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地球で虐げられた《最強》闇魔術士は、異世界でエルフ嫁たちに愛される  作者: 銀翼のぞみ
一章

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39話 達成と交渉

「こ、これは……!? 間違いないわん。この大きさ、それに皮膚鎧……“トロール・ジェネラル”!」


 目の前に出された鎧のトロールの死体を見て、アーナルドが驚愕を露わにする。


 迷宮から帰還後。

 舞夜たちは、まずギルドへ向かった。


 説明するより、見てもらった方が早いだろうということで、今回の迷宮の異変の原因である、鎧のトロールの死体を《黒次元ノ黒匣(ブラック・ノワール)》から取り出して見せたのだ。


「ふむ、もしやとは思ったが、やはりトロール・ジェネラルだったか」


 サクラが、納得といった様子で頷く。


 鎧のように見える皮膚。

 通常のトロールよりも大きな体。


 サクラも伝聞でその特徴を聞いたことがあり、鎧のトロールの個体名に見当をつけていた。

 迷宮でジェネラルの熱線攻撃の直前、舞夜に警告しようとしたのは、このためだ。


「まさかジェネラルがいたなんてねん……。相当な苦戦を強いられたんじゃないかしらん?」


「いや、確かに強力な攻撃を放ってきたが、舞夜殿が魔法2発で倒してしまった」


「はんッ!? う、嘘でしょう……ジェネラルを単独で撃破? それが本当なら、舞夜ちゃんは白金等級の実力よん……?」


 サクラの答えで、再び驚きの声を上げるアーナルド。


 無理もない。

 なにせ、トロール・ジェネラルを単独で倒せるものなど、この世界には勇者や賢者といった最高峰の実力者しかいないのだから。


「ところでアナさん、他にも魔物の死体が500近くあるんですが、買い取ってもらえますか?」


 だが、そんなことなど、お構いなしとばかりに、舞夜は買取報酬の話に乗り出そうとする。


 彼にとっては名誉や地位などはどうでもよく、アリーシャとリリアの将来のために、金を稼ぐことが最優先なのだ。


「ちょ、ちょっと待ってちょうだいな! そんな量を一度に、しかもジェネラルまで……」


 そう言って、買取を依頼されたアーナルドは、考え込んでしまう。


 とんでもない額が動くのは確実。

 そうなっても仕方あるまい。

 全部買い取ってもらえるのか、怪しい雰囲気だ。


「……ご主人様、他の都市のギルドに持ち込むのもあり」


「そうですね、その手がありました。それに、商人に直接買い取ってもらう手も……」


 とそこへ。


 ウンウンと唸る、アーナルドを尻目にリリアとアリーシャが舞夜に提案してくる。


 たしかに、別にこのギルドで買い取ってもらうことにこだわる必要はない。

 他の都市ならば、緊急の納品依頼があるかもしれないし、アリーシャの言うとおり、商人と契約を結べば定期的に買い取ってもらうことも……。


 そうやって、舞夜が考えた直後だ。


「わかったわん! 買い取る方向で話を進めるようにするから、ちょっと待っててちょうだいな!!」


 アーナルドが慌てた様子で言うと、席を立って駆けて行ってしまった。


「あ、アリーシャにリリア、なかなかえげつないことをするな……」


「でも、効果てきめんだったみたいだね、隊長」


「どういう意味です?」


 引きつった顔で話すサクラとセドリックに、舞夜が問いかける。

 するとこんな答えが返ってきた。


「簡単に言うとだな。このままいけば、舞夜ちゃんが白金等級になるのは、ほぼ間違いなしだ。そうなれば、この都市、リューインに万一の事態が起こった時の切り札になるのはもちろん、白金等級を抱えるギルドというだけで、様々な依頼が舞い込む様になるのだ」


「でもね、アリーシャさんとリリアさんが言ったとおり、舞夜くんが素材の買い取りをお願いする為に他の都市へ行ったとしよう。それで終わればいいんだけど、もし舞夜くんがその土地を気に入って住み着いてしまったら……分かるだろう?」


 白金等級は戦力になるし、宣伝効果も大きい。

 さらに聞けば、大きな都市同士で、高等級の冒険者の奪い合いのような真似をしていることも分かった。


 そして、アリーシャとリリアはそれを理解した上で、わざとアーナルドの前で、舞夜を他の都市へ行かせるような発言をしたのだ。

 可愛い容姿をして、なかなかにしたたかだ。


 それにしても、まさか自分がそんな事柄の渦中の人物になろうとは。

 と、舞夜は少し怖くなるのだった。





「それじゃあ舞夜ちゃん……。残りは口座の振り込みねん……」


 アーナルドが元気なさげに言う。

 上役に相談したところ、死体は買い取ってもらえることとなったのだ。


 ただし、いきなり全ての分の現金を用意できるはずもなく、この場で支払い可能な分以外は、ギルドに口座を作り、数十回に分割して振り込まれることとなった。


 分割と聞き、どうしようかと迷う舞夜だったが、他の都市へ行っても一緒かもしれないし、取引先の商人を探すのも面倒だ。

 金も今すぐ必要というわけでもなく、将来的にアリーシャたちのものなればいい。

 

 そう判断し、条件を飲んだのだ。


「それなんですが、半分は騎士団へ振り込みをお願いします」


「舞夜ちゃん!?」


 舞夜の言葉に、サクラをはじめ、騎士団の面々が「なに言ってんだ!?」と声を荒げる。


「何って、みんなで攻略したから、これだけの成果が得られたんですよ?」


 山分けは当然でしょ? と舞夜が言う。


「そうはいかねぇだろ」


「であるな、そもそも後半は舞夜殿が無双してるだけであったし」


「あたいら、立ってただけだったもんなぁ」


「そもそも、迷宮で得たものは、全部、舞夜ちゃんたちのものになる契約だったのですぅ」


 ダニーに続き、ハワード、ケニー、マリエッタも反対だと、意見を口にする。


 ところで、マリエッタの舞夜に対する呼び方が変わっているのは、そういうことなのか。

 それは彼女のみぞ知ることだ。


「じゃあ、こういうのはどうだい? 騎士団への支払いはなし。その代わり、1人につきトロール1体分の買い取り金額を個人的にもらうんだ」


 山分けを主張する舞夜と、それに反対するサクラたちに、セドリックがそう提案する。


「いい提案だと思いますよ、ご主人様?」


「……ん。そもそも騎士団に支払っても、サクラさんたちには関係なかった」


「ホモの癖に、役立ちますの」


 エルフ娘3人が言う。


 確かに、そうすれば金は騎士団にはいかず、ともに戦ったサクラたち自身の儲けになる。


 皆、騎士団に借金のある身。

 これはありがたいだろう。


 借りた額も一番大きなもので、サクラの妹の薬代で白金貨10枚。

 トロールの死体がまるまるひとつあれば、白金貨20枚の儲けにはなる。


 そうすれば借りたものを返して、騎士団を辞め、自由になれる。

 そうしなくても、待遇の改善は見込まれるだろう。


 ところでシエラのセドリックに対する軽いディスりだが、義理の兄とはいえ、ホモな上に殺しが大好きな異常性欲者が身内とあっては、仕方あるまい。


「あー、ギルドの職員は個人のやりとりには干渉しないわん。もちろん口外もね?」


 受け取りを渋る騎士たちの様子を見て、空気を読んだらしいアーナルドがウィンクを飛ばしながら、そう告げる。


「しかしだな……」


 それでもサクラは悩んでいるようだ。


 と、ここで、舞夜が決め手となるセリフを。


「まぁまぁ、受け取らないにしても今更だと思いますよ? 昨日、トロールを丸焼きにして食べてる人もいましたし」


「「「あっ!?」」」


「Oh……それがし、やっちゃったのである」


 思い当たり、声を上げる騎士隊の面々。


 昨夜の宴会で、エールを樽ごと飲み。

 酔った勢いでトロールを丸ごと食べた戦犯ハワード。


 どうあがいても過去は変わらない。

 あとの祭りとは、よく言ったものだ。


「そんなわけですし、ぼくも騎士団の蓄えになるより、みなさん個人の懐に入った方が嬉しいです。受け取ってもらえませんか?」


「そ、そこまで言われては……」


「げひゃひゃひゃ! かたじけないのである!」


 騎士たちは受け取ることを了承。

 あとは……


「もちろん、シエラ様も受け取ってくださいね?」


「もうっ、ですから呼び捨てにと……その前にシエラは舞夜様のお役に立ちたくて参加しているだけですの。報酬は受け取れませんの!」


「そうですか……。そのお金でもっといい装備を揃えれば、これからも難しいクエストを一緒に受けられると思ったのですが……ここまでの様ですね。残念です」


「ありがたく受け取りますのっ!!」


 これからもともに——。


 その一言で、一瞬にして陥落するシエラだった。


 とりあえず、全員に報酬が行き渡ることになり、舞夜は安心した。


 だが、それと同時に、シエラがそこまで自分と一緒にいたいのだと知ることになり、地球で女子たちからいじめられていた頃からは、想像もつかない状況になったものだと、感慨深くなるのだった。


「舞夜ちゃん、お礼に私の処女を捧げようと思う!」


「ひぃぃっ!?」


 そんな舞夜の肩をガッ! と掴むサクラ。

 公衆の面前でのとんでも発言に、思いにふけるどころか、舞夜は恥ずかしさで頭を抱えうずくまってしまうのだった。





「振り下ろされる、トロールファイターの《フレア・フィスト》……! さすがに死を覚悟したが、歴戦の騎士である俺の体は勝手に動いた。紙一重で拳を回避し、ヤツの顔面に斬撃をお見舞いしてやった!」


「うむ。そしてヤツが怯んだ隙に、それがしが魔力付与で強化した拳で追撃。みごと、屠ってみせたのである!」


 舞夜たちは報酬の支払いなど、もろもろの手続きを終えると、ギルドの酒場で祝杯を上げることとなった。


 なぜか、関係のない冒険者たちからも酒をたかられたりするのだが、ダニーにとハワードは女冒険者たちに、自分たちの活躍を自慢し、キャーキャーともてはやされ満足そうだ。


 本当はサクラや舞夜の後ろに隠れ、チクチク攻撃するのがほとんどだったのだが、優しい舞夜は野暮なことを言うつもりはないようだ。


「あ〜飲み過ぎちまったね、マリエッタ」


「ですぅ。体が熱いのですぅ〜」


 ケニーとマリエッタも盛り上がっている。

 ビキニアーマーに釘付けな男冒険者たちの前で、時おり悩ましげなポーズをとり、からかって楽しんでいる。


 サクラは、本気で舞夜とキメてしまおうと、ル◯ンダイブを敢行したのだが、舞夜はそれを闇魔力を纏った両腕で迎撃。

 昨夜と同じく気絶するまで味あわせるのだった。


「んふふ〜。どうだ一方的に動かれるのは? ぐふふ……」


 気絶したサクラの寝言だ。

 どうやら、夢の中で舞夜を無理やり汚しているらしい。


「ええい! 女が寄るんじゃない!! ぶっ殺すぞ!!??」


 セドリックが鬼の形相で声を荒げる。

 イケメンな彼は当然、女に言い寄られるのだが、殺意を抱くレベルで嫌らしい。

 ホモなのが実に悔やまれる。


「ねぇえ〜、舞夜くんがトロール・ジェネラルをひとりで倒しちゃったって本当ぉ〜?」


「可愛い顔してるよね。よかったら、このあとお姉さんと……」


「あ、あの……」


 舞夜も他人ごとではなかった。

 色気たっぷりの女冒険者に囲まれ「あわあわ」と困ってしまっている。

 そのうえ、女たちは皆それなりに美人だ。


 だが——


「ふふっ。ご主人様のきれいな肌には指一本触れさせません」


 そう言って、アリーシャが女冒険者の輪の中から、舞夜をひょいっと助け出す。

 その直後、舞夜の唇を奪い、濃厚なイチャイチャを見せつけるのだった。


 これには、女たちもタジタジ。

 繰り広げられる光景は効果抜群だ。

 だが、なにより、アリーシャが相手では分が悪い。


 輝くプラチナブロンドに白磁の肌。

 涼しげだが慈愛を感じさせるアイスブルーの瞳。

 きゅっと締まったくびれとは対照的な、大きく実ったバストに、むっちりとしたヒップライン。

 そして、すらっと伸びたキレイな両脚。


 エルフというだけでも、美しいというのに、その最上級をいくであろうアリーシャの前では、ただの美人など霞んでしまうのだ。


「……だから、抜け駆けダメって言ってる……!」


「ああっシエラも! シエラもですの!」


 加えて、ダークエルフのリリアにハーフエルフのシエラ。

 2人とも幼いが、アリーシャ同様に、とんでもない美少女だ。


 勝ち目がないと悟った女たちは、すごすごと退散するのであった。

 中には、アリーシャの美貌に、ぽーっと見惚れる者までいる有様だ。


 それにしても、リリアの語気がいつもより荒い。

 どうやら、ことごとくアリーシャに先を越され、少々おかんむりの様子だ。


 シエラの気持ちも嬉しくは思う舞夜だが、さすがにこれ以上は受け止められないというものである。


 それはさておき。


 多額の報酬に、新たな魔法技術の習得。

 騎士隊の面々とも絆をつなぐことが出来た。

 今回のクエストは実に得るものが大きかったと言えよう。


 その反面、疲労感も大きい。

 しばらくは休暇にしよう。


 そう、舞夜は考えていたのだが……。


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