような姿で、このようなことをしているのか。

 それにはちゃんとした理由がある。


 舞夜は先の戦いで、魔導士の力に目覚めた。


 その反面、魔法を無効化するアカツキやコンを相手にすることで、魔法に頼るだけではダメだということを理解した。

 そこで、武器を使った戦闘の練習をすることにしたのだ。


 だが、いきなり魔物が相手では重荷かもしれない。

 そう思った矢先に閃いたのが、今のような街のチンピラ退治だ。


 どうせ、練習するなら人の為になった方がいいと思ったのも理由の1つ。

 日本と比べ、夜の街は治安が悪い。

 まさにうってつけというわけだ。


 今の魔法発動技術だが、矢は雷の属性を付与して放ったもの。


 しかし、魔弾の方は少々特殊だ。


 舞夜は魔導士の力に目覚めてから、魔素を見ることで魔力が最適な状態で付与できるタイミングや収束率などを把握できるようになった。


 その条件にあった状態で魔法を発動することで、武器に魔法を閉じ込める……すなわち、“魔法付与”に成功したのだ。


 魔弾は、刀にあらかじめ付与されていたものを発動したわけである。


 そして、武者鎧姿のことだが……。

 これは、正体を隠す為に用意したものだ。


 都市のチンピラ掃除をしているのが、舞夜だとバレれば面倒ごとが起きるのは必至。

 ゆえに、舞夜のイメージからかけ離れたものを選択した。

 憮然とした喋り方もそのためである。


 まぁ、唯一。都市の警備のため、見回りをしていたサクラに現場を見られ、「くくく……、ははははッ! 匂い! この芳しい匂いは舞夜ちゃんだな! 人助けとは大したものだ。……どれ、私も手伝おう!」とか言いながら、正体を看破された挙句、別の意味でお手伝いされそうになり、本気で恐怖するという出来事があったりしたが……。


 そんなことをするうちに、先ほどのチンピラの言っていた、闇甲冑という名が広まり、巷では“闇に潜む正義の鬼武者”などと噂されるほどになっていた。


 それを耳にした舞夜自身が、恥ずかしさで悶絶したのはいうまでもない。

 それをアリーシャたちがからかったりするものだから、なおタチが悪い。


 ちなみに、今は魔法を混ぜた戦闘をしたが、武器のみの戦い方もなかなかいい具合に仕上がっている。


 それはさておき。


「よいしょっと」


 舞夜は気絶した2人を縄で縛り上げ、大通りに向かって放り投げる。


「うおッ! なんだ!?」


 通行人が気づいたようだ。

 あとは適当に処分されるであろう。


 このあとも、舞夜はゴミ掃除に勤しんだ。


 なかにはレイプ成立まで、あと数センチ。

 なんていう事例もあった。


 あまりにも酷かったので、加害者を裸に剥き表通りに縛って吊るしておいた。

 被害者の女性が復讐のために、ブーツで大事なところを何度も蹴り上げるという残酷な場面もあったりしたが……まぁ自業自得だろう。

 使えなくなれば、悪さもできまい。


「《飛翔》——ッ」


 舞夜が唱える。


 すると甲冑の足や腰回りなどから、魔力が噴出し舞夜を夜空へ舞い上がらせる。

 それと同時に魔力が彼を包み込み、空気抵抗と寒さから守る。


 この《飛翔》の技術も、魔素の可視化を使って飛行するのに最適な風魔力を算出し、甲冑に付与することで使用可能となった。


 上空から都市を見下ろし、獲物を見つけ次第強襲。


 このローテーションで見回りを兼ねたトレーニングを行っているのだ。

 空を飛んでも、漆黒の甲冑は夜空に溶け込むので見つかる心配は無用だ。


「今夜はもういいかな」


眼下を見渡しても、問題はなさそう。

 そう判断して舞夜が呟く。


「たまには、海の方にでも行ってみようかな」


 気分転換に空中散歩をするのもいい。

 月に照らされた海面目指して、舞夜は加速する。





「なんだアレ(・・)は……」


 舞夜が空中散歩を始めて十数分。


 そろそろ帰ろうかと思った頃。

 目の前に現れたものに思わず声を漏らす。


 眼下には木々に覆われた1つの孤島。


 だが、おかしい。

 普段堤防から見た限りでは、こんな島の存在を確認することが出来ないのだ。


 興味が湧き、海面ギリギリまで高度を落とし、ホバリングする舞夜。

 高度を保ち、島の側面を見ようとすると……島の姿は消え、その先には海面がどこまでも広がるだけだった。


 ——見間違え……だったのか?


 そう思い、上昇。

 すると、やっぱり島があるではないか。


「これだったらどうだ?」


 今度は島の真上に移動。

 そのまま上陸を試みると、無事着地に成功する。


 ——よし、探索だ!


 謎の孤島……その存在に胸をワクワクさせながら、魔力で火を灯し、歩みを進める。





「恐……竜……?」


 歩き始めてしばらく。

 

 島には草木が広がるだけで特筆すべきものは見当たらなかった。

 だが、島のちょうど中心部にたどり着いた時、舞夜の目の前にはそうとしか呼べないものが姿を現した。


 いや、正確には、それの化石と言うべきだろうか。


 大きさは50メートルほど。

 その巨体に相応しい、強靭そうな顎に長大な尻尾。

 どっしりとした足に、少し短めな手を思わせる前足。


 その風貌は、太古の王者、TーREXを彷彿とさせるが、それとは少し違う。


 T—REXであれば、体長は10メートルくらいのはずだ。

 なにより、目の前の化石には、鋭い背ビレのようなものが確認できる。


 肉がついたら、あの(・・)、“キング・オブ・モンスター”のような姿になりそうだ。


 この世界において、こういった化石が珍しいかどうかはおいておくとして、地球であれば間違いなく大発見であろう。


 実は、舞夜は幼い頃から怪獣や恐竜といったものが大好きだった。

 その理由は、いつか大怪獣が現れ、彼に魔法教育と称して虐待を行う親たちを踏み潰してくれるかもしれない……という、なんとも悲惨な憧れではあったが……。


「かっこいいなぁ……。ふふっ」


 初めて見る巨大生物の化石に、舞夜は自然と笑みがこぼれる。

 触れれば、ひんやりとしたつめたさ、そして硬く、どっしりとした質感が伝わる。


『やっと……、やっと現れたか。我がイトシキモノ……十六夜舞夜よ……』


「ッ——!?」


 感慨に耽る舞夜の耳に、突如そんな声が響き、バッと手を離す。

 声の出どころは、目の前の化石らしい。


 その空洞のはずの目の奥には、ゆらゆらと揺れる蒼い光が灯り、静かに舞夜を見つめていた。


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