130話 恐怖の孤島
「にゃあ〜、まさかこんな場所に島があったにゃんて……」
舞夜に連れられ、孤島へと足を踏み入れたヴァルカンが呆然と声を漏らす。
今まで何もないと思っていた海域に、このような場所が隠されていたと知れば当然の反応である。
『ふほほほ! その方が王の言っていたヴァルカン嬢ですカナ?』
『可愛らしい虎耳族さんだネ!』
舞夜たちが島の中心地へと歩いている途中で、そんな声とともにジャックとカブが現れた。
「にゃ!? 上級アンデッド!?」
ジャックたちの姿を見て、ヴァルカンが身構える。
「大丈夫ですよ、ヴァルカンさん。二人はぼくの友だちです」
「と、友だち!? アンデッドがにゃ……?」
信じられない、といった様子でジャックたちを見つめるヴァルカン。
彼女を安心させるために、舞夜はジャックたちに近づきながら紹介を始める。
「ヴァルカンさん、こっちのカボチャ頭の彼はジャック、そしてカカシの彼はカブです」
『お初にお目にかかります、ヴァルカン嬢よ』
『よろしくネ、ヴァルカンさん!』
陽気な声色でヴァルカンに挨拶をするジャックとカブ。
いきなりの出来事に戸惑いながらも、ヴァルカンは「よ、よろしくにゃん……?」と、返事をする。
ジャックとカブに敵意がないことは理解してもらえたようだが、いったいなぜなのだろうか……といった様子だ。
「ヴァルカンさん、ぼくが不死者の王だと言ったら信じてくれますか?」
「…………にゃ?」
唐突な舞夜の言葉に、間抜けな声を漏らすヴァルカン。
そんな彼女に、「まぁ、付いてきてください」と言ってジャックたちとともに歩き始める舞夜。
わけがわからないといった表情を浮かべつつも、ヴァルカンもあとを歩き出す。
歩くことしばらく――
「にゃ!? こ、これは……!?」
舞夜たちに招き入れられた開発工場に入ったところで、またもや驚いた声を漏らすヴァルカン。
その瞳には、鍛冶作業に没頭する凄まじい数のスケルトンが映し出されている。
『おお、戻ったか! 舞夜!』
『お帰りなさいませ、我が王ヨ!』
工場の奥からインペリアルとユリスが現れ、舞夜を迎え入れる。
「ただいま、二人とも。この前言っていた鍛冶士のヴァルカンさんを連れてきたよ」
『おお、そなたがヴァルカンか、我の名はインペリアル。この島の守護者にして、舞夜の愛の奴隷だ』
『お初にお目にかかりますわネ、ワタクシはユリス。元不死者の王にして、今は舞夜様の配下の一人ですワ』
ジャックたちと同じように、陽気な雰囲気で挨拶をする二人。
二人の……もっと言えばユリスの自己紹介を聞いたヴァルカンが顔色を真っ青にする。
舞夜が魔王レイヴィアタンと、不死者の王ユリスを討伐したという話は知っていた。
しかしどういうことだろうか、目の前には元不死者の王を名乗る凄まじい力の波動を感じさせるアンデッドが……。
そして舞夜の先ほどの、「ヴァルカンさん、ぼくが不死者の王だと言ったら信じてくれますか?」という言葉……。
「つまり、舞夜ちゃんは不死者の王を倒しただけではなく配下に加え、不死者の王の称号を引き継いだ――ってことにゃん……?」
顔色を悪くしたヴァルカンが、ここまでの話で結びついた予想を口にする。
「ほぼ正解です、ヴァルカンさん」
「ほう、なかなか察しがいいではないか」
「さすがは王が見込んだ人物ですわネ」
舞夜、インペリアル、ユリスが、それぞれ感心したかのように、ヴァルカンの言葉を肯定する。
「に、にゃあ、具合悪くなりそうにゃ……」
あっけからんとした三人の様子に、ヴァルカンはとうとうしゃがみ込んでしまうのであった。