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地球で虐げられた《最強》闇魔術士は、異世界でエルフ嫁たちに愛される  作者: 銀翼のぞみ
四章

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121話 ゼハートへの旅路②

「ま、まさか山道まで走ることができるとは、このキャンピングカーというものは本当にすごい魔法だな……」


 高くそびえる山の道を登り始めたところで、ジュリウス皇子が若干引いた様子で言葉を漏らす。

 いくら舞夜が魔法で呼び出した(と思われている)モノとはいえ、山道すら走り抜くことができるとは思わなかったのだ。


 このキャンピングカーのタイヤは特殊な加工が施してあり、道に応じてスパイクのようなものが出るようになっている。

 整備されていない道だろうと、たとえそれが山道だろうとスイスイと走行することが可能なのだ。


「少し寒くなってきたから暖房でもつけようか……」


 運転中の舞夜が、おもむろに運転席の天井につけられたボタンへと手を伸ばす。雪が溶けたとはいえ標高のある山を登れば気温は下がってきてしまうのだ。


「え!? この車、暖房までついてるの!?」


 舞夜の言葉を聞き、後部座席……というか、広々としたソファーで寛いでいた凛が驚いた声を上げる。

 そんな凛の言葉に、レオナは「だんぼう……?」と不思議そうな声を漏らす。


 二人の反応に苦笑しながら、舞夜はボタンを押す。するとどうだろうか、車内の空気が温かいものへと変わっていくではないか。


「これは……なんて快適なんだ。舞夜ちゃんは温度まで操ることができるのか!」

「いいなぁ、この車。ここに住みたいくらいだぜ」


 次々と披露される驚きの機能に、サクラは興奮した様子で舞夜を褒め、剛也は言葉通り羨ましげに感想を漏らす。


 この世界には温度調節をする手段はそう多くない。下手な家よりよっぽどこのキャンピングカーは快適なのだ。


 その後もキャンピンカーはグングンと山道を登っていく。木に覆われた狭い道もあったが、それらは舞夜が闇魔法の《黒滅閃》などで薙ぎ払い、道を切り拓いて突き進んでいく。


 そうすることさらに数時間……一行は山道の中間地点まで至る。とここで――


「ご主人様、そろそろ休憩にしませんか?」

「そうだね、アーシャ。時間もちょうどいいし、休憩ついでにお昼にしようか」


 さすがの舞夜も運転に疲れてきたところだ。アリーシャの提案で休憩と昼食をとることにする。


 それを聞いたジュリウス皇子が「やった! 舞夜のメシだ……!」と興奮した声を上げる。見れば子どものように瞳を爛々とさせている。

 舞夜たちの作る料理はジュリウス皇子にとっては、どんなご馳走よりも心踊るものだ。


一国の第一皇子が子どものような反応を見せたことに、レオナは「あらあら、皇子様は食いしん坊なのですね〜」と、微笑ましいものでも見るような目を彼に向ける。

しかし、当のジュリウス皇子は「今度はどんな料理が出てくるのだろうか……!」と、想像を膨らますのに夢中で、レオナの言葉にも気づかないのであった。


 ずっと車の中に籠もりきりなのも体に悪いだろうということで、昼食は外で食べることになった。

 外に出ると舞夜は《黒次元ノ黒匣》の中からテーブルや椅子、調理器具などを次々に取り出していく。


「ほんと便利よね、舞くんの収納魔法……私も使えたらなぁ」

「まったくだ。僕らもこんなスキルがあれば、もっと冒険が楽になるのに……」


 舞夜が次々と荷物を取り出す様を見て、凛と勇大はそんな感想を漏らす。勇者である彼らには長旅はつきものだ。

 旅の間は味気ない携帯食と最低限の水分補給で済ませることがほとんどだ。様々なものを収納できてしまう舞夜の《黒次元ノ黒匣》のような能力は、喉から手が出るほど欲しいのである。


「山の中は寒いし、何か温かいものがいいよね。できれば簡単に済ませたいところだけど……」

「ご主人様、それでしたら今朝収納した大鍋を出してもらえませんか?」

「アリーシャ、そういえば頼まれてしまったけど、アレの中身って何だったの?」

「ふふっ……開けてみてください♪」


 アリーシャの言葉で早朝にアリーシャに言われて大鍋を《黒次元ノ黒匣》の中に仕舞ったことを、彼女の言葉で思い出す舞夜。

 彼女に従い、《黒次元ノ黒匣》から大鍋を取り出して中身を確認すると……中身は舞夜の好物の一つだった。


「なるほど、これなら温めるだけで食べることができるね。ありがとうアリーシャ」

「……ご主人様、私とシエラが頼んでた容器も出して」

「それに合わせてトッピングを下ごしらえしてありますの!」

「へぇ、それは楽しみだ。容器は……これだね」


 リリアとシエラも何か旅立ちの前に作っており、それを収納してもらっていたようだ。

 彼女たちに従い舞夜は新たにいくつかの容器を取り出す。そしてそれらを受け取ったエルフ嫁三人は、手際よく調理の準備を始める。


「何だ! この食欲をそそられる匂いは!?」

「この匂い、まさか……!」


 調理を始めて少し、鍋の中から香るスパイシーな香りに、ジュリウス皇子や勇大が興奮した声を漏らす。

 そして鍋をかき混ぜるアリーシャの横では、リリアとシエラが次々と鍋の中のものに添えるトッピングを作ってゆく。


「はわ〜! やっぱり〝カレー〟だ〜!」

「すごい、まさかカレーまで再現してたなんて……」


 テーブルの上に配膳された料理を見て、桃花と凛が懐かしげに声を漏らす。


 そう、アリーシャが用意していたのはカレーだった。侯爵家の屋敷であらかじめ調理しておき、あとは温めるだけにしておいてくれたのだ。


「……ん。トッピングもできた」

「カレーにぴったりですの!」


 カレーを見て興奮した様子を見せる勇者たち。そしてそんな彼らの前にリリアとシエラがさらに他の料理を持ってくる。


「おお! ハンバーグじゃないか! それに唐揚げに知らない料理まで……!」


 始めて見るカレーを興味津々といった様子で見ていたジュリウス皇子が、リリアとシエラが運んできた料理を見てさらに興奮した様子を見せる。


 運ばれてきたのは彼の好物であるハンバーグと唐揚げ……それともう一つは〝トンカツ〟だ。カレーに各々の好きなものをトッピングして食べてもらおうというわけである。


「おお! 初めて食べるがこれは美味いな! ハンバーグとの相性も最高だ!」

「まぁ、本当に美味しいわ。これも舞夜ちゃんの故郷の食べ物なのね」

「少し辛いがコクがあってクセになるな、揚げ物と食べるとなお美味い!」


 ジュリウス皇子にレオナ、それにサクラが、初めて食べるカレーに満足そうな表情を浮かべる。


 勇大に剛也、凛と桃花は喋ることはせず……しかし幸せそうな顔でカレーをかき込んでいる。

 地球にいた頃、カレーは子ども時代から食べていた料理だ。それがまた食べられて四人は嬉しくてたまらないのだ。


「はい、ご主人様、あ〜んですよ〜♡」


 皆の反応に満足いったところで、アリーシャが舞夜の口元にスプーンでカレーを差し出す。

 舞夜は皆の前で恥ずかしく思うも、結局押しの強いアリーシャに赤ちゃんのようにカレーを食べさせられてしまう。


「……アリーシャねえさま、ずるい」

「シエラもお兄さまに食べさせてあげたいですの!」


 甘々なやり取りを見ていたリリアとシエラも、「私も私も!」と言って加わってくる。


 一行は、美味しかったり、恥ずかしかったり、そして羨ましかったり……楽しい昼食の時を過ごすのであった。


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