131話 青天の霹靂
数十分後――
「……にゃるほど、ここで開発した武器を使って、舞夜ちゃんは魔王たちの討伐に成功したんにゃね」
舞夜たちのこれまでのことを掻い摘んで説明されることで、ヴァルカンは納得した様子を見せる。
もっとも、とんでもない話の数々だったので、ヴァルカンの表情には疲れが浮かんでいる。
今も素直な気持ちで納得した、というよりは、納得せざるを得ない話を聞かされた……といった感覚であろう。
「ヴァルカンさん、お疲れのようですし今日は帰りますか?」
「大丈夫にゃ、それよりもヒヒイロカネの加工に関する話を聞たいにゃん!」
舞夜がヴァルカンの心配をするも、ヴァルカンは表情を切り替えてそんな風に返す。
工場の奥にはヒヒイロカネの他にも、ヴァルカンが見たこともない鉱石の数々が積まれている。
ここで帰るなど、愚の骨頂……! とでも言いたげだ。
「わかりました。……ジャック、カブ、ヴァルカンさんに開発中の武装の説明を」
『ふほほ! 了解ですぞ!』
『任せてヨ、王様!』
舞夜の指示に従い、後ろに控えていたジャックとカブが、設計図を手にしてヴァルカンに説明を始める。
「これは……見たこともない武装にゃ、このような発想で武器を開発してたなんて驚きにゃ!」
ジャックたちから開発に取り組んでいる武装の説明を聞き、ヴァルカンが興奮した声を漏らす。
今回、舞夜たちがヴァルカンに開発の手助けを依頼したい武装、それはヒヒイロカネを使用した、〝レーザーマジックライフル〟だ。
ヒヒイロカネにはエネルギーを蓄積、そのエネルギーを何倍にも増幅し、外に放出するという特性を持っている。
しかし、ヒヒイロカネは繊細な鉱石であり、その加工は至難の業だ。
ジャックたちは何度も試行錯誤を繰り返したのだが、ヒヒイロカネからエネルギーを放つ際に、収束させるまでに至らなかったのだ。
「にゃるほど、ヒヒイロカネは想像以上に複雑な構造をしているにゃね」
ヒヒイロカネを光にかざしながら、ヴァルカンが楽しそうに声を漏らす。
初めて触れる伝説の鉱石を前に、興奮を隠しきれない様子だ。
『この通り、色々と試してみましたが……』
『どれも上手くいかなかったんだよネ……』
過去に試してみたいくつもの設計図をめくりながら、ため息を吐くジャックとカブ。
それを受け取り、ヴァルカンが次々に読み込んでいく……そんな最中であった。
「んにゃ? 一度も合金は試していないのかにゃ?」
ヴァルカンが、ふとそんな疑問を口にする。
『合金……?』
『ですか……?』
ヴァルカンの言葉に、カブとジャックが不思議そうに聞き返す。
それも当然だ。
合金は主に高価な鉱石を使った武具を安く作るために使われる手法だ。
この孤島には貴重な鉱石がふんだんにある。
わざわざ合金製の武装など作る必要がない。
ジャックたちはそう認識している。
「たしかに、合金は武具を安く作るために使われることが多い技術にゃ。でも、癖の強い鉱石は他の鉱石を混ぜると加工が格段に楽になる場合があるにゃん」
『そ、そのようなことがあるのですか!?』
『全く知らなかったヨ!』
ヴァルカンの説明に、興奮した声を上げるジャックとカブ。
合金という技術に、そこまでの利点があるとは想像もしていなかったのだ。
「まずは過去の設計図をもとに、ヒヒイロカネと鉄を7:3くらいで合金して収束放出できるかどうか試してみるにゃん!」
『ふほほほ! 了解ですぞ!』
『これは楽しくなってきたネ!』
ヴァルカンの提案を聞き、俄然やる気! といった様子のジャックとカブ。
後方に控えていたスケルトンたちも、心なしか興奮した雰囲気を醸し出しているように見える。
『ふむ……』
『もしかしたら、上手くいくかもしれませんワネ』
「うん、レーザービームライフルが完成すれば、〝アレ〟への転用ができるからね」
盛り上がるヴァルカンたちを眺めながら、インペリアル、ユリス、そして舞夜はそんなやり取りを交わすのであった。