表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球で虐げられた《最強》闇魔術士は、異世界でエルフ嫁たちに愛される  作者: 銀翼のぞみ
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/132

16話 弓聖ノ加護

 迷宮2層目——


「《黒ノ魔弾(ブラック・バレット)》!」


「いきますの!」


 舞夜が前衛に襲いかかるゴブリンを魔弾で弾き飛ばす。

 その横でシエラが矢を放ち別のゴブリンの肩を射抜く。


「うおりゃああああ!!」


「僕も行きますよ!」


 そこへすかさず、ピーターが剣。

 デールがナイフでそれぞれトドメを刺す。


 さらに——


「《黒ノ魔槍(ブラック・ジャベリン)》!」


 別の位置から迫ってきた2体の豚人型の魔物、“オーク”。

 舞夜はそのうちの1体に魔槍を放つ。


 残る1体へは、アリーシャが飛び出す。

 体格差があるにも関わらず、《剣聖ノ加護》の力を使い、敵の顔の高さまで難なく跳躍。舞夜の魔槍がもう1体の心臓を貫くと同時、こちらは首を斬り飛ばしてみせる。


 ——杖の扱いにもだいぶ慣れてきたな。


 舞夜は杖を使いこなしつつあった。

 同じ魔法の連続発動や同時展開はもちろん、今の様に自分の力のみで魔弾を発動し味方を援護。同時に杖のアシストを得て、本命の敵へ魔槍を放つという事まで可能となったのだ。


 この世界において異なる魔法の同時発動には、《二重詠唱》という上級スキルが必要であり、それを難なくこなす舞夜にピーター達は目を見開いて驚いた。


「こっちも頼むっス!」


 スタッキーの声が響く。

 構えた盾と棍棒でオークを足止めしている。

 更にその背後に2体ゴブリンが迫る——


「舞夜様、一緒にお願いしますの!」


「了解です。シエラさん!」


 舞夜は《黒ノ魔槍》でオークの頭を吹き飛ばす。


 シエラは矢を2本つがえると同時に発射。

 スタッキーに迫る2体の胸を貫く事に成功した。


「いやぁ、舞夜にアリーシャ。あんた達すごいな!」


「ほんとっス! オークを単独で倒しちまうなんて」


 周囲の敵の掃討を終えたところで、ピーターとスタッキーが興奮した様子で2人を絶賛する。


「それを言うならみなさんもです」


 褒められ、恥ずかしそうに返す舞夜。

 だが、これはお世辞ではない。


 実際、ピーター達の実力は銅等級としてはなかなかのものだった。

 1層目でお互いのできることを実践し合うと、指示を出し、初めて組む相手にも関わらず、それなりの連携をしてみせた。


 だが、なによりすごかったのはシエラだ。

 彼女の得物は大弓。

 身の丈に合わぬその武器を涼しい顔で放ち、的確に味方を援護するのだ。

 中には彼女が一撃で倒したオークもいるほどだ。


 そして彼女の力には秘密がある。

 それはアリーシャと同じく限られたエルフのみが持つ力、加護を持っている事だ。


 その名も《弓聖ノ加護》。

 能力は全射撃武器の適正化。

 重量の無視や命中率の超向上といったチート能力だ。


「ピーター、3層目の入り口を見つけたぞ!」


 そこへ、デールが言いながら戻ってくる。

 シーカーの本来の役割、先行探索を終えてきたのだ。


「わかった。……2人のおかげで助かったぜ! まさかここまで楽して来れるとはな。帰ったら一杯奢らせてくれ」


「こちらこそ、おかげでかなり稼げました。ぜひみんなで飲みましょう」


 3層目にたどり着けば、舞夜たちの役割は終わり。

 一緒に来ないかとも言われたが、安全の為、それは断る事にした。


 それぞれ言葉と握手を交わすと、4人は迷宮の奥へと消えていった。





「痛っ——!?」


 アリーシャが小さく呻く。

 見れば掌から少量の出血をしている。


 ピーターやシエラ達と別れた後、舞夜達はもう少しだけ魔物の討伐を継続することにした。

 その途中、オークを倒した際に擦りむいてしまったのだ。


「アーシャ! ほらポーションだ」


「だ、大丈夫です。ご主人様! こんな小さな傷でポーションなん——んも゛ぉっ!?」


 ——いいから飲みやがれ!!


 舞夜は有無を言わせず、アリーシャの小さくて可愛いおくちに、ポーションの瓶を無理やりぶち込むと、中の液をグイグイ飲ませていく。


「ぷはぁっ……! もう、ご主人様ったら乱暴です! 突っ込むのは、ピ――だけにしてください!!」


「おい、だまれ」


 迷宮とはいえ、淫語を堂々と口にする変態エルフに、舞夜は冷たい目を向ける。


「それより、そろそろ戻ろうか?」


「そうですね。ご主人様、今日は何が食べたいですか?」


「そうだな。せっかくここまで来たんだし、たまには外で——」


「おぉぉいっ!」


「逃げろお前ら!!!!」


 夕食の話で盛り上がろうとした直後。

 2人の間に絶叫が割って入った。


 声の主は先ほど別れ、3層目へと向かったピーター達だ。


 ——何だあれは……!?


 その姿……正確にはその背後に迫る化け物(・・・)の姿を見て、舞夜が絶句する。


 ピーター達の倍はある土色の巨体。

 丸太のような手足に、ゴブリン以上に醜い顔を持った魔物が巨大な棍棒を振り回し、彼らを追い回しているのだ。


「“トロール”!? ご主人様、逃げましょう!」


「アーシャ、知ってるのか!?」


「はい! 銀等級の冒険者チームが、いくつも集まっても倒せるかどうかと言われている、上級の魔物です!」


 ——マジで化け物じゃないか!


『ゲバババァァァァ!!』


 アリーシャの言葉に、即座の撤退を決断した直後。

 トロールが咆哮をあげる。


 そして事は起きた。


 トロールが跳躍。

 そのまま棍棒を振りかぶり——


 ドパンッ!!


 追われているうちの1人、スタッキーの頭を吹き飛ばした。


「いやぁぁぁっ!? スタッキー……!」


 その光景を真横で見たシエラが、ショックでその場にへたり込んでしまう。


「立て、シエラ!!」


「構うなデール、俺たちもやられるぞ!」


 そんなやり取りをして、ピーターとデールは舞夜達の横を駆け抜けていってしまう。


「《黒ノ魔弾(ブラック・バレット)》!!」


 仲間を見捨てる2人の薄情さにショックを受けるのも束の間。

 舞夜は魔弾を放つ。


 へたり込み、すすり泣くシエラに向かって、トロールが棍棒を振り下ろしていたからだ。


 魔弾は棍棒の先端にヒット。

 その軌道を逸らし、ギリギリでシエラを救うことに成功する。


「今行くぞ!」


 魔力を足元で爆発させ、舞夜がロケットの様に飛び出す。


「おい、逃げるぞ!!」


「だ、だめぇ……、立てませんの……」


 ——くそっ、足がすくんでるのか!


「ご主人様!!」


 アリーシャの警告の声。


 態勢を立て直したトロールが、舞夜めがけて棍棒を薙ぎ払う——


「やられるかよ!!」


 腕をクロスする舞夜。

 ガキンッ! という重い音が響く。

 ガントレットでガードした音だ。


 だが、舞夜の顔が歪む。

 金属のガントレットでガードしたというのに、衝撃が凄まじく彼の骨にヒビが入ったからだ。

 その上、脇腹に棍棒をがかすり、血が滴っている。


 ——けど、これで終わりだ!!


「《黒ノ魔槍》!!」


 苦痛に耐えながら、魔槍を放つ。

 魔力を普段の倍注ぎ、巨大化したそれは見事トロールの顔面を直撃。

 スタッキーの仇とばかりに派手な音を立てて、頭を吹き飛ばした。


「ぐ……り、《黒ノ再動(リジェネート)》」


 舞夜の腕と脇腹が漆黒の輝きに包まれる。


 《黒ノ再動》。

 闇魔法で今まで奪ってきた生命力を使い、傷を癒すことのできる魔法だ。


 ——よし、治った。このままシエラを連れて……


「逃げてください、ご主人様! トロールは——」


 再びアリーシャが叫ぶ。

 まさかと思い舞夜はバッと、うしろを振り返る。


 トロールの首がなくなった箇所から、グチュグチュと音が聞こえる。

 するとそこから赤い繊維の様なものが生え、絡み合い——


「再生するんです!!」


 アリーシャが言い終わるのと、頭が再生したトロールが『ゲバァァァァ……』と嗤うのは同時だった。


【読者の皆様へ】


下にスクロールすると、作品に評価をつける【☆☆☆☆☆】という項目があります。


お楽しみいただけましたら、どうか応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ