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地球で虐げられた《最強》闇魔術士は、異世界でエルフ嫁たちに愛される  作者: 銀翼のぞみ
一章

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31話 召聖ノ加護と騎士達の実力

『キシャアァァァッ!!』


『グギャッ! 《ファイアーボール》!!』


 情報どおり、迷宮の中は混沌と化してした。

 通常であれば、5層目以降に出現する巨大な蛇型の魔物“モールサーペント”。

 ゴブリンでありながら、魔法スキル持つ突然変異種“ゴブリン・メイジ”。

 そんな中級の魔物が、1層目から舞夜たちに襲いかかってくる。


 特にゴブリン・メイジは厄介。

 普通のゴブリンと見た目が変わらないため、今回の騒動で油断した冒険者が大火傷を負うケースが続出したほどだ。


 そんな敵に対し——


「無駄だ! スキル《鉄壁》!!」


 舞夜たち一行の先頭。

 騎士隊長のサクラが盾を構える。


 盾とゴブリンメイジが発動した《ファイアーボール》が衝突し、バーンッ! と激しい音を立てるが、微動だにしない。

 それどころか身を屈める動作をすると——


「うおぉぉぉぉぉぉ——ッ!!」


 雄叫びをあげ、盾を構えたままとんでもない勢いで飛び出した。


 勢いそのままに魔物2体へチャージアタック。

 そのまま壁まで叩きつける。


『キシャッ!?』


『ピギャアアアア!?』


 モールサーペントとゴブリン・メイジの悲鳴があがる。

 それと同時、グチャッ、ゴキッという嫌な音も鳴り響く。

 盾と壁の間で2体の骨と肉が潰されていく音だ。


 盾による防御をかねた攻撃。

 シンプルで力まかせだが、それゆえに強い。


 それだけであれば、普通のタンクにもできるだろう。

 だが、サクラの使う盾でとなるとそうはいかない。


 彼女が扱うものはタワーシールドよりも、ひと回り大きい。

 さらに特殊ギミックが組み込まれており、横に展開する特製大盾なのだ。

 名は“ギガントシールド”。

 展開時の大きさは通常時の3倍。

 つまり重さも3倍だ。


 そんな超重量の武具を使っての高速突進術を可能にするのが、彼女の力、上級スキル《鉄壁》だ。


 その能力は、スキル発動時、防具重量無視。

 防具破壊無効。

 致命傷以外のダメージ無効。

 そしてカウンター攻撃威力2倍化という、とんでも効果を持つ。


 ちなみに非戦闘時の持ち運びは自力。

 それゆえ、サクラの鎧の下には無駄なく鍛えられた腹筋が隠れている。


「腹筋が割れているのをからかってはならぬぞ、舞夜殿。以前ダニーがそれをやってぶちのめされたゆえ……」


「き、気をつけます」


 リザードマンのハワードの警告に、舞夜は肝に命じる。

 どうやらサクラは見た目に反し、かなり凶暴な性格のようだ。


「……《キマイラ》」


 そこから少し離れた場所。


 リリアが小さく呟く。

 すると彼女の肢体に、白く輝く古代文字の様なものが浮かび上がる。


『グルァァァァァッ——!!』


 そして光が集まると、そこには高らかに咆哮をあげる、異形が現れた。

 獅子と山羊の2頭、蛇の尻尾——


 リリアが呟いた名の通り、地球でも神話の中で語り継がれる合成獣だ。


「……やれ」


 リリアの指示で《キマイラ》が飛び出す。

 向かう先には3体のゴブリン。


 獅子の顎門で首筋に喰らいつき、山羊の角で突き飛ばし、あるいは刺し殺す。

 そして尻尾の蛇が鋭い毒牙で最後に残った1体に食らいつくと、ゴブリンは痙攣し、その場で崩れ落ちた。


 これがリリアの力《召聖ノ加護》だ。

 武器を持つことで身体能力を強化するアリーシャとは、別タイプの強力な能力だ。

 そのほかにも数種類の使い魔が召喚できる。


「……ご主人様、どう?」


 敵が片付くと、そう言ってリリアが、とててて、と舞夜のもとへ駆けてくる。


「すごかったよ。大活躍だったじゃないか」


「……ん。じゃあ撫でて?」


 ——可愛すぎる……!


 クール系かと思いきや、実は甘えんぼ気質なリリアに、舞夜はくらっときてしまう。

 今も撫でられながら、その愛らしいほっぺをスリスリ押しつけている。


「ま、舞夜さま! シエラも頑張りましたの!」


 リリアと舞夜のやりとりを見ていたシエラも、慌てた様子で彼へと近づいてくる。

 どうやら自然に甘えるリリアを見て、焦りを感じてしまった様だ。


 シエラも相変わらずの活躍ぶりだった。

 《弓聖ノ加護》で大弓を駆使し、後方から迫る敵はもちろん。

 周りがトドメを刺しきれなかった敵まで百発百中で処理してのけたのだから。


「シエラさまもすごかったですよ。とても心強いです」


「ほ、本当ですの?」


「はい。このあとも期待してますね」


「で、でしたら、ご褒美にお尻を叩い——」


「アーシャ。そっちは大丈夫?」


「無視ですの!? 褒めておいて! 上げておいて! このタイミングで無視ですの!? はぁっはぁっ、たまりませんの……ひゃうっ……! せ、セーフでしゅの! 漏らしませんでしたのぉ……」


 恍惚とした表情を浮かべるシエラ。

 無視されることにまで、快感を覚えるようになってしまった様子。

 この歳ででこれとは将来有望すぎるというのものだ。


 “ピンク頭は淫乱”。

 その言葉を舞夜は思い出す。


 見ればサクラたちも、引きつった顔を浮かべている。

 侯爵家の評判が、地に落ちる日も近いかもしれない。


「こちらも終わりました。ご主人様っ」


 舞夜の呼びかけにアリーシャが応える。

 そのまわりには、ゴブリンやオークの死体が積み上がっている。


「すげーぜ、アリーシャちゃんは! 1人でこっちの魔物をほとんど倒しちまった」


 そう言うのはダニーだ。


 武器を剣から刀へ持ち替えたアリーシャの戦闘力は格段にアップしていた。

 動きは更に鋭く、そして流麗なものになり、戦闘中だというのに、まわりの騎士たちの目を奪った。

 新たな防具である、蒼銀の戦闘装束も相まって、その美しさは極限の域に達している。


 本来の得物に持ち替えたというのも戦闘力向上の要因のひとつだが、以前の鉄製の直剣は、今のオリハルコンと玉鋼の合金刀と違い、安ものだった。

 ゆえに刃こぼれしやすく、それを避けるためにアリーシャはかなりの攻撃パターンを制限していたのだ。


 そして肝心の舞夜だが……。


 今のところ何も活躍してはいない。

 というのも、隊長であるサクラから「舞夜殿は、トロールなどの強敵が出てきた時のために、温存しておいてくれ」との指示が下り、後方で待機しているからだ。


 前回の報酬で、ポーションを50本ほど用意していたので、舞夜は大丈夫だと言ったのだが、それでも万全を期す為だと言われてしまえばそれまでだ。


 魔法騎士だというセドリックも、その辺をわきまえている様で、魔法は一切使わず、今のところ剣技のみで敵に対応している。


 魔法のみならず剣技まで使える……言うならば“魔法剣士”。

 もはや存在自体がイケメンな彼だが、蓋を開ければホモ。

 実に悔やまれる。


 そんなわけで、舞夜が今できることといえば、アリーシャたちエルフ娘3人をいつでも援護できるように警戒することと、戦闘後に《黒次元ノ黒匣(ブラック・ノワール)》で魔物の死体を回収することぐらいだ。


 そのほか、サクラはもちろん、他の騎士たちも優秀だ。


 ダニーはセドリックと同じく、剣が得物だ。

 敵の急所を的確に貫きトドメを刺していく。


 ケニーとマリエッタのビキニアーマー2人組みは、鋼鉄製のスタッフでモールサーペントなどの硬い皮膚を持つ敵に対応。


 リザードマンであるハワードは、鋭利な形状をしたガントレットを装備した拳と、巨大な尻尾による連携攻撃で敵を嬲り殺しにする。


 これに舞夜は舌を巻く。


 シエラを見捨てたピーターたちのチームワークもなかなかだったが、騎士たちは、そのはるか上をいく実力と連携力を持っている。

 さすが正規の訓練を受けた者達だ。


 おかげで、魔物が異常発生した迷宮だというのに、あっという間に5層目までを突破。

 舞夜は消耗ゼロのまま6層目を迎える。


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