125話 アリーシャの力
「ま、舞夜! 今の力は一体なんだ!?」
リリアとシエラの力の前に、一同が呆然とする中、ジュリウス皇子が目を見開いて舞夜に問いかける。
「え、えっと……アレはですね……」
まさかアンデッドと開発した武器の力です……などと答えるわけにはいかず、口籠る舞夜。
そこへ、リリアとシエラが――
「……ジュリウス殿下、これは私たちのスキル」
「そうですの! 最近新しいスキルに目覚めましたの!」
――と、あけっからんとした表情で言う。
「スキル……だと? そんなスキルなど見たことはないが……」
「……ん。これは固有スキル」
「ですの!」
訝しげなジュリウス王子に、リリアとシエラはまたもやそんな風に答える。
固有スキルと言われてしまっては、納得するしかない……。
ジュリウス皇子は微妙な表情で引き下がるのだった。
「(ねぇ、あれって……)」
「(うん、ガトリングガンとライフルだよね……)」
リリアとシエラが使った武器に、地球出身の凛と桃花たちは気付くが、言及すれば面倒なことになるだろうと判断してくれたようで、小声で話す程度に抑えてくれている。
「さ、さてと、では先に進みましょう」
冷や汗を流しながら、これ以上言及されない内にと歩き出す舞夜。
リリアとシエラに、どういうことかと確認を取りたいところではあるが、今ここで聞くわけにもいかず、確認は後にまわすのだった。
「ふふっ……」
そんな舞夜を見て、小さく笑みを浮かべるアリーシャ。
(あ、これ、アリーシャも何かジャックたちに武器を開発してもらってるな……)
舞夜は察するのだった。
◆
数十分後――
「よし、この辺で少し休むとしよう」
ある程度迷宮の中を進んだところで、ジュリウス皇子が提案する。
さすがに、勇者四人の顔に少しだけ疲れが見えてきたからだ。
十五分程度休憩を取った後に、攻略を再開する。
とはいえ迷宮の中なので、勇大たちが休んでいる間は舞夜たちが周囲の警戒を行う。
「むぅ……」
そんな中、サクラが難しい表情を浮かべ、声を漏らす。
「どうかしましたか、サクラさん?」
「舞夜ちゃん……私が来た意味はあるのだろうか、ここまでほとんど活躍できていないのだが……」
なるほど、どうやら勇者四人、そしてリリアとシエラの活躍するあまり、タンクとして活躍できていないことを気にしていたようだ。
だが、サクラも全く戦闘に参加していないというわけではない。
活躍の数は少なかったが、勇者たちで抑えきれなかった敵を捌くなど、必要なところでカバーしてくれていた。
それに、戦力というのはそこにあるだけで意味がある。
いざという時に頼れる力があるというのは、心に余裕を生むからだ。
そんなことを説明しつつ、「そもそも、ここに来てから、ぼくなんて一度も戦闘に参加してませんからね……」と、苦笑してみせる舞夜。
そんな彼の気遣いに、サクラは少しホッとした表情を浮かべた……その時だった――
「この気配は……ッ!」
カッ! と目を見開き、声を上げるジュリウス皇子。
休んでいた四人の勇者も、勢いよく立ち上がる。
迷宮の奥の方から、膨大なエネルギー、そして圧倒的なプレッシャーを感じ取ったのだ。
「魔王が復活した……いや、もしかしたら力を完全に取り戻している可能性もありますね」
迷宮の奥から放たれるプレッシャーに、舞夜はそれを察する。
そんな舞夜を見て、ジュリウス皇子は感心した様子を見せる。
魔王の復活……それを察知しながらも、彼がまるで動じていないからだ。
ルシフェルは七大魔王の中でも、特に強力な魔王だと記録に残っている。
放たれるプレッシャーからも察するに、魔王マモンの力を凌いでいるのは確実だ。
そのプレッシャーを受け、舞夜は確実に勝つ気でいる……それをジュリウス皇子は確信したのだ。
手早く準備をすると、一行は迷宮の奥へと駆けていく。
◆
『ほう……その神聖属性の波動、勇者が混じっているな』
迷宮の中央部へと辿り着いた舞夜たちを、そんな言葉とともに一人の男が出迎えた。
赤銅色の肌に緑の長髪、三メートルはあろう巨体、その背中からは六枚の堕天使を思わせる紫の翼が生えている。
「お前が魔王ルシフェルだな」
グレートソードを構え、問いかけるジュリウス皇子。
すると男――魔王ルシフェルは『フッ……』と小さく笑みを浮かべ、背中の翼を大きく広げる。
そして両手の中に、禍々しい紫色の魔剣が現れた。
問答は無用……とでも言いたげなルシフェルに対し、勇大を始めとした四人の勇者たちもそれぞれアーティファクトを構えた……その時だった。
「〝バーストアクセラレーション〟――!」
……アリーシャが高らかに声を上げた。
その刹那――激しい閃光とともに彼女の姿が掻き消えた。
かと思えば、魔王ルシフェルの背後にその姿を現したではないか。
『馬鹿……な……ッッ!?』
驚愕の声を漏らす魔王ルシフェル。
次の瞬間、その体が肩から斜め真っ二つに割れ、緑色の鮮血が迸った。
そして……ルシフェルは沈黙した。
カチン――……。
ルシフェルが沈黙するとともに、アリーシャは刀を鞘に納めるのだった……。




