15話 ハーフエルフ
「む〜……。ヒモになることの何がいけないというのですか……」
計画に失敗したアリーシャが、ブツブツ言いながら舞夜の後ろに付き従う。
もちろん、舞夜としても愛されるのは嬉しいが、今回ばかりはさすがに恐怖が上回った。
——これが行き過ぎるとヤンデレとかになるのかな?
と考えるのだが、これ以上想像すると実現しそうだ。とそこで終わりにする。
「あらん、舞夜ちゃんにアリーシャちゃんじゃない。おひさ〜」
「お久しぶりです。アナさん」
ギルドに入るとアーナルドが2人に声をかける。
スキンヘッドと高い技術が伺える盛りメイクを施していた相変わらずのヴィジュアル。しかし、ボンデージを新調したのか、ひと月前より食い込みが激しく、非常に見苦しい。
思わず((おえっ))と吐きそうになる2人だが、なんとか持ちこたえる。
「しばらく見なかったから心配してたのよん。生活はうまくいってるの〜?」
「はい! ご主人様も最初は恥ずかしがってましたが、今ではベッドでもお風呂でも料理中でも……」
「おいやめろ」
——なにとんでもないこと口走ってやがる!?
生活ではなく性活の話をしようとする淫乱奴隷エルフを引きずり、舞夜は依頼票のある掲示へと向かう。
◆
「ん〜、やっぱ等級が低いとロクなクエストがないな」
「そうですね。これなら迷宮に潜って、素材報酬を得る方が効率的です」
現在、舞夜たちは無等級。
なので同じ等級の依頼しか受けることができないのだ。
無等級向けの掲示板には、畑の害獣駆除やドブさらいなどの依頼しか掲示されておらず、その報酬は盗賊やビッグファングの討伐報酬と比べるとどうしても目劣りしてしまう。
これならアリーシャのいう通りにした方が良さそうだ。
依頼は次回にしよう。そう思ったところで……
「なぁ、あんた。もしかして盗賊団リーサルバイトを討伐した舞夜じゃないか?」
と、1人の青年に声をかけられる。
そのうしろには青年がもう2人、それと少女が1人控えていた。
「そうですが、あなた達は?」
「おっと、すまない。自己紹介が先だったな。俺は“ピーター”。このチームのリーダーで剣士をやってる。んでこいつらが……」
「“スタッキー”っていうっス。タンクをやってるっス」
「僕は“デール”。シーカーです。一応ナイフも使えます」
男3人が自己紹介を終える。
続いて残った1人の少女——
「“シエラ”と申しますの。武器はこの弓、よろしくお願いしますの!」
背はかなり低い、恐らく10〜12歳くらいだろうか。
男3人が17〜18くらいに見えるのに対し、このシエラだけやたら幼く見える。
髪はゆるくウェーブしたピンクブロンドのツインテール。
エメラルドグリーンの大きな瞳……とても愛らしい容姿をした少女だ。
おまけに、そのロリロリとした見た目に反し、かなり実っている。
——あれ、この子?
少女……シエラの容姿に見惚れている途中で舞夜は彼女の、ある特徴に気づく。
それは“耳”だ。
アリーシャのエルフ耳のように長い……のだが、少し短い様な気がする。
気になり尋ねて見ると……
「シエラは人間とエルフのハーフですの!」
と答えがかえってくる。
つまりハーフエルフというやつだ。
これに、舞夜はどうりで可愛いわけだと納得する。
「それでなんだけど……」
お互いの自己紹介を終えたところで、リーダーのスタッキーが用件を切り出す。
聞けば、彼らはこれから迷宮の3層目を目指すという。
ただ3層目は初めてで、できれば消耗を抑えて臨みたい……。
つまり、自分達の目的地である3層目まで、舞夜達についてきて欲しいという話だった。
舞夜に頼んだ理由は、彼がリーサルバイトを壊滅せたこと、それと先日絡んできた2人組、ハリーとマーブをのしたことが噂になっていたからだ。
報酬は、3層目までの道のりで得た素材全て。
なかなかに悪くない条件だ。
——でもなぁ。
舞夜は悩む。
理由は彼らを信用して大丈夫だろうか? というものだ。
「その子たちだったら大丈夫よん、舞夜ちゃん」
そこにアーナルドが割って入る。
「4人とも銅等級になったばかりだけど、実力はあるし、他の冒険者からの評判もいいわのよん」
——なるほど、そういうことなら。
「では、よろしくお願いします」
「ああ、助かるぜ!」
舞夜達はそれぞれ握手を交わし、迷宮へと出発した。
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