123話 大胆なはわはわ娘
「よくぞいらっしゃいました。ジュリウス殿下」
キャンピングカーで移動すること半日――
休息を取る予定になっていたアランソン村へと到着した一行を、この村の村長が出迎える。
時刻は夕刻――
ちょうどいい時間なので、宿に食事を用意してくれるとのことだ。
◆
「このお肉……なかなか美味しいわね」
「こっちの山菜のサラダもいい味をしている」
用意された食事を口にして凛とサクラがそれぞれ感想を漏らす。
他の皆も、用意された食事を嬉しそうに食べている。
普段、アリーシャたちが作る食事と比べれば少々味気ないかもしれない。
しかし、宿の娘の話によると、近くの山でとれる猪の肉や山菜がこの村の名物であり、今日提供されたのは取れたて新鮮とのことだ。
そんな食材だからこそ、素朴な味付けの方が素材そのものの味を堪能できるわけである。
ジュリウス皇子は、舞夜たちの料理が食べられないのが若干不満そうに見えるが……それはさておく。
「はい、ご主人様……あ〜んですよ〜♡」
「ア、アーシャ、だから恥ずかしいってば……」
相変わらず、アリーシャは舞夜を甘やかそうと、彼の口元に食事を運ぶ。
舞夜は少々抵抗するも、結局いつものように甘やかされてしまう。
もちろん、そこにシエラにリリア、それにレオナが加わるのは言うまでもないだろう。
それに加わろうと、凛とサクラも動き出す。
そんな中……ただ一人、桃花は静かに、舞夜を見つめていた。
◆
「ふふふ……っ、こうしてわたしたちだけになるのは久しぶりですね、ご主人様♡」
「……ずっと、我慢してた。もう限界♡」
「シエラも、大事なトコロが疼いて仕方なかったですのぉ……♡」
夜――
用意された個室で、アリーシャにリリア、シエラのエルフ嫁三人が妖艶な表情を浮かべて舞夜に迫る。
アリーシャは高級感のある黒の下着、リリアは非常に露出の多い純白の下着、そしてシエラはフリルのついたピンクの下着を身につけている。
ここしばらく、団体での移動だったので、三人は体が疼いて仕方なかったのだ。
宿屋に広めの部屋を頼み、四人で久しぶりの夜を楽しもうというわけである。
「みんな、綺麗だよ……」
窓から差し込む月明かりに照らされたエルフ嫁たちの姿を見て、舞夜は素直に感想を漏らす。
そんな舞夜の言葉に、嬉しそうな表情を浮かべながら、三人は静かに……彼の体に手を伸ばしていくのだった――
◆
「ふぅ、いいお湯だな……」
数時間後――
エルフ嫁三人を気絶させるまで愛した舞夜は、一人でこの宿に併設された露天風呂へとやってきた。
流石に三人も相手にすれば、体は汗だく汁だく(意味深)なので、夜のうちに体を清めにきたのである。
夜中なので広い露天風呂を貸切状態――
これほど贅沢な思いはなかなかできるものではない。
それに、舞夜はずっと運転しっぱなしであった。
旅の疲れを癒すのに、露天風呂は最高である。
綺麗な星空を眺め、湯船を満喫している舞夜。
そんな時であった――
「ま〜いくんっ♪」
――風呂場に、そんな声が木霊した。
すっかり気が抜けていた舞夜。
慌てて身構え、声のした方向を見るの……だが、それと同時に「な……ッ! 西蓮さん!?」と驚愕の声を漏らす。
そう、その場に立っていたのは桃花だったのだ。
しかも、バスタオル一枚を巻いているだけで、あとは何も身に纏っていない。
月明かりに照らされて、バスタオル越しに彼女のシルエットが透けて見えてしまう。
アリーシャたちのように爆乳……というわけではないが、歳の割に実っていることがわかる。
くびれたウェスト、そしてこちらも歳の割に育っているヒップラインが美しい。
舞夜は慌てて視線をそらし、見ないように努めるの……だが――
「はわ〜、舞くんってば、いつもアリーシャさんたちとえっちなことしてるくせに、恥ずかしいのかな〜?」
――などと言い、桃花は湯船の中に入って、舞夜の方へと近づいてくる。
「さ、西蓮さん!? いったい何を……ッ」
突然のことに、戸惑いを隠せない舞夜。
そんな舞夜の隣に、桃花は静かに腰掛けると、彼の顔を覗き込み言葉を紡ぐ。
「ねぇ、舞くん。私が舞くんのことを好きだって言ったら、舞くんはどうする?」
「ふぇ……?」
予期せぬ言葉に、舞夜は間の抜けた声を漏らしてしまう。
当然だ。
今まで、桃花は凛の恋を全力で応援してきた。
それは舞夜から見ても明らかだった。
だというのに、その桃花がそのような発言をするなど夢にも思わない。
「私ね、地球にいる頃から何となく舞くんのことは気になってたんだよ? でも、凛ちゃんは舞くんに対して本気だったし、それを邪魔するの嫌だったの……」
舞夜から視線を外し、俯きながら桃花はさらに言葉を続ける。
「でもね、この世界に来て、舞くんは私の命を救ってくれた。それにたくさんの強力な敵たちを倒す姿を見るうちに、どんどん舞くんのことが好きになってきちゃったの」
命を救った――勇大が暴走し、トロールに囲まれたあの時のことであろうと、舞夜は思い出す。
そんな舞夜に桃花はさらに近づくと、彼の腕に自分の腕を絡め、柔らかな胸を……むにゅん! と押しつける。
「最初は凛ちゃんのこともあってダメだと思った……。けど、この世界はハーレムが許されるでしょ? だから、私も……可愛くて、優しくて、そして強い、そんな素敵な舞くんにアタックしてみようと決めたんだ」
「西蓮さん……」
まさかそんな風に思われていたとは……。
どうしていいかわからず、舞夜は彼女の名を呟くことしかできない。
そんな舞夜に、桃花は静かに……ちゅっ――と、頬に口づけをすると……。
「返事はまだで大丈夫、でも……私が初めて好きになった男の子は舞くんなの。だから――」
絶対諦めないからね……?
――そう言って、桃花は風呂場を後にするのだった。
「はぁ……どうしたものかな……」
湯船の中で舞夜は頭をかかえるのだった。
◆
(はわ〜! 私ったら、ちょっと大胆すぎたかな……!? でも、舞くん、胸を押しつけるのも、キスをしたことに対しても、嫌な顔してなかったし……大丈夫、かな?)
更衣室で、桃花は自分のしたちょっぴり……というか、かなり大胆な行動に恥ずかしさを覚える。
だが、それと同時に……。
(舞くんと密着した時、ドキドキしたし……〝疼いて〟きちゃった……。私、こんなにえっちな子だったんだ……)
……と、舞夜に想いを告げることで、自分が大人へと成長していることを自覚するのであった。
近い将来、彼女は舞夜と結ばれ、〝舞花〟という名の女の子を授かることになるのだが――
それはまた、別のお話……。
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